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US大学合格可能性シミュレーション ~CollegeVine.comでの分析~

※一部データ修正・加筆、チャートを追加。
 米国大学受験は合格可能性が読めない”くじ”とよく言われるが、諸々のファクターを入力して合格可能性を算定するサイトがあり、ファクターを動かして分析した。
 この計算機能を提供するCollegeVine.comは、Zack Perkins氏がハーバード大を退学し2015年に創業、”AIを活用した大学受験コンサルの民主化”を掲げたプラットフォーム。自身がカウンセリングが十分でない大規模公立校出身で、手厚い私立校との格差を埋めたいという思いが創業の発端のよう。2024年6月現在で230万人が登録・活用している。メンバー登録は無料。
 "Admission Calculator"は、実際の数千のデータをもとにCollegeVine社がアルゴリズムを組んでいると説明がある。


対象大学とファクター

SAT(標準テスト)GPA(学校の成績)で簡易に合格可能性を算出するサイトは他にもあるが、CollegeVineではさらにAP/IBの履修居住地課外活動の内容/レベル志望専攻、など細かい項目を入力する。
独断と偏見により以下20校を選択してシミュレーションをした。
アイビーリーグ7校
(Harvard,Yale,Princeton,Columbia,Cornell,Upenn,Brown)
STEM系5校
(MIT,Caltech,Stanford,Carnegie Mellon,Johns Hopkins)
州立5校
(UC Berkeley,UCLA,UC San Diego,U of Michigan,U of Washington
その他私立・リベラルアーツ3校
(U Chicago, Boston U, Pomona)

分析1:ハイスペック米国高校生vs標準スペック日本高校生

まず、以下2ケースを比較。
ケース1:教育水準が高いマサチューセッツ州公立高校の米国籍男子白人学生成績面は満点・課外活動はトップ水準奨学金申請なし
ケース2日本在住の日本国籍の高校生GPA・SAT・課外活動はそこそこ奨学金申請あり

シナリオの前提

平均合格可能性は47%vs6%という結果。なお、日本の高校をインターナショナルスクールや他国(例:中国)の高校にしても合格可能性に変化はなかった。

最強米国高校生(ケース1)vs某日本高校生(ケース2)の合格可能性

この後、ケース1から各ファクターをひとつづつ動かし、ファクター毎に動かしたところ、以下の結果となった。一つ一つ解説する。

※計算は簡略化しており、各項目の分析の数値とは必ずしも一致しない。

分析2:性別・人種・奨学金申請の有無等(米国生前提)

各ファクターを変えて、合格可能性アップは緑、ダウンは赤で示した。米国在住前提で
①性別:学校によって有利不利は異なるが、理系・州立は女子有利の傾向(緑)。
②人種、③親が非大卒、④外国籍カテゴリー出願(米国在住):変化なし。最高裁の人種考慮不可の判決を反映か。
⑤奨学金の希望有:ごく一部の州立校で不利
⑥⑦専攻:前提のLiberal Arts(文系)専攻から、人気のCS(コンピューターサイエンス)専攻にすると大幅に下がる。Pre-med(プレ医学部)も低下要因。

性別、人種・専攻による合格可能性の変化(米国生前提)

分析3:高校/居住地域

⑧ノースダコタ(ND)州(人口が少ない州)、⑨カリフォルニア(CA)州、⑩私立ボーディング、で比較。
CA州高は自州大であるUC系列大には10pp以上有利となるが、人口の少ない州が有利、ボーディングが不利という傾向は見られず
※実際には、人口の少ない州、同じ州でも都市部より田舎が有利という意見もある。
⑪日本私立/インターの場合、国籍に関わらず可能性が若干下がる。留学生枠は入りにくいという実情を反映。なお、⑫留学生枠+奨学金申請によって変化なし。
※留学生が奨学金申請をすると”need aware”の学校は不利になると一般的には言われているが、データ数が少なくシステム上反映できていないと推察。

自州大学は有利、海外生は若干不利

分析4:成績(GPA、SAT、AP等)

GPA(学校の成績):センシティビティが高い。とはいえ、米国の高校では成績の付け方が絶対評価で甘い(インフレ)という背景もある。(全米平均3.0)
SAT:SAT考慮なしのUC州立を除き影響する。GPAよりセンシティビティが低い。(全米平均1028)
AP(上級クラス):APの履修”数”が少なくても影響なし(APクラスのない学校もある)。ただ、APクラスを履修した場合、スコアは影響する
※APの”授業の成績”はGPAに含まれる。APの”テストスコア”は成績とは別で、大学での単位履修のためという建前で大学出願への提出は任意とされているが、合格可能性には影響している。
大学レベルクラス:地域によっては高校生が近隣のコミュニティカレッジ等で大学レベルのクラスを履修することができるが、この単位取得が若干影響する大学もあった。
※CalculatorにはIBのチョイスもあるが、割愛。

GPA、SAT、AP等スコアによるセンシティビティ

分析5:課外活動

最も定量化しにくい課外活動だが、このシミュレーターは多くの課外活動のチョイスから選び、Tier1(全国入賞/インパクト大)~Tier3,4(単なる一メンバー/趣味程度)とレベル設定ができる。
10の活動で全国トップレベルという高校生を前提とし、活動の数とレベル数を変えたところ
活動数4でTier1>活動数10で全てTier3/4>活動数4でTier3/4>活動数ゼロ、という結果になった。低レベルの活動を多くやるより、高レベルの少数の活動の方がよいが、やらないよりはやった方がいい、と言える。

課外活動の数・レベルによるセンシティビティ

まとめ

 あくまで一民間企業の計算機能であり、1つの目安でしかない。Redditで”この計算でSafety(安全圏)と出た大学に落ちてReach(努力圏)に合格した。あてにならない”という口コミもあった。また、エッセイや推薦状は考慮されていない。
 ただ、データに基づいているなら”傾向”や”影響するファクター”がわかるのと、自分のStats(成績等の実績)で合格可能性をざっくり把握・比較することができる。ブラックボックスすぎる米国大学受験に参考になると思う。