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J2第14節 ブラウブリッツ秋田戦 レビュー

前節、東京ヴェルディに勝利を収め、迎える今節の相手は秋田。
今シーズン初めてJ2に昇格した相手に先輩の威厳を見せつけたい。

1.スタメン

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甲府
前節と同じスタメンとなった。
ベンチには河田が復帰したが、他の17人は3試合続けて同じとメンバーは固まってきた。

秋田
ベンチ入りも含めて前節と同じとなった。
CBで最も出場時間が多い増田は2試合連続メンバー外とアクシデントか?

2.積み上げ

強風の中での一戦は秋田が風上の前半となった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ゲームの入りとしては、相手のダイレクトプレーや前に早くて強い攻撃、セットプレー、ロングスローなどで、我々もそれらに対して受けて立ち「しっかりとバトルすること」「セカンドボールを拾うこと」で統一感を持ち戦いました。』

立ち上がり最初のプレーでいきなりロングスローを迎える。
これに対し、メンデスがクリアをするがセカンドボールを拾った秋田が二次攻撃、三次攻撃と繋げていく。
入りから秋田の特徴が出る形となった。

一方、甲府も3分に秋田が左サイドから入れたクロスが流れたところを逆サイドの荒木が泉澤へとパスを送る。
荒木のところへ右SBの鈴木がプレスに来ていたことで泉澤が背後を突く形となり、稲葉と普光院がカバーに来たスペースを使いゴール前に迫る形を作る。

立ち上がりから共に狙いとする形や特徴が出る展開となる。

稲葉を中心にボールを刈りに出る秋田に対し、立ち位置をズラしピッチを広く使うことで捕まらないようにする甲府。

最初のチャンスは甲府。

野津田の放ったFKは無回転でゴールに向かうが田中が防ぐ。
野津田のキックの精度が試合ごとに高まってきている。

秋田は前線へロングボールを入れていくが、中央へ蹴っていくのではなくコーナー付近へと蹴っていく。

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コーナー付近を狙っていくことでスローインやFK、CKを獲得する狙いを持つ。
また、ゴールキックは右サイド深い位置で中村をターゲットにしていくがメンデスに跳ね返される。

甲府は可変をしながら両サイド広く使っていく。

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左サイドでは、泉澤に鈴木と沖野が挟み込む形で秋田が対応することが多くなる。
荒木ないしは野津田が空く形となるが、中村のプレスバックで対応していく。
右サイドでは関口がサイドに張ることで輪笠、茂を引きつけ空いたホールで長谷川が浮くこととなる。

飲水タイムを経て甲府は可変の形を変える。

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山田と野津田が横並びの形を保ち、長谷川がリラの近くに立ち位置を取る。
リラや長谷川がボールを引き出しに下がれば、野津田か山田が前線に飛び出す形を作っていく。
また、荒木が内に入ることで中盤に厚みをもたらし泉澤へのパスコースを空ける。

甲府が押し込んでいく形となっていくが秋田は風を利用し、一瞬の隙を突く。

30分過ぎから甲府が続けてチャンスを作っていく。

普段見られる左から右のファーサイドへのクロスとは逆の形。
左で仕留める形も増えれば、攻撃の形は多彩となる。

今度は左サイドからのチャンス。

左サイドでのコンビネーションからクロスを上げ、最後はリラ。
上手くマークを外したが、シュートは枠を捉えられなかった。

甲府はプレスを回避し、ボール保持することで秋田を押し込みゴールに迫っていく形を作っていくが得点には結びつけられない。

終盤には秋田に決定機。

CKからの流れで再度クロスが上がり、一瞬マークを離してしまった隙にシュートを打たれた。
だが、最後まで関口が身体を当てに行ったことでシュートをコントロールすることができずを難を逃れた。
この場面は反省が必要だろう。
相手選手がおらず流せばマイボールにできていた場面であったが、クロスをクリアしセカンドボールを拾われたことから与えたCKがきっかけとなっていた。
セットプレーからの失点が多いだけに、セットプレーを与えないように気をつけたい。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半に危ない場面もチャンスもありましたが、しっかりとゲームをコントロールしながら、我々がある程度イニシアチブを取って進められていたのかなと思います。特に押し込んだ時のボランチが1つ上がって積極的に攻撃参加することや、センターバックが持ち出すことなどは、前半すごく良く出来ていたので、次のゲームに向けて良い状況を少しずつ積み上げていきたいと思います。』

前半押し込む展開を作れたのは、プレスを回避できたからだけでなく相手を自陣に下げさせた後でCBがボールを持ち運ぶことやボランチあるいは荒木がトップに近い位置までランニングすることで相手が出てこれない状況を作ることができたからである。
これらは伊藤監督が目指してきた形であり、栃木戦のように割りきる戦いではなく、伊藤監督の元で積み重ねてきたスタイルで戦うことで押し込む前半となった。

3.ひたむきさ

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『後半に入って我々は風上だったのですが、相手の裏へ抜けるボールや、相手が風下でボールが止まることによって相手の特徴が活かされてしまう状況が出ていました。』

伊藤監督のコメントにもあるように、風下となった秋田が風を上手く活用し秋田ペースの展開となっていく。
ゴール前にボールを入れていく形を秋田は作っていくが、メンデスが立ちはだかる。

55分には秋田に決定機。

沖野から横パスを受けた齋藤が放ったシュートは風の影響もあり、急激に落ちてゴールマウスを捉える。
これは岡西の好セーブで防ぐ。

直後にまたも秋田にビッグチャンス。

これもFKが風の影響で戻され、谷奥が競り勝ち齋藤から沖野へと繋ぎ最後は中村が合わせるも岡西が防ぐ。
秋田の武器である右サイドから沖野が続けてチャンスを演出していく。

59分にも輪笠からのクロスにメンデスがボールウォッチャーとなり、中村をフリーにしてしまうも合わせられず。
秋田がゴールに迫る局面が増えていく。

63分に秋田は中村に代えて才藤を投入する。
直後に甲府も選手交代を行う。
長谷川とリラに代えて鳥海と三平を投入する。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『途中でさんペー(三平)と芳樹(鳥海)を入れて前への推進力を持たせる、セカンドボールを拾ってから自分たちで起点を作ってくれる選手ということで彼らを入れました。』

66分には甲府にビッグチャンス。

左サイドで泉澤、荒木とクロスを入れるタイミングを探り荒木からファーサイドへクロスを上げる。
こぼれ球にゴール前にいたメンデスがシュートを放つも枠を捉えられず。
この場面メンデスはなぜゴール前にいたのか?
左サイドでの作りの前を見てみるとメンデスがボールを持ち運び、泉澤に縦パスを通す。
その流れでゴール前に上がっていったが、ボールを持ち運び相手を押し下げるだけでなく勢いそのままにゴール前に入っていくことで厚みのある攻撃を行うことができる。

後半は大きく可変はせず、ボールを保持する甲府。

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秋田としてはファーストディフェンダーが決まらなかったこと、前線の運動量の低下もありメンデスが持ち運ぶ場面を与える。

そこで、73分に秋田は3人を投入する。
茂、齋藤、沖野に代えて井上、武、久富を投入し前線の運動量を担保する。

今度はCKの流れから荒木のクロスで決定機。

野津田の頑張りからボールを残し、荒木のクロスに関口が合わせるも枠には飛ばず。

得点が取れなさそう雰囲気が出始めるが、キャプテンがその雰囲気を振り払う。

野津田からのCKを浦上が折り返し、新井が反転から放ったシュートはゴールに吸い込まれた。

試合後の新井涼平選手のコメントより。

『秋田戦は攻守でセットプレーがカギになるという考えで準備してきた。一発で決め切ることが難しいと話をしていて、セカンドボールへの反応で僕のところにこぼれてきた。意外と冷静に全体を見て蹴り込めた。』
『得点という形で前線の選手に結果は出なかったが、前線の選手が作り出してくれたチャンス。誰が決めてもいいので、CKから点を取れたことは全員で取れたもの。』

共にセットプレーからの得点が多い反面、失点も多いチームであったがストロングを活かしたのは甲府の方であった。

87分に甲府は泉澤に代えて中村を投入し、守りを固める。

同点に追いつきたい秋田はサイドを起点にクロスから活路を見出していこうとするが、甲府の選手がクロスを上げさせない距離感で守ることでクロスが入らない。
近い距離感で守ることで当たってセットプレーという形になってしまうが、メンデス中心に集中した守りを見せチャンスを与えない。

92分に甲府は野津田に代えて北谷を投入する。
ロングボールをゴール前に入れてくる秋田に対し、高さのある北谷で対応していく。

終盤まで闘い続けた甲府が1点を守りきり、勝ち点3を手にした試合となった。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『まずは用意してきた「バトルすること」「ロングボールに対しての反応」「セカンドボールを拾うこと」「奪ってから回収したあとのワイドへの広い展開」などが、パーフェクトとは言えませんけどある程度は出来ていたのかなと思います。最後にゴールを決めたセットプレーは武器として持っていて欲しいんですけど、ミドルシュートやライン間でのプレーなど用意してきたことで出来ていなかったこともありましたので改善していきたいです。ただサイドからのクロスなどもある程度出来ていたので、最後の精度と怖さのところをもう一つクオリティ上げていかないといけませんので、トレーニングで積み上げていきたいです。』

試合後の新井涼平選手のコメントより。

『秋田のサッカーのやり方、進め方に対してしっかり準備し、対応してやりたいことを出そうとしてきた。対応はある程度やれたが、自分たちの時間はもう少し作れるところがあったと思う。』

試合後の岡西宏祐選手のコメントより。

『秋田の狙いをうまくディフェンスラインと中盤がはね返し、セカンドボールを拾ってくれた。そこまで相手の流れにならずに終えることができた。』

秋田対策として用意してきたことへの一定の手応えはあった。
栃木戦とは違い、完全に割り切ったわけではない中で積み重ねてきたことに対しては納得はいっていないのが伺える。
勝って課題にフォーカスできる流れは良い傾向であり、次の試合に期待したい。

試合後の吉田謙監督のコメントより。

『チャンスは貯蓄できない。一回を決めきる執念が大事だと思います。』
『日々走ることを大切にして、秋田一体で走り抜く。続けることを続けていきたいと思います。』
『続けるべきこと続けて、信じて磨きこんでいく。そういうことができる選手たちだと思ってます。』

試合後の中村亮太選手のコメントより。

『前半も良い形で押し込みましたし、後半は自分自身にも2本決定的なチャンスがあったんですけど、決め切れなかったので。そういうところが最後の失点と、この試合の負けにつながってしまったと思う。キャプテンとしてもエースとしても、しっかり自覚を持ってやっていきたいと思います。』

試合後の才藤才藤龍治選手のコメントより。

『ボールへの執着心、全員の1本への意識っていうのは大事だと思います。』

一方の秋田は一貫している。
足りないものはトレーニングで磨いていくしかない。
いずれのコメントも甲府としても頭に入れておきたいものである。

苦しい試合であったが、勝ち切った試合。
勝負を分けたのはゴール前でのクオリティであったかもしれない。
だが、クオリティ勝負に持ち込めたのは秋田の特徴である「ひたむきさ」で負けず闘い続けたからである。
この「ひたむきさ」が勝ち点3に繋がったが、今後もどの相手に対しても忘れず「ひたむき」に戦えば自ずと結果はついてくるだろう。

4.MOM

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岡西宏祐
得点を決めた新井やロングボールを跳ね返し続けたメンデス、中盤で闘い続けた山田の活躍も光ったが岡西が決定的なシュートを止めていなかったら秋田が勝利を収めていてもおかしくはなかった。
均衡した試合の中で秋田の時間が続いた時間帯に岡西の好セーブで凌ぐことができたことが勝ち点3に繋がった。

5.あとがき

栃木、秋田相手には割りきった戦いで勝ち点を稼いでいくかと思ったが今節は積み上げてきたもので秋田に向かっていった。
割りきって勝った栃木戦も価値のあるものだが、積み上げてきたもので勝った今節はそれ以上の価値がある勝利。
「積み上げてきたもの×ひたむきさ」が秋田の「ひたむき×全力」を上回った。

プレスを剥がされても、押しこまれても闘い続ける秋田の姿勢は見事であった。
秋田の気持ちが挫けていたら、甲府はもっと楽に試合を展開できていただろう。
2、3度あった決定機を決めていくことができれば、今後も吉田監督の元で秋田はJ2で躍進を続けるであろう。

なかなか上が勝ち点を落とさないこともあり、差が縮まらないが勝ち続けるしかない。
焦れたり気持ちが折れてしまえば目標には届かなくなる。
秋田が見せた執念やひたむきさを甲府も負けじと持ち、まだ背中は遠いが一戦一戦戦い続けていきたい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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