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モーニングルーティン

1R6畳半の無機質な四角の中は、纏わりつくようなエアコンの空気が満ちていた。ニトリで買った安物の布団セットは、朝方窓から漏れる冷気に耐えられず、役割を放棄しがちだった。のそのそと枕元に置いてあるiPhoneに手を伸ばし、暗い部屋には不釣り合いな煌々とした画面で時間も確認する。まだ起きるには早く、二度寝するには物足りないことに少し気分が落ち込むが、寝起きのぼんやりとした頭ではそのことまで理解できていないのかもしれない。手癖で開いてしまったTwitterのTLには、深夜にぽつりぽつりと呟かれたとりとめもない文字列が並んでいる。そこに並ぶアカウントは、NPCなのか、人間なのかも定かじゃないなとふと思う。認識しないと存在が確定しない話は、シュレディンガーの猫だっただろうか。ツイートも文字を入力し投稿する姿を見なければなど少しづつ冴えてきた頭が回るが、いやちょっと筋が違うかと考えるのをあっさりと放棄した。

もう一度、目が覚めるとカーテンからは、朝の柔らかい光が漏れだしていた。赤みがかった色は、日の出にまだ近いことを表している。身体に力を入れぐっと伸びをすると、睡眠中に溜まったしこりが流れ落ち、起きるか起きまいかなんてことをまず考える休日の布団の中には、まだ疲れが残っていた。けたたましくアラームが鳴り響く。静寂との対比の大きさには不快感も覚えながらも、手を伸ばし止める。手癖で開いてしまったTwitterのTLは、先ほどよりツイートの量が増えており、朝の猫を撮った写真が上がっていた。写真でみる猫は、批判する要素がないため、限りなく正しさに近い概念に近いかもしれないと頭の片隅に考えながら布団から抜け出した。陽の光を浴びるのは健康にいいというテレビで聞きかじった知識を元にカーテンを開くと、鮮やかな青色の中に昨日取り込み忘れた洗濯物が浮いており、なんとなく合成写真みたいだった。

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