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J2第41節 レノファ山口FC戦 レビュー

勝つしかない状況は変わらない甲府。
京都の結果次第では昇格の可能性が絶たれるが、できることは目の前の試合に勝つことだけだ。

1.スタメン

甲府
前節から3人の変更。
右WBに関口、シャドーに長谷川と宮崎が2試合ぶりにスタメンとなった。
ベンチには山本と三平が戻ってきた。

山口
前節から4人の変更。
ヘナンと石川が4試合ぶり、眞鍋と大槻が7試合ぶりのスタメンとなった。

2.我慢

エンドを入れ替えて始まった試合は山口が右サイドの高い位置へボールを続けて送り込み、開始1分経たずにCKを獲得する等押し込む流れを作る。
一方の甲府は宮崎がアグレッシブな入りを見せる。

最初のシュートは山口。

徐々に山口がボールを握る展開となっていくが、丁寧にビルドアップしながら攻め手を探っていく。

ビルドアップの際に山口は佐藤謙介が下がってボールを受け、CBの両脇が開きSBのような振る舞いを見せる。
また、WBが高い位置で幅を取り、シャドーの2人がライン間にポジションを取り縦パスを引き出すことを狙う。

一方の甲府は積極的に前からボールを奪いに来る山口の高いDFラインの背後を狙っていく。

8分には河田からのロングボールに対して渡部とヘナンが被り、宮崎が抜け出すがシュートまでは打てない。

宮崎が積極的に背後を狙っていたが、10分を過ぎると長谷川と左右を入れ替える。

山口がボールを握る時間が多い展開となるが、甲府も541でブロックを形成し中央は堅く締めてボールを外回しに動かさせていく。

立ち上がりこそブロックの中にボールを入れられることもあったが、山口のボール保持に慣れてくるとブロックの外で回させる時間が多くなる。
ブロックを作られると崩せない山口だが、ビルドアップの際に荒木を食いつかせ、佐藤謙介から荒木の背後へ石川を走らせる形でチャンスを作ろうと狙っていく。
甲府としては守備でのアラート感は高く、ピンチはほとんど作らせないが攻撃での見せ場も作れない。

飲水タイムを経て、甲府は前からの圧力を高めたことで山口がビルドアップで前進できなくなり甲府がボールを持てる時間が増えていく。
今節の甲府は大きな可変は見せず、ボールを保持する。

初めてのチャンスは27分にロングスローから。

荒木のロングスローがメンデスの足元にこぼれるとメンデスがボレーシュートを放つ。

34分には甲府のブロックに侵入し、前進をすると左サイド深くを取り山口がチャンスを作る。
最後は高井が自らシュートを放つが、シュートは枠を捉えられない。
このプレーで甲府のブロックの中に侵入できたきっかけは橋本のキックフェイントから。
パスを出すと見せかけ、甲府の選手を動かしたことで中央を割って入ることができた。

39分には甲府に決定機。

このチャンスの後は山口が押し込んでいく流れとなる。
ペナルティエリア内に侵入される回数も増えていくとアディショナルタイムに山口に決定機。

再三狙っていた荒木の背後を取り、石川がクロスを上げると高井がシュートを放つも河田がセーブ。
こぼれ球に池上が反応し、再度ゴールを狙うが新井がブロックし防ぐ。

試合後の高井和馬選手のコメントより。

『前半はパーフェクトと言ってよいくらいの試合運びでしたし、攻撃面でも崩せてシュートまで行けていましたので、そこで仕留められれば良かったですが、前線3人の連係としては良かったかなと思います。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

ボールを持たれる時間も長く、最後には大きなチャンスも作られながらも我慢した甲府が得点は許さず前半を凌ぐ。

3.チーム力

ハーフタイムには1時間早く始まった試合の結果、山口の残留が決まった。

試合後の名塚善寛監督のコメントより。

『私の口からは伝えていません。(監督が)私になってからずっと、残留という言葉は選手に使っていません。それよりも目の前の試合を100パーセントで勝点3を取るということを考えようと選手に伝えてきましたので、たぶん、(他会場の結果は)知らなかったと思います。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

その中で迎えた後半。
開始から甲府は宮崎に代え、鳥海を投入する。
これにより、鳥海が右に入り長谷川が左に戻った。

後半になり、ビルドアップの形を甲府は変える。

新井が中盤に上がり、長谷川がトップ下気味のポジションを取る。
甲府がリズム良くボールを動かす時間もあったが、基本的には山口がボールを保持する時間が長いことは前半と変わらない。
前半よりも積極的にブロックの中へボールを入れていくが、大きなチャンスは作れない。

この時間を耐え抜くと甲府がボールを持ち始める。
続けてセットプレーを獲得し、ゴールに迫っていくが甲府も大きなチャンスは作れない。

流れを変えたい山口は63分に大槻に代え、梅木を投入する。
梅木はそのまま最前線に入った。

前半から飛ばしていたこともあり、山口は運動量が落ち始め中盤でミスが続き甲府がボールを持つ時間が長くなっていく。

だが、68分に山口に決定機。

佐藤謙介からのパスに高井が背後へ抜け出し、河田と一対一となるが河田が防ぎ難を逃れる。

決定的なピンチを凌ぐと飲水タイムに入る。
飲水タイムが明けると甲府は2人の交代を行う。
野津田とリラに代え、中村と三平を投入する。
三平は7試合ぶりの復帰となった。
また、鳥海と長谷川のポジションを入れ替える。

74分に選手交代が功を奏す。

カウンターの流れから一度はボールを失った甲府だが、関口がプレスを掛けに行くと田中渉の横パスが中村の元へと渡り、右足に持ち替えた中村が足を振り抜くとゴールネットを揺らし甲府が先制する。
得点後には野津田の第一子誕生を祝うゆりかごダンスも見られた。

試合後の名塚善寛監督のコメントより。

『ビルドアップのところもそうですが、レノファはしっかりと後ろからボールを繋いでゴールに運ぶということにトライしていますので、まだまだ伸びしろはあると思っています。その中でミスも出ますが、そこを出さないことが上に繋がるとは思っていますが、トライしないことには上手くならないですし、成長もしないと思っています。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

試合後の池上丈二選手のコメントより。

『ビルドアップからの失点はありましたが、あれは確実にワタル(田中渉選手)のせいではないです。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

失点に直接繋がったのは田中渉のミスではあったが、その直前に甲府にカウンターを許すきっかけとなったのも山口のパスミスからであった。
山口としてはビルドアップしながらゴール前へ運んでいくサッカーを志向する中で起こりうることであり、ミスをしてしまったのも若い選手で名塚監督のコメントにもあるようにチームの伸びしろでもある。
残留が決まっていない状況であれば違ったニュアンスのコメントも見られたかもしれないが、残留も決まり山口のサッカーを確立し来シーズンに繋げていくための糧としたい。

先制した甲府はリスクを掛けず、シンプルに山口の背後へ流し込むボールを増やしていく。

81分に甲府は長谷川に代え、須貝を投入する。
徐々に1点を守り抜く方向へとシフトしていく。

82分には山口がボランチ2人を交代する。
佐藤謙介と田中渉に代え、草野と佐藤健太郎を投入。
この交代で草野が前線に入り、池上がボランチに下がった。

87分にも山口は2人の交代を行い、得点を取りにいく。
石川とヘナンを代え、高木と菊地を投入する。
山口は得点を取りにいく交代を行う。

同点に追いつきたい山口はアディショナルタイムにチャンスを作る。

橋本から前線へロングボールを送るとセカンドボールを高井がダイレクトでボレーを放つが枠を捉えられず。

試合後の高井和馬選手のコメントより。

『全部、決めなければいけない場面でした。今までそういう準備はしてきましたが、まだまだ足りないということを感じました。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

前半から度々チャンスがありながら決めきることができず。

直後に甲府は荒木に代え、小柳を投入し守りを堅める。
前半から決定機を許し、先制を許してもおかしくない場面をいくつか作られながらも交代選手の活躍もありチーム全体で1点を守り抜いた甲府が勝ち点3を手にした。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前半戦若い選手が経験を積んだと思う。痛い目にもあったし、ゲームの流れを読めずに失点もした。1年間で若い選手がすごく成長した。前半戦はアグレッシブさと脆さが見えるシーズンだったが、夏場、体力とメンタルが回復できず・・・。勝ち切ったゲームもあるし、連敗は少なく、1年間を通してすごく成長したシーズンだった。選手はどこに出しても恥ずかしくないパフォーマンスを見せてくれている。残り15試合になってからの選手のパフォーマンスは今の順位に相当するパフォーマンスを出してくれた。若手の成長を見て楽しめた。昇格できなかったのでいいシーズンとは言えないが、サッカー選手として若手は成長してくれた。個人としてもチームとしても成長した。残り1試合が終わると2022年シーズンに向けてスタートを切らないといけない。』

https://www.ventforet.jp/games/53058/live?SmRint=vfk_pc_top_gamelive_bt01

試合後の新井涼平選手のコメントより。

『ここまで41試合を戦った結果なので終盤に来てチームの戦う形が確立し、積み上がったこともあるが、もう少し早くそれを発揮できたり、積み上がってないところでも勝ち切るところが最後勝点4差につながっていると思う。この差は僕たちがJ1に値しないというところ。これをチームとして来季につなげていきたい。』

https://www.jleague.jp/match/j2/2021/112808/live/#player

前半戦の若さの見える試合運びが結果的に重くのし掛かった。
だが、伊藤監督のコメントにもあるように若手選手だけでなくチーム全体で成長をしたシーズンでもある。
J2に降格し、引いて守り抜くスタイルからの脱却を図ってきた中で2021シーズンは甲府改革元年と呼べるような進化を見せたのではないか。

試合後の名塚善寛監督のコメントより。

『ホーム最終戦で勝点3をサポーターに届けられなかったのは本当に残念です。勝点3を届けられるチャンスはありました。そこを決めきるかどうか。特に前半のチャンスの決めきるところを決めきる。ミスはつきものですので、そこをカバーしあいながらやろうというのはハーフタイムでも言いました。やはり点を取るところのクオリティーを上げることが大事だと今日は改めて思いました。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

リーグ18位の得点数と得点力不足のシーズンを象徴するような試合であったかもしれない。
そこに若さも重なり、ミスから失点を喫し勝ち点を失う。
前半戦の甲府にも見られた試合展開であった。
甲府がチーム全体で成長し、上手くいかない試合でも勝ち点を積み上げられるようになっただけに来シーズンの山口も手強い相手となるだろう。

試合後の池上丈二選手のコメントより。

『苦しいシーズンでしたが、レノファ山口は本当に簡単に落ちてはいけないと思っています。1年を通して残留が目標ではなかったですが、苦しいシーズンの中でこうやってチームとして残留できたことは良かったとは思いますが、もっともっと上を目指してこのチームはやらなければいけないと思います。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

試合後の高井和馬選手のコメントより。

『残留を決められたということはチームにとっても良かったですし、来年もJ2でできることはほっとしています。ただ、それに関係なく今日はホーム最終節で、サポーターもたくさん来ていて、そういうところで勝たなければいけなかったと感じています。次に最終節がありますので、アウェイ戦ですが、勝つ試合を見せられればと思います。』

https://www.renofa.com/archives/result2021/kofu-41-2021/

今節、J2残留を決めた山口。
試合内容を見ると残留争いをするようなチームでは無かった。
最終節愛媛相手に勝利をし、来シーズンに繋げたい。

4.MOM

河田晃兵
河田が何度も山口のチャンスを防いでいなければ、勝ち点3は取れなかっただろう。
昇格に向けて勝たなくてはいけない状況で執念を見せ、ゴールに鍵を掛けた。
ビルドアップの際には山口のプレスを回避するパスも見せ、守るだけでなく攻撃でもチームに貢献した。

5.あとがき

勝ったのに…
京都が千葉と引き分け、昇格の可能性が潰えてしまった。
一方で長崎が岡山に敗れたことで3位が確定した。
3位立派じゃないか!
素晴らしい結果である。
当然昇格出来なかったことは悔しい。
それでも今シーズンの歩みは失敗ではない。
私はJ1に上がることが全てではないと思っている。
ヴァンフォーレが存在する限り、私がヴァンフォーレを応援することは変わらないので。
だが、勝ち点差たった4で逃した悔しさは昇格でしか晴らせないと思う。
たくさん悔しさは味わってきた。
2007年、夕暮れの日立台で初めて味わった降格。
湘南との直接対決に敗れ、最終節熊本に勝利しながらも勝ち点1に泣き昇格を逃した2009年。
浦和レッズというビッグクラブと争いながら降格となった2011年。
アディショナルタイムの決勝点で勝ちながらも他会場の結果により降格となった2017年。
プレーオフに進みながら徳島の地で散った2019年。
他にも不名誉な勝ち無し記録やクラブ消滅の危機も乗り越えてヴァンフォーレというクラブは成長してきた。
今年ダメでも、もがき這い上がるのがヴァンフォーレというクラブだろう。
今後の糧になるシーズンとするために昇格が絶たれた瞬間から新たな甲府の歴史は始まっている。
5位→4位→3位と来たら来シーズンは昇格しかないだろ!

山口はホーム最終戦で勝つことは出来なかったが、他会場の結果により残留が決まった。
昨シーズン最下位であったことを考えると見事な残留となった。
渡邉晋前監督就任時に2シーズンでの昇格を掲げていただけに来シーズンは昇格に向けての1年となる。

残り2試合まで昇格の可能性を残し、戦ってくれたチームには感謝しかない。
最高のシーズン、最後ホームで勝って笑って終わりたい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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