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2020年 全アイルランドサッカー選手権決勝

が昨日クロークパークで行われ、ダブリンが勝ち、6年連続の優勝を収めた。サムマクガイアは首都に6年留まっている。

なんのことを言ってるのかわからない人がほとんどであると思う。わたしだって全然わからなかったから。

アイルランドの国技はゲーリックスポーツと呼ばれるものである。ゲーリックスポーツも何種類があるが、メジャーなのがハーリング、フットボールである。

ルールは簡単にいうと

である。そこまで難しくはない。ボールを持って3歩歩ける。蹴ることも投げることもできる、15人でプレーする、ゴールはサッカーのゴールとラグビーのゴールを足したもので、ゴールマウスに入れば3点、ラグビーのようにバーの中に入れば1点である。ゲーム時間は35分、35分計70分、フィールドはサッカーのフィールドよりかなり大きめ。タックルは首投げはだめで首から上もダメ。だけどかなり当たりはきつくても全然オッケーである。一人一人がカバーする面積はサッカーよりかなり広めでスピードはサッカーと同じくらいなので、ゲーリックの選手はボールさばきというよりは広いフィールドを走り切れる体力プラスタックルやスライディングされてもぶれない体幹あたりが肝か。(有名選手になればなるほどみんなゴリゴリしてます。)プラス面積が広く、プレー人数がサッカーより多いのでフォーメーションや陣形作りがかなり重要な気がする。その辺をちゃんと理解できる子でないと難しいスポーツなような気がする。

ハーリングはフットボールと全く同じルールで、ハーリーというスティックを利用する。耳かきのようなイメージで耳かきのところにボールを乗せると3歩歩ける。ボールは素手でも取れるし、スティックでも取れる。スティックで小さなボールを打つから、競技のスピードはかなり速い。ハーリング見たあとにサッカーを見ると、「サッカーってとろいわね」と思ってしまうので怖い。

サッカーもハーリングも体力勝負の男たちの戦い。で、プロリーグやプロチームはなく、アマチュアチームなのである。俺たちアイリッシュは金のためには戦わない、名誉のために戦うのだ。(とあるアル中アイリッシュの言葉)皆さんクラブチームに属していて、有望選手はそこから県チーム(県チームもクラブチームもGAAというゲーリックスポーツを管理するゲーリック体育協会に属している。日本でいうと相撲協会みたいなものか。)に選抜されて所属することができる。企業などがクラブ運営費、県チーム運営費を出すが、一応選手たちはプロ所属ではなく、普段は働いている人達である

前にアイルランドの取引先に挨拶に行ってきた上司がカレンダーをもらってきたが、その取引先がスポンサーしている選手がカレンダーに乗っていて、みんな「?」ナニコレって感じだったが、私はわかったわよ。

だいたい冬はクラブチーム総当たり戦などが行われ、4月5月くらいから全研チームが参加する全アイルランドフットボール(ハーリング)選手権が始まる。日本の高校野球みたいにくじなどで47都道府県が全部金魚鉢に入ってくじびきで組み合わせを行うのではなく、その県が所属している行政区がアイルランドには4つあり(レンスター、ムンスター、コノノット、ウルスター)最初は行政区で勝ち抜きをやって、そこのチャンピオン及び、バックドア(行政区でチャンピオンになれなかったチームがまた残りの椅子をかけてトーナメントを勝ち上がっていく。)で出てきた4チームがそろってベスト8になり、そこからベスト8を2つのリーグにわけてリーグ内で総当たり戦(スーパー8と言っていた。)をやって、上位2チームが出てきてベスト4、準決勝、決勝になるのが去年のフォーマットだった。決勝はハーリングが9月一週目の日曜午後3時、フットボールが2週目日曜の午後3時である。優勝カップはサッカーがサムマクガイア(ユナイテッドにいるディフェンダーの名前と同じ発音。)、ハーリングはマッカーシーと呼ばれる。

とりあえず国技である。そしておらが村のチームである。ただし、中心になってるのはカトリック教徒でプロテスタントはサッカーをプレイしている子が多いというのが通説。ただし、運動神経のいい子はだいたいみんなこの国技をプレーしており、進路相談などで迷ってキャリアを決めるようである。なのでアイルランド出身のサッカー選手も子供のころはゲーリックやっていたという人も多い。ただ、ゲーリックは縛りが多く、サッカーの公式試合に何試合以上出場した子はゲーリックには戻れないとかそういうのがある。現ダブリン県フットボールの監督、デジーファレルの母方のいとこはプレミアリーグエバートンの所属でサッカーアイルランド代表キャプテンであるシェイマスコールマンである。(こういう話結構多い。)

結婚式の2次会はこの県チームのジャージーを着て出席することが非常に多い。家族の集まりになると着る(クリスマス、洗礼式などのお祝い事)こともあるし、子供が生まれれば産着で着せて写真を撮る人達もいる。県チームのジャージーやグラウンドコートや帽子も普通に街着として着ている人も多い。時々ロンドンでも地下鉄に乗っていて、チームのユニフォームを着てる人がいるので、そういう時は「頑張れコーク」とか声をこっそりかけたりすると喜ばれるよ。アイルランド人のボーイフレンドを持ったりすると、プレゼントに必ず出てくる。あと、留学などで、その地に長くいたりすると付き合いで買わないといけない場面も出てくる。(ちなみに私はダブリンの人と付き合いがあるのでダブリンのユニフォーム2枚、ジャージを持ってます。)

GAAの総本山はダブリンにあるクロークパークになる。ゲーリックゲームのためのスタジアムで収容人数83000人のかなり大きいスタジアムになる。(アイルランド代表ラグビーやサッカーは旧ランズタウンロード、現アビバスタジアムが総本山になる。)

血まみれの日曜日という事件(イギリス軍がアイルランド民間人を攻撃し、殺害してしまった事件)がアイルランドには2回起こっているが一回目の舞台がここ、今年はこの事件の100周年記念でもある。

オールアイルランドは最初は地味に各地の本拠地で行われているが、だんだん勝ち進んでいくとクロークパークで行われることが多い。で、いっつもスタジアムは満員。とにかく満員。このゲーム観覧の収入がGAAに行く。なので、GAAの評判は地元ではすこぶるよくない。クロークパークは血まみれの日曜日の歴史的遺跡でもあり、アイルランドの国技のグラウンドでもある。(日本でいうところの両国国技館)普段ゲームがない日は観光客がかなり中まで入れる見学ツアーが毎日行われており、教育的価値もある建物となっている。8万人収容なのでかなり大きく、結構遠くからでも屋根が見える。(他ヨーロッパで収容人数が大きいのがウェンブリー(イギリスサッカー代表の本拠地)ノウカンプ(スペイン、FCバルセロナの本拠地)アリアンツアレーナ(ドイツ、サッカーバイエルンミュンヘンの本拠地)だっけな。間違ってるか合ってるかなんともいえないが。)

この新聞記事、結構面白くて参考になりました。クロークパークもランクインしてます。

ハーリングで強豪と呼ばれるのがコーク県、ティぺラリー県、キルケニー県、古豪がリムリック県あたり。クランベリーズというバンドのボーカル、ドロレスオリオーダンはリムリック出身で、若いころはハーリングの女性版、カモーギーの選手だったという。リムリックは2018年になんと1973年以来のチャンピオンとなり、かなり盛り上がった。そして、今年も勝った。(決勝終わったあとのパブでクランベリーズをみんなで大合唱。)私の行きつけのパブのパットはティぺラリー出身なので、ティぺラリーが勝ち進んでいるときは、プレミアリーグがあろうがラグビーがあろうが、テレビはハーリングになってしまう。

サッカーはケリー県(映画ライアンの娘はほとんどこの件で撮影された。)、ケリーはこの分野のあだ名は「キングダム(王国)」と呼ばれている。ついでダブリン、メイヨー州あたり。他、そこそこ強くて名前があがってくるのがドネゴル県、ゴールウェイ、コーク、タイロンあたりか。ここ5年はダブリンが連続優勝、その前がケリー、メイヨー州は決勝まであがってくることここ10年で5回、そして決勝で全部負けている。シルバーコレクターとして有名な県である。(メイヨーの呪いという逸話があります。英語版ウィキペディアで調べてください。)

今年はコロナ禍のこともあり、ゲームが中断したので、オールアイルランド決勝が12月までずれ込んだ。今年はバックドアもスーパー8もなし。ゲーム数も例年に比べれば極端に少なかった。サッカー決勝は大方の予想通り、ダブリンが無事勝ち上がり、昨年決勝に出れなかったメイヨー州も早々行政区チャンピオンになり、危なげなく勝ち上がった。頂上決戦はダブリン対メイヨー州になった。

ダブリンは日本のプロ野球でいうと巨人(いまだとソフトバンクなのか。)、サッカーでいうとチェルシーみたいなものかしら、強くてソツがなくてお金があって嫌われている。で、メイヨー県は失業率がアイルランドでもトップクラスで、みんな職を求めて外へ出ることが多い県、イメージ的に自然が多く、ノックというマリア出現の遺跡があるため、信心深い田舎のイメージがある。もう典型的な都会対田舎みたいな感じである。

(イギリスにいるアイルランド移民で多いのがこのメイヨー州及びその隣りあわせの県出身(ゴールウェイ、スライゴー)、意外に少ないのがダブリン出身、およびコーク、ケリーなど、南下していった当たりの出身者は少ない。地元で雇用があれば、わざわざイギリスに出ていく必要はなかったりする。)

今年はクロークパークは無観客、そしてアイルランドもイギリスもパブが全部閉まってしまってるので家庭で見るしかない。私もパブでないところで見ました。メイヨー出身とダブリン出身がいるところで見たので緊張感半端なかったけど、ダブリンが貫録勝ちでした。

わたしがゲーリックを見始めてから6年、ずっとダブリンが勝っている。ダブリンはキーパーのベテランがものすごい男らしく寡黙でかっこいい(スティーブンクラクストン、10年選手ですが、そろそろ引退でしょうか。大人って感じのする選手です。よその県の人は「顔もみたくない選手の代表格。どれだけ夢をつぶされてきたか。」と言いますが。)のと、ディアムンドコノリーという花王石鹸と私は読んでいたが顔が三日月型のいかついプレイヤーが好きなので、ダブリンを見てしまう。コノリーは暴れん坊将軍で、とにかくプレーの手癖が悪い。相手方選手の顔を抑えるときに目に指入るようにしてるし、転んだ選手の手を踏んづけるのは朝飯前。乱闘には必ず参加。とにかくケタ外れにガラが悪い。でもボールを持った時に相手の陣地に入っていくスピードの速さとかゲーム展開の読みの巧みさみたいなのはすごいのであるが、今年、電撃引退してしまい(なんからしいよな)、今年は花王石鹸抜きだった。ダブリンは比較的選手に筋トレをやらせてるのか、みんな年々ゴリゴリしてきている。

ま、GAAを見続ける楽しみってどのスポーツでもあるのだが、選手個人の成長を見守り、引退してチームの監督やアドバイザーになって戻ってきた久しぶりの選手の顔を見たり、と成長や変化を見守ることなのかなとも思う。昔はプレーがすごいとか顔やたたずまいが好みとかそういうのもあったが、最近はだんだんその辺はどうでもよく、成長著しいとか、一緒に見ている人も実は変わっていないようで変わっていて、というのがメインになってきているような気がする。年を取ったということなのだろう。しかし、来年はちゃんと観客入れて、みんなでパブで盛り上がってみたいなあ。


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