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No9 帯揚げとポケットチーフの魔法 白木蓮の着物love


毎朝7時半。

慌しさの中で、出勤前の夫のお洒落タイムが始まります。


背広を着てネクタイを締めると、私の側でポケットチーフを選び始めるのです。


私も、あれやこれやとアドバイスするのですが、チーフ選びが上手く行くと、レフ板を当てたように顔映りがぱっと晴れやかになり、一挙にお洒落感が増します。

急にドラマティックに

装い全体をグレードアップ
させる、小さな布の劇的効果には驚くばかり!


以前、紳士服の店員さんから、チーフ選びはワイシャツの色と揃えるのが基本だと教わりましたが、選び方に慣れてくると、お天気の様子や気温も考えて、足りない色を足したり、引いたり、外してみたり。

水玉が好きです


そのルーツを調べてみますと、15世紀にフランスの船員が中国から持ち帰った麻の布を、肩飾りや袖上に挿していたのだそうですが、20世紀初頭、紳士服のジャケットに胸ポケットが定着し、そこにアクセサリーとして挿すようになったとありました。



照明になって顔を明るく見せ、更には、装い全体を魅力的に纏める布…



そう考えると、帯揚げと同じような役回りなんですね。



帯揚げは江戸時代末期、当時のファッションリーダーであった深川芸者のアイデアが起源だそうです。


亀戸天神の太鼓橋が再建された折に、芸者衆が渡り初めをする事になり、橋のアーチに似せた「太鼓結び」を発案し、それに使う帯枕を隠したり定着させる為に使ったのが始まりで、商品化されたのは明治の終わり頃。


その芸者衆の帯揚げと言えば、赤がお決まりです。


花柳界は流石に発案者だけあって、帯揚げの効果を最大限に引き出しているように思います。

蝋燭の光の中で、黒留袖の胸下に臨く、顔を照らす少量の赤。

なんて艶っぽく計算されているのだろうと、惚れ惚れしてしまう程です。



そんな事を思い巡らせていると、30年近く前に聞いた師匠の言葉が浮かんで来ました。

「帯揚げは照明の効果よ。
選ぶ時は顔映りの良いものを選ぶ事ね」


当時、購入する時は納得して選んだつもりが、身につけてみると引き立たず、引き出しの中には、箪笥の肥やしが溜まっていくばかり。


師匠の教えは正しく「目から鱗」そんな視点で、帯揚げを捉えていなかったからです。


帯揚げは、着物と帯を繋ぐ役目だと思っていましたから、
顔映りなど蚊帳の外。


それからは、師匠の教えを軸にして慎重に選ぶようになり、失敗が少なくなりました。



顔映りの良い色を選べば、照明効果で顔が明るくなり、更に洒脱な装いが完成します。



又、自分と着物を繋ぐ色を見つければ、数多く帯揚げを揃えなくても良いように思うのです。

私の着物友達の例で言えば、
彼女は特注で染めた白地に薄緑の暈しの帯揚げ一本を、紬にも柔らか物にも合わせています。
こんな選び方も素敵ですね。

下は私の愛用の帯揚げ達。

右は30代から
中は40代
左は50代から愛用
右は重宝なローズ
中は50代からの飛び絞り
左は20才の時から
若き日の愛用品 可愛いくて捨てられません

私はブルーベースですから、
夏カラーに冬を少し加えるのが良いようです。


そして重宝しているのが
ローズ。
この色は正しく、私と着物を繋ぐ色。

コーディネイトに困った時に、この色を差し色に持ってくると、全体に光が当たったように垢抜けるのです。

口紅も同様にローズがベストカラー。心強い助っ人です。



小さな面積に、大きな力を潜ませ、コーディネートを際立せる、ポケットチーフと帯揚げ。


魔法の布とでも呼びましょうか…




















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