J2第40節 ブラウブリッツ秋田戦 プレビュー
前節松本山雅に9年ぶりに勝利したが、京都も勝ったことで今節試合前にも昇格が潰える可能性もある中での一戦となる。
どのような状況で試合を迎えるかは不透明であるが、できることは目の前の試合に集中し勝つことだけだ。
1.前回対戦
秋田の強みである球際のバトルにも負けず、終盤に新井のセットプレーからの得点を守り勝ちきった。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
2.対戦成績
過去の対戦は前半戦の対戦一度のみのため、上記の前回対戦をご覧ください。
3.前節
甲府
ホームに松本山雅を迎えての甲信ダービー。
リラの得点で先制も終盤に共に得点を取り合う撃ち合いとなるが、甲府が勝ちきり9年ぶりに甲府が甲信ダービーを制した。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
秋田
アウェイ京都に乗り込んでの一戦。
スタメンは前節から2人の変更となった。
飯尾と中村に代え、稲葉と茂を起用した。
試合は立ち上がり2分にいきなり動く。
田中がゴールキックで足を滑らすとウタカが拾い、ドリブルを開始する。
左サイドで千田を交わし、クロスを入れ宮吉の落としを受けた川崎がミドルシュートを放つとウタカの足元へ。
ウタカがコースを変えるとゴールに吸い込まれ、京都が先制する。
先制を許した秋田だが、やることは変わらない。
前線のターゲット目掛け、ロングボールを入れていくがチャンスは京都の方が多く作っていく。
11分には宮吉から秋田DFラインの背後へ浮き球のパスが出ると飛び出した三沢がシュートを放つが、枠を捉えられない。
京都が攻勢を強めて追加点を取りにいくのに対し、秋田は懸命に守り耐える展開となる。
耐えていた秋田だが、ワンチャンスを物にして同点に追いつく。
左サイドの深い位置にボールを運ぶと藤山のクロスにファーサイドの才藤が折り返し、武がダイレクトボレー。
シュートはDFにも当たり、ゴールに吸い込まれ秋田が同点に追いつく。
同点に追いついたものの試合の流れは変わらず、京都の攻勢に秋田が耐える時間が続く。
42分に秋田の自陣からのスローインを奪うと武田から逆サイドのウタカへサイドチェンジを送る。
左サイドで孤立していたウタカはドリブルで秋田DFを揺さぶると左足を振り抜き、京都が勝ち越す。
44分には中盤でウタカがこぼれ球を拾うとDFを交わし、ドリブルで前進する。
3対1と数的優位の状況を作り、空いている右サイドへパスを送るがDFの足に当たってしまう。
だが、そのボールが武田にこぼれると右サイドでフリーとなっていた宮吉へラストパス。
冷静にゴールに流し込み、一気にリードを広げる。
長い時間耐えていた秋田だが、前半終了間際に突き放されてしまった。
後半に入っても京都がウタカを中心に押し込み、秋田が必死に耐える展開となる。
前半の京都は背後を取る動きが多く見られたが、後半になり秋田のライン間を突いていく形を増やす。
流れを変えたい秋田は60分に高瀬と齋藤に代えて三上と吉田を投入する。
飲水タイムを挟み、両チーム共に交代を行う。
京都が飯田と福岡に代わり、白井と松田を投入する。
一方の秋田は藤山と茂に代わり、江口と井上を投入。
先に交代が機能したのは秋田。
70分に右サイドでボールを繋ぎながらクロスを上げるタイミングを探り、江口がクロスを入れる。
フリーとなった武が合わせるが、清水が防ぐ。
そのこぼれ球にもう一度武が詰めるが、またも清水が立ちはだかる。
79分に京都は荻原と宮吉に代わり、黒木と庄司を投入する。
81分には途中交代で入った吉田が芝に足が引っかかり、足首を痛めて半田との交代を余儀なくされる。
84分に京都に決定機。
バックパスをウタカが狙い、ボールを奪いシュートを放つが田中が防ぐ。
そのこぼれ球を庄司が拾い、ループシュートを放つも枠を捉えられない。
89分に京都はウタカに代えて野田を投入する。
球際の激しい争いに負けず、個の能力で上回った京都が逃げ切り勝ち点3を掴んだ。
4.今季成績
両チーム比較
勝ち点73で4位の甲府と勝ち点47で13位の秋田による一戦となる。
アウェイで勝ち点を落としている甲府だが、秋田もホームで勝ちきれていないことがわかる。
また、秋田は得失点でもマイナスとなっている。
甲府
3勝1分1敗と勝ち越しており、悪くはない数字ではあるが逆転昇格に向けては東京ヴェルディ戦と岡山戦は痛い躓きであった。
全試合で得点を取れてはいるものの完封は1試合と失点が増えてきてしまっている。
詳しくは後述するが、秋田はボール保持には興味を示さないチームであり今節はボール支配率が高くなることが予想される。
以下の表は今シーズンのボール支配率トップ10となる。
秋田との前回対戦は63.5%で2位となっている。
ボール支配率が高くなると勝率が悪くなっていることがわかる。
57%を超えてくると黒星が多くなっているが、敗戦を喫した試合はいずれも早い時間に先制を許しボールを持たされた試合であり一概にボール支配率が高い=勝てないわけではない。
ポイントは早い時間に先制を許さず、ボールを持たされないことが重要となる。
では、どのように先制をするかが重要となるが甲府の特徴はどこからでも得点を取れることにある。
他の上位陣のようにルキアンやウタカ、エジガルジュニオと圧倒的なストライカーはいないが満遍なく得点を取っていることがわかる。
前節、関口と浦上が得点を決めたことで複数得点者が増えたことも特徴となる。
こちらは出場時間順に並べたものだが、GKの河田と岡西を除くと山本までの選手全員が得点を決めている。
その下の鳥海、須貝、有田も決めており出場時間の長い選手は軒並み得点を決めているのがわかる。
全員で戦っていることがデータ現れている。
秋田
2勝2分1敗と勝ち越している。
唯一の負けは前節の京都戦となっている。
新潟に勝利しているように力のあるチームである。
以下で今シーズンのスタッツを見ていきたい。
リーグ上位と下位に極端に分かれていることがわかる。
まず、リーグ下位のものから見ていきたい。
30mライン侵入回数とボール支配率がリーグワースト、パス数が下から2番目と時間を掛けた攻撃や手数を打つことはしないチームであることがわかる。
リーグ上位のものを見ていくとタックル数、クリア数、攻撃回数がリーグトップでスローイン数が2位となっている。
吉田監督は魂際と表現するが、球際激しくボールを奪うとリスク回避のためにクリアを行い、前線にボールを送り込み攻撃に繋げていく。
結果としてスローインを獲得することが多くなる。
その理由は以下のプレーエリアを見ながら説明したい。
まず、左から見ていく。
こちらはチームとしてのプレーエリアとなる。
全体的に右サイド寄りが濃くなっていることがわかる。
続いて右側を見てもらいたい。
こちらはリーグ平均との差となるが、極端に右サイドが多くなっている。
パス数が少ないため、手数多く右サイドに運ぶわけではなくシンプルに右サイドへ蹴り込んでいることがわかる。
続いて以下の表を見ていただきたい。
こちらはパスの出し手と受け手の総数となる。
受け手を見ていただくと沖野の名前が多くあるが、沖野は右サイドの選手であり沖野を裏に走らせるパスが多いことが考えられる。
シンプルなチームであることは紹介しているが、どのように得点を取り失点しているか見てみたい。
まずは得点数。
セットプレーからが最も多くなっている。
先程触れたようにスローイン獲得数はリーグ2位となっており、活用できているのがわかる。
また、先程は触れなかったがCK数もリーグ6位と上位となっておりセットプレーを意図して獲得し得点に繋げているのがわかる。
続いて失点数。
こちらもセットプレーからが最多となっている。
高さのある選手も揃えているため、失点を減らせればもっと勝ち点を積んでいたかもしれない。
5.予想スタメン
甲府
前節から2人の変更と予想。
ボランチを野津田と山田のコンビに戻すのではないか。
前節久しぶりにどちらもスタメンとはならなかったが、コンディションも戻りスタメン復帰と予想した。
秋田
前節から1人の変更と予想。
藤山に代え、江口の起用と予想した。
前節、前々節と強度の高い相手との試合のためスタメンではなかったのではないか。
6.注目選手
甲府
メンデス
対秋田となるとロングボールが増える試合となる。
甲府としてはメンデスは競り勝つ前提で試合を進めるだけに、メンデスが空中戦で負けるわけにはいかない。
競り勝つだけでなく、セカンドボールを回収できることまで計算に入れて空中戦で勝てれば甲府に流れは来るだろう。
秋田
千田海人
昨シーズン秋田をJ3優勝に導いた立役者だが、開幕から怪我により離脱していた。
24節の松本戦から復帰するも、復帰後得た勝ち点は16試合で18と大黒柱の復帰もチームの結果が付いてきていない。
前々節、J2残留を決めたが千田自身は満足の行くシーズンとは言えないかもしれない。
昨シーズンの相棒、韓浩康は横浜FCに移籍しJ1で23試合に出場と一気に飛躍を遂げただけに悔しさもあるだろう。
韓浩康にも劣らない力は持っている選手なだけに残り試合で活躍を見せ、来シーズン以降へ繋げていきたい。
7.展望
「秋田一体でひたむきに戦う」のがブラウブリッツ秋田というチームである。
これは試合前後の吉田謙監督のインタビューでも度々触れられている。
このインタビューも注目ポイントであるので、中継でもご覧いただきたい。
「秋田一体でひたむきに戦う」とはチーム全体で統一感を持ち、ハードワークし続けることである。
攻守共にその特徴を全面に押し出していくチームだが、より特徴的な攻撃面から見ていきたい。
秋田の攻撃における特徴としてはいかに相手の陣地深くを取るかにある。
この考え方はラグビーに近いイメージがあり、前線にロングボールを入れ込んでくることで陣地を取っていく。
徹底して余計なことはしないのが秋田というチームの特徴でもある。
前線にロングボールを蹴るチームは決して珍しくはなく、今シーズンのJ2においても栃木のように前線の高さを活かすスタイルのチームもあり、試合終盤にパワープレーを行うチームも多いが秋田が特徴的なのは中央へのロングボールではなくサイドの深い位置へロングボールを送ることが多いこと。
先程もデータで見ていただいたが、特に右サイドへのロングボールが多くなっている。
左サイドよりも右サイドが多いのは右利きの選手が多く、ロングボールのセカンドボールを拾い直接ゴール前にクロスを入れていきやすいからとなる。
この場面のように右サイドの深くへロングボールを送り、起点を作ることでサポートした選手がクロスを入れていく形を作る。
前々節から左利きの高瀬を起用することで左サイドへのロングボールも増え始めている。
そのため、今節の秋田は両サイドにロングボールを散らしてくると予想される。
浦上やメンデスによる空中戦の回数は多くなるだろう。
セカンドボールを回収し、同サイドを攻めきることが秋田の狙いとなるが、クロスを入れることができなくてもスローインやCKを獲得できれば狙いは成功となる。
秋田は先程も触れたようにセットプレーを武器としているチームである。
特徴的なのはCKとロングスロー。
まずはCKから見ていきたい。
こちらは高瀬のキックに中村が合わせた場面。
こちらは江口から。
左右に質の高いキッカーを揃え、高さもあるだけに警戒が必要となる。
続いてロングスロー。
前半戦はFC東京に移籍した鈴木準弥や普光院がロングスローを入れていたが、最近のスローワーは鈴木準弥の移籍に伴い右SBにコンバートされた才藤となっている。
CK時同様にCBの千田と増田をゴール前に上げ、高さを全面に活かしている。
甲府はCKも含め、ゾーンで守ることとなるがボールへの反応を速くし自由にシュートを打たれないようにきちんと寄せきりたい。
ボールを持たない際の秋田も統一感を持ち、ハードワークを行っていく。
前線から積極的にボールを奪いに連動してプレスを掛け、相手を捕まえボールを奪うことを狙う。
プレスは内を切りながらサイドへと誘導していく。
サイドへ誘導したのに対し、全体がスライドしボールサイドに人数を掛け密集を作り魂際でバトルを繰り返す。
この際、サイドへのボールに対してSBが縦にスライドし縦を切りSHがプレスバックすることでボールを奪うことを狙う。
空いたSB裏は甲府の選手が流れた場合に近くの選手が付いていく形を取る。
ボールサイドに密集を作るため、逆サイドにはスペースがあるのでサイドチェンジからチャンスを作りたい。
甲府は立ち位置をズラしながらボールを動かしていきたいところだが秋田のホームスタジアムであるソユースタジアムは芝生が長く刈られており、水も撒かないことでボールが動かないピッチとなっている。
そのため、ショートパスを繋いでの前進は難しいかもしれない。
そうなると3節の栃木戦のように甲府もロングボールを前線に入れていく蹴り合いの展開となるのではないか。
秋田はロングボールを入れられるとハイプレスを行わず、ブロックを構える戦い方を選択する。
28節の京都戦でも甲府はハイプレスに嵌らないようにシンプルに相手の背後へ入れていく戦い方を取っていたが、秋田相手にも有効となるだろう。
だが、リラに向けてロングボールを入れることは千田と増田のCBコンビは高さがあるため、有効的とは言い難い。
そのため、甲府も秋田同様にSB裏へ入れていくことが多くなるかもしれない。
一度相手を下げさせることで、高い位置で失ってのショートカウンターを浴びるリスクも減る。
また、シンプルに背後を突くことも秋田相手には有効となるため、長谷川や宮崎が2列目から飛び出す回数を増やしたい。
この場面はまず、秋田の前線からのプレスに嵌らないように左SBの輪笠が前に出てきたことで空けたスペースで起点を作っている。
起点を作ると逆サイドから背後へ飛び出した選手を使い、京都はチャンスを作った。
浦上から長谷川にパスを通し、逆サイドの荒木や宮崎の抜け出しを使うのがイメージできる。
プレスに出ていこうとする所を裏返されるように背後に送り込まれると秋田としてはプレスを掛けにくくなる。
自陣でブロックを構えた秋田は縦横コンパクトなブロックを形成し、ゴールに鍵を掛ける。
下げさせることで、押し込んでいきたいが先程も触れたようにソユースタジアムのピッチはボールが動かないピッチとなっているため、ショートパスでの前進は難しい。
そのため、多少ラフでも前線にシンプルに入れていきセカンドボールを回収して前進を図りたい。
まずはプレスを逆手に取るように背後を狙い、出てこない状況を作った後はブロックの中に立ち位置を取る前線の選手にシンプルに差し込みたい。
また、先程もデータを見てもらったようにセットプレーからの得点も多いチームではあるが、失点も多くなっている。
秋田は甲府と同様にゾーンで守るチームであるため、質の高いボールが入るとフリーでシュート局面を作ることができる。
そのため、キッカーの出来に掛かっている。
セットプレーからの得点が多かった甲府だが、前節久しぶりに得点を挙げた。
長谷川のキックの精度が得点を呼び込んだが、今節も長谷川のキックに期待したい。
甲府一体で秋田を上回ろう!
8.あとがき
試合前日に京都が勝利を収めたら昇格の可能性が潰えて臨む試合となる。
どのような状況となろうと勝ちを目指すことに変わりはない。
残り試合3連勝で勝ち点82を達成したい。
今シーズン初めてJ2昇格した秋田だが、前々節にJ2残留を決めた。
秋田の戦いぶりはJ2サポーターの心を揺さぶっただろう。
秋田のJ2残留は決して当たり前のことではない。
タフなJ2リーグを初昇格したチームが早々に残留を決めたことは称賛に値する。
吉田監督の築き上げたチームは素晴らしいチームである。
昇格が無くなり、悲しみにくれながらの試合となってしまうかもしれない。
それでも秋田同様、称賛に値するシーズンであると思う。
もっと勝ち点を伸ばせたという想いもあるが、身の丈以上の成績であることは間違いない。
2021シーズンも残り試合はたった3試合しかない。
全力で楽しみ、この素晴らしいチームを記憶に留めておきたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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