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羊はお風呂に入らない 冬の楽しみ

秋というよりは晩秋という雰囲気である。最高気温が20度まであった日が9月の半ばまで続き、なんとなく暑かったが、いきなり秋である。最高気温は14,5度で最低気温が9度くらい。

2年前にアイルランドはゴールウェイという都市で買ったアランセーター(といってもカーディガンだが)を今頃出して着ている。ゴールウェイはアランセーターで有名なアラン諸島へ行くゲートウェイ都市になっており、港街である。雰囲気はなんとなく長崎っぽいかな。坂があって、港があって、割に皆さんハイカラで、という感じである。このNoteでも登場させている、お世話になっているアイルランド系のおばはんはゴールウェイの出身である。ゴールウェイといっても、馬市場で有名な方の出身、ちょっと郊外というか街からはちょっと離れたところの出身の方である。

ゴールウェイの目抜き通りに「オモーリャ」という毛糸屋さん兼アランセーターを売っているお店があり(ゴルフウェアみたいなのも売っていた。)、そこがゴールウェイで一番純正のアランセーターを出しているお店というので、おばはんの知り合いの方に車を出してもらい、アランセーターを買った。結構いいお値段だったが、日本で買うよりは安かった。日本だと、どれくらいの値段になるのか知らないが、200ユーロをちょっと下回るくらいなので28000円くらいで買えた。日本でインターネットで検索するとオモーリャというが、現地の人と話をしていると「オマーリ」みたいな言い方していた。昔阪神にいたオマリーという野球選手と同じような発音に思えた。https://www.omaille.com/

お店の人はものすごい親切で「アランセーターほしい」と言ったら、体形に合いそうなものをかなり時間をかけて探し出し、10枚くらい試着させられた。色は4色くらいしかない。ホワイト、オートミール、ネイビー、茶色と黒のあいの子みたいな色。ホワイトは白い羊から取ったもの、茶色は黒い羊から、で、オートミールは白い羊と黒い羊の毛をミックスしたもの、色染めしてないんです。とのことだった。

雰囲気からして、オートミールが似合いそうですね。とお店の人がいい、試着してみたところ、やはりオートミールが一番ピンと来て、かぶりとカーディガンと相当迷ってカーディガンにした。「下手なダウンより暖かいので、とにかくカーディガンみたいに脱ぎ着できるものを一枚持っていたほうがいい」というアドバイスに従い、カーディガンにした。

それから2年たっているが、よく着ている。この時期はジャケットのように上着として着ているし、冬になれば普通にオフィスで着たり、セーターのように着たりしている。上にコートを着て出かければ、かなり暖かい。オートミールの色も手持ちの服に合わせやすくて、買ってよかったなといつも思う。

このセーターを購入したとき、お店の人に「絶対に洗わないで、水洗いとかダメだから。」と強く言われた。ドライクリーニングがベストだが、買ったら3年くらい洗わないで、と言われた。

「なぜ」と聞いたら「羊は自分から人間みたいにお風呂に入らないでしょ。羊は自前で脂を出していてそれが毛をコーティングして天然の防水加工になっているので、洗うとおっこってしまうので、洗わないのがベストなんです。」と最もなことを言われた。確かになあ、羊はお風呂に入らない。

手編みということで、編んでくれた人の署名が入った純正の証明書みたいなのが入っていたが、編み手はアラン諸島の人ではなく、南コーク州(ゴールウェイからかなり離れている。)のメアリーという方の署名が入っていた。この方がどんな人かは知らないが署名はブルーブラックの万年筆で行われており、それがなんとも時代がかってカッコよかった。

晩秋になるとこのセーターを思い出し、羊はお風呂に入らないを思い出す。自分たちからドボンと温かい湯にははいらないのでしょうね。確かに。映像とかで見るとドロドロの子たちですからね。私はドボンと温かい温泉や銭湯に入りたくてしょうがないですが。

ヨーロッパの冬は夜が長く、昼が短い。その代わりと言ってはなんだが、割に夜に楽しむイベントがそれなりにあるなあと思う。ゆっくり音楽が聴けるもしくは芝居を見るコンサートや催しがあったり、映画もゆっくり見るような割に真面目なのがマーケットに出て来たり。パブに行けば暖炉に火がともり、ひざ掛けを貸してもらい、温かいウィスキーなどを飲む、みたいなこともできる。ウィスキーにシナモンスティックやクローブが入っているといいですね。冬の香りという感じである。

夜だからと言って家に閉じこもっているのではなく、なんというか楽しみましょうよ、というスタンスで、冬は確かに寒くて暗くて憂鬱なのだが、それなりに楽しみがあった。

が、今年はどうなるか、という話で、映画館にも行けないし、パブだって早めにクローズだ。換気が重要だから締め切りで暖炉というのも期待できないであろう。音楽も芝居もなしだ。ゆっくりお高めのレストランでごはんを食べたっていい。夏だと浮かれ気分でほわほわしていて、ハイテンションなのでゆっくり楽しめないことも、冬なら楽しかったりする。

しかし、今年はそれがない。

家にいることも多くなりそうなので、温かい毛布でも買おうかと思案している。羊の毛の毛布やスローという薄手の毛布が出回っているが、アイルランドやイギリスのヨークシャーやウェールズ製の毛織物の毛布、お高いがものすごい温かいのである。羊にくるまって、自分でつくったチャイでも飲みながらネットフィリックスで映画でも見るかもしくはじっくり普段読まないような洋書でも読むか、こんな季節なのでしばらくじっとしているしかない。




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