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「サッカー見たい」と言われても

ロックダウンになってありがたいと思うことの一つに出張者の対応がなくなったというのがある。ロンドンにいるが、仕事は日本関連の仕事もしくは日本の会社の支社なので、どうしても日本からくる出張者の相手というのが仕事のうちに入ってくる。

こればかりはなんとも言えない仕事である。仕事なんだけど、仕事でないというか。

基本、土日はまたがないで滞在してほしいというのがある。土曜に到着となると最悪のパターンである。日曜はお相手をしなくてはいけない。これがまた面倒だったりする。

あと基本、出張者対応は男性が駆り出される。女性はまずしないことになっている。出張者が男性が多く、男性一人で来ることが多いので、アテンドはできるだけ同性同士にする。あまり聞いたことがないが、女性をあてがって、そこで間違いが起きては困るというのもある。あと、女性がアテンドすることになったのはいいけど、その伴侶がイギリス人や外国人だった場合、「くだらない仕事で休日出勤させた」ということで旦那が会社にねじ込んで、面倒なことに発展することが多いとして、避けている会社も多い。

だいたい、男性の社員が対応する。例えば駐在で来ている日本人の社員などがその役割を担わせられることが多い。で、だいたい女性の社員がプランを立てたり、お店を予約したりする。会社ごとにだいたいレストランの評価やサービス内容を書いたトラの巻みたいなのがある。それを見ながら、予約したり、プランを立てたりする。

前に比べれば「放っておいてくださって結構ですよ」という社員さんもいるし、空港などの送迎も「結構です」と言ってくださる社員さんも増えた。英語もできる人も増えたので、負担は前よりもかなり減っているとは思うが、あんまり好きになれない仕事の一つである。

だいたい、ま、今は変わりつつあるのかわからないが、だいたい駐在で来るのは男性がほとんど、そして、会社の中の主要な職も男性がほとんどが多く、現地で雇われている日本の女性は補助的な役割が多いような気がする。そういうところはまだまだ遅れていて、なんというか、本当に昔の日本がそのまま濃縮カルピスになってしまっているかのような、古い昭和の日本の会社カルチャーが駐在員オフィスには残っていたりする。

さて、さて、この接待というか出張者対応で個人的に困ったというか、なんというか、「やめて」と思ってしまうリクエストが数個存在する。その中の一つ、もう本当にめんどくさくて困ってしまうリクエストが「サッカー見たい」ってやつである。

これね、本当に困る。というか面倒臭い。

サッカーは見たいといって、すぐにみられるほど甘いスポーツではないのだ。正直、ロンドンで世界的に人気のあるメガクラブ(チェルシー、アーセナル)及び、みんなが知っているマンチェスターの赤いチーム、リバプールあたりの試合は「見たい」と言ってすぐにチケットなど用意できそうもないチームなのである。まだこの辺をリクエストしてくる人には「あーチケット難しいんですよ。300ポンド(5万2千円)くらいは覚悟してますよね」などとハッタリ言って「そんなにするの?じゃあいいや」と言われるのを待つしかない。だいたい正規ではほとんど前に売り切れているので、当日出るチケットを狙うか、ブラックマーケットや個人が売りに出す切符を買うしかない。人気のある組み合わせなどがあると、平気で300とか行く場合があるので、そうやって脅す。それでも「えーなんとかならない?」とくい下がられる場合、ロンドン近郊でそこまでチケットの入手が難しいと言われていないクラブが対戦相手のチケットを探す。例えばロンドン近郊クロイドンを本拠にしているクリスタルパレス、ロンドン西部で一番古いスタジアム「クレイブンコテージ」を本拠地にしているフルハム、ロンドン東部でオリンピックスタジアムが本拠地のウエストハム、クリスタルパレスよりもっと南のブライトンを本拠地にしているブライトンホーブアンドアルビオンあたりのチームがそこそこ名前の知れたチームと対戦するカードを探し、それからチケットを抑えるようにする。しかし、これも非常に難しい。みんなおんなじことを考えているから、チケットだってそんなに簡単に手に入らないのだ。そして、このやり方でチケットを取ったとしても「ブライトンなんてチームしらないし」「クリスタルパレスって誰か有名な人いる?」とか言われたりすると、こっちはやっぱりカッチンと来る。「xxとか有名ですよ」とか「xxはたぶんこれからビッグクラブに引き抜かれて将来はイングランド代表になりそうですよ」とかつけ焼き刃で説明するけどさ。(ただたまに私がこういうことを言ったのを覚えていて「あの子、あなたの言う通りになったね」と後から言われたりしてびっくりするときがある。)

ま、とにかくリクエストで「とにかく有名なチームを見たい」というのはすごい嫌である。とにかく面倒臭い。こういう主体性のない主張は勘弁してほしい。

ありがたいというか面倒臭いことは面倒臭いのだが、もう好きなチームが決まっていて、「試合は見たいけど、見れないならしょうがない」とある程度は腹くくってくれる人はありがたい。「ファンが集まりそうなパブがあったら紹介してほしい」(ネットで調べるか、私の行きつけのパブにいるそのチームのサポーターの人を捕まえて「どこか知ってる?」と聞く。だいたい知らないと言われることが多いが、この手の人達は親切なので、「仲間にメールしたので返事来たらあんたに転送してあげる」と言ってくれて探せることも多い。)「でもメガショップ(だいたいチームの本拠地のスタジアムに付属してあるグッズを売っているショップ)行きたいから時間とってほしい」というのは許せる。出張者の付き添いで、チェルシーもトッテナムもアーセナルもメガショップ行ってきたよ!まだこの辺はなんとかなる。面倒と思ってもまだなんとかなるし、チェルシーもアーセナルもメガショップは駅からそこまで遠くないし、ロンドンのど真ん中からちょっと離れた程度なので負担にはならない。

でも、好きなチームがロンドン本拠地でない場合は相当面倒臭い。「マンチェスターシティのユニフォーム買いたい」「リバプールのユニフォーム買いたい」という、本拠地が全然ロンドンから離れている場合は面倒臭い。ただ、シティもリバプールもビッグクラブなのでありがたいことに、そのチームのユニフォームを手掛けているスポーツブランドのロンドン本店などに行けば買えることが多い。これはありがたい。シティはプーマ、リバプールは確か昨年までニューバランスだったので、オックスフォードストリートにあるニューバランスのフラッグシップショップかカーナビーストリートにあるプーマに連れて行けばなんとかなった。

困るのが、本拠地がロンドンから離れていて、あんまり有名でないチームのユニフォームがほしいと言われる場合である。今まで頼まれたことがあるのは「エバートン」(リバプールの方が本拠地)「ワトフォード」(ロンドン郊外だが、結構遠い。)「ニューカッスル」(北の方です。)あたりか。この場合、ほとんど賭けになるが、ピカデリーサーカスに昔からあるスポーツ用品のお店「リリーホワイト」に行く。リリーホワイトはだいたいプレミアリーグのチームのユニフォームはそろっているので、そこで用を足す。ただ、場合によっては「レプリカのような気がする」とか言ってくるのがいて、それはそれでもう、すごいめんどくさい。(確かにライセンス生産していてメガショップで買えるものと違うものが売ってる場合も多々ある。)

そこでもだめで、そこから先、となると万策尽きるというか「ネットで買いやがれ、送付先は会社でいいから」となり、出張者にネットでシャツを注文してもらい、翌日会社に届く特別デリバリーにすればなんとか受け取れる。

ま、この場合、普通に売っているシャツでいいという人の話。で、もっと面倒臭いのが、「xx番のxxのシャツが欲しい」と指定があるが、そのプレイヤーがマニアックすぎてなかなか見つからない場合と「子供用サイズにして子供の名前を入れてあげたい」というやつ。子供の名前のやつはその場でやってくれないことが非常に多い。ジーンズの裾上げみたいにすぐにできないのである。なので名前を書いて申し込みをして後日取りにいかないといけない。ハードスケジュールの出張者がまた後日メガショップなどにとりに行くのは大変だったりする。郵送してくれるショップもあるが、出張者の滞在中にそのシャツが届くかどうか保証がなかったりする。そうなるとそのショップの近くに住んでいる社員が引き取って、翌日会社に持って行ったりする。一人の手間じゃすまないのだ。でも、子供サッカーチームの練習で着せてあげたいとか言われると「しょうがないな」となってしまう。そういうこともあり、メガショップなどの位置や営業時間は把握していた。

(場合によってはラグビーのユニフォームのリクエストがある。これも買いに行ったことがあったっけね。)

人によっては「なんとなくの雰囲気が味わえればいいからとりあえずサッカー見てみたい」というのでチーム指定をしない人がたまにいる。そういう人にはプレミアリーグよりそれより下部リーグになるが、チャンピオンシップという2部リーグがあり、ロンドンを本拠地にしているチームもあるので、そういうところのチケットを手配しようとしたこともある。が、だいたい、会社のあまりサッカーなどを知らないお局さんとかに「そういうチームはフーリガンがいるからあんまり案内しないでほしい。何かあってからじゃ遅いから、やっぱりちゃんとしたチームのチケットを取ってあげて」と言われたことがあったりした。なのでそこまでガチで見たいとかミーハー心がない人をかなりちゃんとしたサッカーに連れていって、逆に現地ファンの熱心さなどにドン引きしてしまい小さな声で「せっかくチケットとってもらったのにごめんなさい。もう充分だから帰りたい」と言われて、帰ったとあとから案内した駐在員に言われて脱力したこともある。それだったら、私が代わりに見に行くよ!!という感じである。

(2部チームだって割にみんなきちんと見ているし、昔のようなフーリガンもそこまでじゃないし、有望株も多いので、面白い。でも昔の常識で頭が固まっていてアップデートされてないお局さんにそれを説明しても、無駄なので、こういうときはおとなしく従うことにしていた。)

本当に好きな人とか、一人でやりたいという人は、事前に相当調べてきて、そして土日を使って小旅行よろしく訪問したりする人もいるので、この辺人によって温度差があるが、一応出張者に「土日またぎますけど何かありますか?」と聞いて「サッカー見たい」と言われてしまうと困ってしまう。

美術館とか博物館、観光コースなどはもっとラクに案内できるし、時間に合わせて伸び縮みさせるが、サッカーは手間がかかるからね。

ま、チケットの取りにくさ、チケットが高いとか、いろいろ問題はある。その辺はまた書いてみたい。





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