J2第31節 アルビレックス新潟戦 プレビュー
今節は越後国に乗り込んでの川中島ダービー。
今シーズン2度目の新潟戦は同勝ち点で迎える一戦となった。
勝った方が3位となり、昇格争いに踏みとどまる権利を掴む試合となる。
1.前回対戦
首位新潟を勝ち点差7で追いかける中で迎えた一戦。
先制しながらも逆転され、勝ち点を離されるかに思われたが終了間際にメンデスのゴールで同点に追いついた。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
2.対戦成績
通算49回目の対戦となる。
甲府から見て11勝17分20敗と新潟が優勢となっている。
アウェイでも甲府の6勝7分11敗とこちらも新潟が優勢となっている。
直近の対戦成績を見てみると現在4試合連続で引き分けとなっている。
3勝5分2敗と勝ち越してはいるものの五分五分の成績となっているが、デンカビッグスワンスタジアムでの対戦を見てみると3勝1分1敗と甲府が有利に進めている。
また、共にJ2に降格した2018年以降は甲府の2勝5分と負け無しとなっている。
3.前節
甲府
ホームでの大宮戦はリラのPKによるゴールを守りきり、甲府が3連勝を決めた。
試合内容については以下のレビューをご覧ください。
新潟
東京ヴェルディとのアウェイゲームは山形戦からスタメンを3人変更。
藤原、福田、本間に代えて千葉、島田、三戸を起用した。
ボール保持にこだわりを持つチーム同士の一戦は、立ち上がりは共に様子見の展開となる。
時間の経過と共に新潟のボール保持が増えていき、新潟のペースとなっていく。
すると12分に新潟が右サイドから早川の仕掛けで崩し、決定機を作るがマテウスが防ぐ。
決定機を止められた新潟だが、14分に三戸のミドルシュートで先制に成功する。
マテウスがパンチングしたセカンドボールを拾い、右サイドからカットインしてシュートを放つとヴェルディの選手に当たってコースが変わりゴールに吸い込まれた。
21分にヴェルディにも決定機ができる。
新潟の前からのプレスを回避するとライン間で起点を作った石浦からのスルーパスに小池がDFラインの背後へ抜け出しシュートを放つもポストに阻まれてしまう。
飲水タイムを経て守備の強度は上がったこともあり、ヴェルディの良い形での攻撃が増えていく。
時間と共にヴェルディのボール保持が増えていくが、新潟も三戸を中心にチャンスを作っていく。
共にチャンスを作ったが、新潟が一点リードして前半を終えた。
後半の開始から新潟は谷口に代えて鈴木を起用する。
後半の立ち上がりも共に様子見の展開となるが、最初にチャンスを作ったのは新潟。
ゴール前で得たFKを高木が直接狙うが、惜しくも枠を外れてしまう。
すると52分に新潟に追加点が入る。
縦パスを受けた高木がディフェンスと入れ替わり右サイドを駆け上がると逆サイドへクロスを入れる。
ロメロフランクが合わせ、新潟がリードを2点に広げる。
リードしている新潟は55分に高木に代えて福田を投入。
直後に杉本の仕掛けからヴェルディがPKを獲得。
このPKを小池が落ち着いて決め、一点差とする。
ここから試合の流れはヴェルディに傾き始める。
66分にヴェルディは杉本に代えて新井を投入。
杉本が左サイドからの仕掛けでチャンスを作っていたが、交代で入った新井も最初のプレーで縦への突破からクロスを上げチャンスを演出する。
69分には新潟が2人の交代を行う。
ロメロフランクと堀米に代えて本間と藤原を投入する。
この交代で藤原が右SBに入り、右SBでプレーしていた早川が左サイドへと移る。
選手交代で流れを変えたかった新潟だが、ヴェルディが攻め手を緩めない。
79分にヴェルディは福村と深澤に代えて持井と浜崎を投入する。
81分には新潟が三戸に代えて星を投入。
83分にヴェルディはンドカと石浦に代えて阿野と佐藤凌我を投入し、攻撃的な布陣で同点、逆転を目指す。
87分には左サイドからのクロスに端戸が合わせる決定機を作るも枠を捉えられず。
すると90分にミスから新潟に追加点が入る。
ビルドアップの際にGKのマテウスのパスが短くなり、ゴール前でボールを失うと無人のゴールに鈴木が流し込み新潟に3点目。
苦しい時間もあった新潟だが、落ち着いて試合を進め勝ちきった試合となった。
4.今季成績
両チーム成績
共に15勝9分6敗で勝ち点54。
得失点差の関係で甲府が4位、新潟が3位となっている。
ホームで勝ち点を伸ばしている甲府だが、アウェイでは勝ち点を落としている。
一方の新潟はホーム、アウェイ共に安定した成績を残している。
特にホームでは15試合で失点はわずかに9と堅い守備を見せている。
甲府
町田戦での完敗を境にチームは一変し、3連勝中となっている。
好調を支えているのは3試合連続で完封をしている守備陣の奮闘にある。
シーズンを通して見てもリーグ3位の失点の少なさを誇っている。
では、京都戦以降何が変わったのか。
大宮戦後の伊藤監督のコメントから探ってみたい。
『ディフェンスラインの設定を今よりも7メートル程アップしたこと、そこから前線への守備がはまったこと、これらが要因かなと思います。』
新井を中心としたDFラインの高さが以前から7メートル程上がったとコメントしている。
DFラインが上がることで前線からのプレスに連動して後ろの選手が付いていけるようになり、前でボールを奪う場面が増えてきている。
大きな変化は枠内被シュート本数の減少にある。
3試合で4本と少ないことがわかる。
中断明け以降、町田戦までの4試合で23本であったことを考えると京都戦を境にDFラインの高さが上がったことが好影響を及ぼしていることがわかる。
前線からのプレスが嵌まったことで相手のシュート局面での時間を奪うことにも繋がり、良い形でシュートを打たせていないことがこの数字に表れている。
新潟
2勝1分2敗と五分五分の成績となっている。
前節4試合ぶりの勝利を収め、3位をキープした。
新潟の最大の特徴はボール支配率の高さにある。
リーグトップであるだけでなく、飛び抜けてトップであることがグラフを見ていただければわかる。
ボール支配率が高いチームにありがちなのがボールを持つだけで得点が取れないこと。
だが、新潟はその例には当てはまらない。
ご覧のように磐田に次いでリーグ2位の得点数を誇っている。
得点の内訳を見ていきたい。
満遍なく得点を挙げているが、クロスからが最も多くなっている。
データ上はボールを保持し、サイドからのクロスでゴールに迫るチームであることがわかる。
5.予想スタメン
甲府
前節と同じスタメンを予想した。
3連勝中のメンバーはいじらず、4試合連続で同じメンバーとなるのではないか。
変更があるとすればアクシデントによるものか。
ベンチ入りのメンバーには変化はあると予想する。
新潟
こちらも前節と同じスタメンと予想した。
変更があるとすれば谷口に代えて鈴木か。
前節谷口は前半で代わっており、後半から起用された鈴木も結果を残したため鈴木の起用も考えられる。
6.注目選手
甲府
野津田岳人
広島から期限付き移籍で加入しているが、2016年には新潟にも在籍していた。
甲府でも監督を務めていた吉田達磨監督の元、リオデジャネイロオリンピック出場を目指し新潟に出場機会を求め移籍していた。
広島の至宝とも呼ばれた存在も27歳となったが、今シーズン甲府で飛躍のシーズンを迎えている。
新潟の地で成長した姿をアルビレックスサポーターに見せたい。
新潟
堀米悠斗
新潟のキャプテンを務める堀米は開幕から全試合スタメンで出場し、中心選手として活躍している。
中断期間中にはオリンピックのスケートボードで金メダルを獲得した同姓同名の堀米雄斗選手と間違えられ、Twitterのフォロワーが増えたことでも話題となった。
前半戦での対戦では先制点に繋がるミスを犯しているだけに今節は得点に繋がるプレーを見せ、チームに勝ち点3をもたらしたい。
7.展望
アルベルト監督体制2年目で完成度も高まってきた新潟。
スペイン人監督の元、磨いてきたポゼッションサッカーはJ1でも通用するレベルにある。
ポゼッションを志向する新潟は様々な形でのビルドアップを用意している。
前節は右SBの早川とCB2人でビルドアップを開始する形を見せた。
左サイドではSBの堀米が、右サイドではSHの三戸が幅を取る形で左右で違ったポジションの選手が幅を取る形を採用したが全体の陣形は343のような形でバランスの良い立ち位置を取っていた。
同じように3人で開始する形でもボランチを一人DFラインに下げてのビルドアップも行っていく。
この形ではSBが幅を取ることが多くなる。
だが、ビルドアップがスムーズに行かないとトップ下の高木がボールを受けに下がってくることもあるため最も得点を演出している選手がゴールから遠ざかってしまうデメリットもある。
甲府相手には1トップであることからCB2人でのビルドアップの形が今節は有利ではないか。
リラに対し、CB2人で数的優位を作りボランチとSBがシャドーの背後にポジションを取り前進を狙っていく。
左サイドでは堀米、右サイドでは三戸が幅を取りロメロと高木が谷口の近くにポジションを取る。
また、新潟のビルドアップで特徴的なのはパスだけにこだわらない点にある。
新潟のCB陣はドリブルで運ぶ作業を多用している。
この運ぶドリブルは相手DFを引き出す上で効果的となる。
このようにドリブルで運ぶことで相手を動かし、スペースを作り突いていく。
これがビルドアップであり、この作業をすることで前線に時間とスペースを与えることとなる。
ゴールに迫る形としては先程も触れたように新潟はクロスからの得点が多くなっているが、甲府のゴール前にはメンデスが立ちはだかっている。
新潟としてはいかにメンデスをゴール前から引き剥がすかがポイントとなり、須貝の背後を突くことでメンデスを吊りだすことを狙っていくだろう。
長谷川、須貝は共に前へプレスを掛けていく意欲は強く、強度も高い反面マイナスポイントも抱えている。
右サイドでは浦上が後ろからコントロールしながら前の選手を動かしているが、左サイドは勢いで解決する傾向にある。
勢いでボールを奪いきれれば一気にチャンスを作れることもあり、全てがマイナスというわけではないが回避されてしまうと危険である。
特に須貝の背後にボールが出た際にはポジショニングが良くないこともありメンデスのカバーリングのタイミングが遅れ、スライディングを交わされ突破を許した場面はこれまでにもあった。
圧倒的な身体能力を活かし、防ぐ場面もあるがリスクが高いことに違いはない。
新潟はボールを奪いにきた長谷川、須貝をいなし背後に三戸を走らせた形からメンデスを吊りだす形を狙ってくるだろう。
メンデスvs三戸。
身長差30センチ近い2人のマッチアップは注目となる。
新潟は丁寧にビルドアップして攻め手を探るチームではあるが、プレスを掛けられるとシンプルに前線へロングボールも入れてくる。
CB+SBでのビルドアップの場面であるが、相手がプレスに来たところを足元で繋がず相手DFの背後へロングボールを送り得点に繋げた。
ロングボールから背後を取り、ゴールに迫る形も持っているが甲府としては前線からプレスを掛け続け、新潟に蹴らせてセカンドボールを拾いボール保持の時間を増やしたい。
この動画の場面のように緩いプレスでは自由に蹴られてしまうため、全体で連動しながら強度の高いプレスを掛け意図したロングボールではなく蹴らざるを得ない状況に持ち込みたい。
だが、新潟は攻守の切り替えが速くセカンドボールの回収は容易ではない。
失ったボールに対し、全体が連動しプレッシャーを掛けてくるが蹴り返していては相手のペースとなってしまう。
このプレッシャーを回避できると新潟は442の形でブロックを敷く形へと移行する。
甲府はビルドアップの際にいつものように可変を行いボールを動かしていく。
この甲府の可変に対して新潟は2トップが中盤へのパスコースを消しながら規制をかけていく。
ボールを奪いに行く際はSHの選手が出てきて甲府のCBに対し、プレスを掛けてくる。
前線から積極的にボールを奪いに出てくる新潟だが、DFラインは甲府のようにハイラインではなく低めに設定されていることが多くプレスを回避すると中盤のラインの背後にはスペースが出来ている。
このようにビルドアップで回避できることが理想だが、プレスを掛けてきたことを利用し、意図して前線にロングボールを入れライン間で前向きに回収できるとチャンスとなる。
甲府が左サイドの守備がウィークポイントであると触れたが、新潟も左サイドの守備には弱点を抱えている。
ロメロがスペースを埋めきれないこともあり、ロメロの背後にスペースはできてくる。
そのため、このエリアで起点を作り前進を図りたい。
ロメロの背後を取ると今度は堀米が遅れて出てくることもあり、堀米の裏が空いてくる。
いずれも攻撃に特徴のある選手でボールを保持している際は力を発揮するが、ボール保持を許すとウィークポイントともなる。
この場面ではロメロが右サイド、堀米が左SBとなっている。
まず、ロメロのポジショニングだが山形のSBに対し食いついているため背後にスペースを作っている。
また、左サイドではプレスを掛けに出た本間の背後でボールを受けられタッチライン際に張る選手へとパスを通される。
堀米が対峙するが、簡単に突破を許し失点に繋がった。
甲府に置き換えると荒木にロメロが食いつき、背後で引き出した山田を経由し宮崎の突破からクロスでチャンスを作る形はイメージできる。
そして、新潟は4バックということもあり逆サイドが空く傾向にある。
宮崎が堀米の裏から荒木が堀米とロメロの間のスペースから逆サイドへのクロスを送り、逆サイドから飛び込んでくる形はチャンスとなるだろう。
新潟がボールを保持する時間が多くなる試合となるはずだ。
甲府としては連勝中機能している前線からのプレスを継続し、焦れずにチャンスが来ることを待ちたい。
焦れずにやることをやる。
その先に結果がついてくるはずだ。
8.あとがき
前回対戦時には勝ち点差7あった新潟と今節は同勝ち点で迎える一戦。
13試合で勝ち点差7を詰めたように残り11試合で勝ち点差9を詰めて昇格することは不可能ではない。
甲府も勝てなかった時期がある中で勝ち点7を詰めたということはいかに新潟が失速したかがわかるかと思う。
同じように京都や磐田が失速する可能性もゼロではない。
限りなく薄い可能性ではあるが、勝ち続ければ何かが起きるかもしれない。
山本が100%出せば勝てるとコメントしてたこともあるが、これからの試合では100%力を発揮できなかったから負けたは許されない。
サポーターも含めて一丸となり、できることを全てやりきった先に奇跡を掴む権利を得る。
まずは目先の相手を倒し、3位に浮上し昇格圏を追いかけたい。
開幕からJ2リーグを引っ張った新潟だが、昇格圏との差は開いてしまった。
甲府と勝ち点で並び3位には位置しているが、前半戦の戦いぶりを考えると物足りなさはあるだろう。
前節の勝利を再浮上のきっかけとしたい。
磐田との対戦は残っているだけに開幕当時の勢いを取り戻せば昇格の可能性はまだまだありそうだ。
甲府との今節は大きな分岐点となる。
今節は昇格争い生き残りを掛けた大一番。
引き分けでは共に満足できない一戦。
白黒つかない川中島ダービーが続いているが、今こそ決着をつける時だ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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