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「Pink Blood」の意味:「不滅のあなたへ」と宇多田ヒカルの「ノンバイナリー」で腑に落ちたこと

はじめに


NetFlixの「First love 初恋」にハマってから、宇多田ヒカルの楽曲を振り返って聴くことが最近増えました。

そして現在、第2シーズンが放送されている「不滅のあなたへ」というアニメが、年始の特番的にキャッチアップ放送がされていて、それを観ていました。


昨年放送された第1シーズンも視聴し、原作の漫画も一応読んでいます。
ガッツリ嵌って読み直す、観直すというほどではないのですが…
それでも、この奇妙な物語の行く末が気になって、どんどん読み進めてしまう不思議な魅力のある物語だと思っています。
(好きなキャラはグーグーとボンシェンですw)

「不滅のあなたへ」の主人公「フシ」は、何物でもない、しかし何者にでもなれる特殊な存在です。
一応多くの場面では男性(10代ぐらいの男の子)の姿でいることが多いのですが、時には女性の姿にもなります。動物にもなります。

つまり、フシは性別に囚われない存在なのです。

そして「不滅のあなたへ」の主題歌は、
宇多田ヒカル「Pink Blood」です。

第1シーズンだけかと思っていたら、第2シーズンも引き続き使われています。

コチラは宇多田さんのPV

最初に聴いた時、鈍い私は全くピンと来ませんでした。
好き、嫌いというのではなく、ピンと来ない、そんな感じ。
アニメに合ってるかどうかもピンと来ない、歌詞が言ってることもわかるようなわからないような、とにかくピンと来ない。(もちろん歌詞の意味は分かるし、そうだよな~と思う部分はあるんですけど)

ということで、歌詞の意味を考えるとともに、「Pink Blood」の意味を考察していきます。


自己愛と主体性

歌詞の考察はコチラのサイトなどを読むと、より深く理解できる部分があると思います。

そう、「自己愛」がテーマだな、とは思います。

そして「主体性」もテーマのひとつかなとも思います。
主体は自分にあることが大事である”というのも歌詞から読み取れます。

先日観た「100分deフェミニズム」という番組内で紹介された、ハーマン著「心的外傷と回復」でも語られていました。
性暴力などから回復するには、自分が主体となって獲得(認識・理解)していくことが回復への唯一の道である、と述べられていました。
いくら周りがサポートしても、心の回復は自分が主体となって動かない限り、回復しないということです。

歌詞にある

自分のことを癒せるのは
自分だけだと気づいたから

Pink Blood 歌詞より

これがまさにそうですよね。

そして、繰り返されるこの部分

誰にも見せなくても
キレイなものはキレイ
もう知ってるから
誰にも聞かなくても
キレイなものはキレイ
もう言ってるから

Pink Blood 歌詞より

他人の価値観に影響を受けて、キレイを判断する、左右されている自分との決別。

「100分deフェミニズム」でも語られてましたが、ホモソーシャルな社会において、「キレイ」というのは往々にして男目線からの”獲物としての女性”の価値観だったりします。それを”キレイ”と思い込まされてる部分がある。豊胸手術なんかはまさしく、男性のキレイの為にしている行為だったりするのでは?と思ったりします。

男性目線からの「キレイ」だけでなく、女性目線からの「キレイ」も他人からの価値観で振り回されてる事例としては、「痩せている=キレイ」などでしょうか?(これは随分見直されてきましたが)
よく聞くのが、男性にアンケートを取ると、少しポッチャリ、ムッチリした女性の方が好み。しかし女性は、スリムな方が美しいと思う人が今までは圧倒的に多かったわけです。そして、その価値観に振り回されて拒食症になったりする。

キレイの価値観を他人に委ねることで引き起こされる、様々な不具合。

そこで、あるがままの自分というものを愛して(自己愛)、そこから出てくるキレイなどの自分を主体とする価値観の確立。
これが生きる上で大事なコトだと、それが「Pink Blood」では歌われているのだと、ようやく理解できるようになりました。

MVのディレクターを務めた谷川英司さんの言葉にも、自己のアイデンティティの確立について語られていました。

「PINK BLOODを初めて聞かせてもらった時に感じた『現代に生まれる讃美歌』のようだ、というファーストインプレッションを大切にしながら、『成長』とは、アイデンティティと向き合い、自問・自覚・葛藤しながら、自己を形成するプロセスの新たなステージへ向かう事であり、つまりは、それが大人になるという事である、という概念を、全体を通してそこはかとなくでも感じてもらえれば幸いです。時代に左右されない、強いMVができたと自負しております」と語っている。

ビルボード・ジャパン・ニュース記事より

「Pink」の意味と、「Blood」の意味

そして、今まで一番ピンと来ていなかった「Pink Blood」「Pink」の意味がようやく分かってきた気がします。

この曲を初めて聴いた時から、私の中で、なぜピンクなのか?、ず~っと疑問で引っ掛かっていました。
(「Pink Blood」とは繰り返されますが、それの意味するところ、赤がどうとか白がどうとか、色に関しての説明は一切歌われていません)

これを理解するのに助かったのは、コチラの記事でした。

宇多田さんが「Non-Binary(ノンバイナリー)」をカミングアウトしたのが、2021年6月26日に公開されたインスタライブです。

当時、このニュースを見たとき、私は「ノンバイナリー」がよくわかっていませんでした。それで一応ネットで調べ、その定義を読んだりしたのですが、今一つ、これまたピンときませんでした。わかったような、わからないような…

しかし、上に挙げた記事を読むと、当事者目線でわかりやすく表現してくれていたので、いろいろなことが腑に落ちました。
もちろん自分の今まで信じてきた基準からでしか見ていなかったこともあり、それ以外の基準で見ることは難しい or 出来ない部分はあるのですが、かなり想像はしやすくなりました。

宇多田さんが男女の両性に当てはまらないノンバイナリーなのに、どうして出産までしたのとかがわからなかった(出産することに違和感、拒否感はなかったのか?)のですが、それも理解できました。

ノンバイナリーには男性性と女性性、両方が混在している場合もある。
そして、その度合いも人それぞれ。(男性性が70、女性性が30とか。半々であるわけでもない)

私も自分の中に、男性性と女性性が混在しているな~と常々思ってきました。
だからと言って「ノンバイナリーです!」と断言できるほど、まだ自分のことを掘り下げていないのですが、人間誰にも多少はそういうところはあるだろうと思っていました。

しかし「男90女10」の人だと、自分は男という意識が強くて、女10の部分は殆ど意識しなかったりするだろうし、やっぱり「男50女50」に近い人の方がより気付きやすいってのはあるのだろうと思います。

それで、「Pink Blood」の「Pink」に戻ると、
ピンク赤と白を混ぜた色なわけです。

ここで、NHKで「不滅のあなたへ」が放送されてるのが興味深いのですが、NHKの「紅白歌合戦」などから考えると、赤は女性白は男性の象徴なわけです。

つまり「ピンク」とは、女性性と男性性が混在した色=ノンバイナリーを象徴する色であるわけです。
ピンクはノンバイナリーである宇多田ヒカル自身をも表していたんだな…と
、いままで疑問だったところが漸く腑に落ちました。

そして、「Blood」=血。
赤い血の色が変えられないのと一緒で、ノンバイナリーである自己認識は、他人の価値観や世間の常識、そういうもので変わるものではない、血と一緒である、と言いたいのかなと思いました。

この曲が発表されたのが、
2021年6月2日、配信限定シングルとしてリリース。
「不滅のあなたへ」」の第1シーズンが放送されたのが、
2021年4月12日 ~ 8月30日
そして、宇多田ヒカルがノンバイナリーとカミングアウトしたのが、
2021年6月26日

この符号は非常に意味があるものだったと、これもまた漸く納得できました。

ノンバイナリーであるともいえる「不滅のあなたへ」の主人公「フシ」。
そして、ノンバイナリーの視点での主体性の確立を歌った「Pink Blood」。

物語の中で、「フシ」は男性、女性のどちらの「性愛」にも囚われません。
そして、関わる人たちと絆が生まれてくる中で愛情を育み、大事な人が増えていきます。
ノンバイナリーとして世界と関わり、自己、主体性を獲得していく物語でもあるわけです。

それがわかると、「Pink Blood」がこのアニメの主題歌になった or そのために作られたこと、これ以外は考えられないと思うようになりました。

このノンバイナリーの視点から「不滅のあなたへ」の物語を読み直し、観直してみると、また新たな発見、思いが見つかるかもしれません。そう思うと、また時間のある時に、最初から見直したい気持ちでウズウズします。

特にフシにつきまとっているハヤセの血筋、守護団、これの意味や見方も、変わって来そうだな~と思うのです。

誰か、ノンバイナリーの視点から「不滅のあなたへ」を論じている人、いないですかね~?www(←すぐ人任せにしようとする奴 (;^_^A )


追記


これを書いてから 「宇多田ヒカル Pink Blood  ノンバイナリー」
などで検索掛けて出てきた記事で興味深かったものを載せておきます。

「Pink Blood 」
その日飲んだ「ピンク・シャンパン」 と 「ブラッド・オレンジ」から最初名付けられたエピソードにはビックリでしたが…(;^_^A

コチラの記事は、宇多田さんの過去の楽曲の中でのノンバイナリーを感じられる箇所をあげてくれています。

フムフムと、なかなかに興味深いです。

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