ヴィオラ奏者、ヴァイオリンを弾く(3)
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カルテットのヴァイオリンパートを数日練習して、音符の動きの多さや「ヴァイオリン」という楽器に慣れてきた頃、ヴィオラパートも少し触っておこうと思い立ちました。
ヴィオラパートに限って言えば学生時代何度となく弾いた曲です。でもレッスンするからには、弾ける楽器であれば一通り見直しておきたい。昔と今では曲の捉え方が変わっているかもしれない。一度軽く弾いておけば、すぐに感覚が取り戻せるだろうと思って。しかし甘かった。なんか知らないけど、ヴィオラパートが弾きづらかったのです。
ポジション移動の仕方を忘れる
「……ヴィオラのポジション移動ってどうやるんだっけ?」
弾いてすぐ、楽器の大きさとは違う弾きづらさに気付きました。指遣い(フィンガリング)です。特にポジション移動の頻度が、ヴァイオリンとヴィオラでは体感としてかなり違っていたのです。
ヴァイオリンより大きい楽器であるヴィオラ、指を決める時の基準は効率と確実性を重視します。ソファやコタツの周りがコックピットと化すように、誤解を恐れず言うなら、不精ができるように。音色の特性上、音楽に支障を来さなければ開放弦を使うことも厭いません。そうこうしているうちに、気付かない間にポジション移動の回数はどんどん少なくなっていきます。
対してヴァイオリンは、音が飛んでいきやすい楽器。特にE線(1番線)の開放弦が持つ華やかさ、一歩間違えばうるさくなってしまう、表裏一体の音。G線以外の開放弦の取り扱いはヴィオラよりも慎重にする必要があるようです。ある程度綺麗にヴァイオリンを弾こうと思うと、ポジション移動は避けられない手段なのですね。幸い楽器が軽いので、もちろん効率や確実性は大事だけれど、ポジション移動を多少増やしたところで「面倒が増える」感覚はあまりありませんでした。
なぜ今まで気付かなかった?!
気付かなかった、というより頭では知っていたけど実感を伴っていなかった。楽譜が黒い以外に、ヴァイオリンパートに音が多いと感じていた理由。
アウフタクト弾いているのは上2本(1,2Vn)だけで、下2本(Va,VC)はアウフタクトが休符だったということに。
実際に弾いてみると、これ一つで作品を弾いた時の感触やイメージが変わるものなのですね。「つもり」で見過ごしている事柄は、すぐ隣にありました。
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