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J2第21節ファジアーノ岡山戦レビュー

前節5試合ぶりに勝利し、連勝を目指す一戦。
前節に続き、試合前日に新型コロナウイルス陽性反応が選手に出るアクシデントが起きたが一丸となり勝利を目指したい。

1.スタメン

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甲府
前節から1人を変更。
浦上に代えてメンデスが復帰となった。
ベンチには中山に変わって北谷が入った。

岡山
前節から3人を変更。
濱田、河野、木村に代えて宮崎智彦、徳元、宮崎幾笑を起用。
前々節と同じスタメンとなった。
ベンチには齋藤が復帰した。

2.均衡

小雨が舞う中での立ち上がり。
よりパワーを持って試合に入ったのは岡山。
一方の甲府はリラをターゲットに陣地回復を狙う。
リラは競り合いに勝てるが、サポートが少なくボールを失うことが多くなる。

今節も新井が中盤に上がる可変でボールを動かしていく甲府。

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押し込む状況となるとWBが高い位置で幅を取り、シャドーが内に入る形へと変わっていく。

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甲府が岡山陣内でプレーする時間が長くなるが、決定的な場面だけでなくシュートを打つまでの流れを作れない均衡した展開となる。

最初にチャンスを作ったのは甲府。

新井の縦パスからリラのポストプレーを起点にサイドを使う。
関口がシュート性のボールを入れるとDFに当たり、クロスバーに当たる。
こぼれ球に荒木が詰めるが今度はポストに阻まれ、リラがこぼれ球に詰めるがDFに防がれる。
波状攻撃を見せるが、決めきれず。
直後には新井がミドルシュートを狙うが、梅田が反応し防ぐ。

一方の岡山は川本を中心にゴールを狙っていくが、決定的な場面は作れない。

32分に甲府が野津田の左足から先制する。

鳥海の仕掛けから得たFKだが、相手のクリアミスを拾ったところからターンしての仕掛けで前に運ぶ推進力を見せた。

試合後の野津田岳人選手のコメントより。

『あの位置で(鳥海)芳樹がFKを取ってくれた。あの位置は練習でFKを蹴っていて自信があった。練習どおり決められて良かった。』
『壁の上から落とすことだけを意識した。あとは外に逸れないように。蹴るまで時間があってイメージすることができた。』

何度も見せてきたパワーのあるシュートではなく、コントロールしたシュート。
前節得点を挙げたことで力が抜けてきたのではないか。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『いい時間帯に(野津田)岳人が決めてくれた。彼にとってもターニングポイントになるゲームになったと思う。』

3年ぶりの得点から2試合連発。
ボランチの選手が得点に絡めるようになると相手からすると脅威となるだけに、野津田にとってきっかけとなり得点に絡むプレーを増やしたい。

先制した甲府だが、今節は前節ほどは強度を残さない。
ある程度は構える形を取り、そこから出ていく戦い方をしていく。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『前から行くときのオーガナイズは前節はハマった。今節は5-4-1のブロックからの牽制は上手くできたが、ライン間にボールを入れられたことは修正が必要。』
『5-4-1に関してはギャップがあり難しいところがあるが、ブロックを作りながら押し出せた。』

伊藤監督のコメントにあるようにブロックを組んで牽制することは機能していたが、ライン間を使われる場面が見られた。

ライン間に入ったボールに対しては新井が出ていき、対応するが剥がされるとシュートまで持っていかれてしまう。
この場面のように岡山は2列目の選手がライン間にポジションを取っていく。

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2トップの一人も下がってボールを引き出すことを狙うため、ライン間で浮く形となる。
甲府としてはラインも高く、コンパクトにブロックを形成しているため出し手への寄せをより厳しくしていくしかないがシステム上前線から行きにくいためある程度は致し方ない部分はある。
そのため、ライン間に入れられてもプレスバックを怠らず自由を許さないようにしたい。

40分過ぎには新井がエリア内で相手選手を引っ張った場面があったが、このプレーはPKを取られるべきであったかと思う。
判定に泣かされることもあれば、この場面のように判定に助けられることもある。
だからこそ判定と戦うのではなく、相手チームと戦うべきである。
良い試合をしている時の甲府は審判とは戦っていない。

リードはしたものの均衡した試合展開となった。
その中でも野津田のFKから先制する理想的な試合運びをできた。
前節のように先制後に勢いそのままで追加点という形ではなく、じっくりと相手を見て戦い方に変化をつけたところに成長も見られた。
これまでは受け身になり、押し込まれることが多かったが相手に合わせる大人な戦い方ができるようになってきた。

3.成熟

共に選手交代はなく、後半に入る。

後半に入り、すぐに甲府が追加点を挙げる。

またも泉澤の得点。
これで3試合で4ゴールと得点力まで付いてきた。
ドリブルだけでなく、得点まで取れる選手になってきた。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ドリブルにプラスαとして点に絡むプレーができている。シュートの意欲、そこにフォーカスして点を取れる選手になっていこうという話もした。』

泉澤のシュートに目がいくが、崩しも見事であった。
小柳が少しボールを持ち運ぶことで関口が高い位置まで上がる時間を作り、関口のランニングで幅も深さも取ることに繋がった。
これにより、岡山DFはボール方向へ戻りながらのディフェンスを強いられ関口がマイナスへのクロスを入れたことで目線が再度変わり、野津田の泉澤へのパスでまたも相手の目線をズラす。
大きな展開から始まった攻撃だが、目先をいくつも変えられては守る方は困難となる。
流れの中で点が取れないチームではなくなってきた。

試合後の有馬賢二監督のコメントより。

『今日のゲームもそうなんですけど、焦れずに何とか先に取れたゲームは勝点を拾えている。良い形があるときに先に取ることが大切だし、取れなくても我慢しながら失点しないで推移させていくことが大切。今日の1点目も2点目のところもそう。それができることによって勝点を拾えるなって感じた前半戦でもあります。』

岡山としては我慢したかった時間帯での失点となってしまった。

54分に岡山は2人交代する。
宮崎幾笑と徳元に代わって齊藤と木村を投入する。
共に同じポジションに入った。

試合後の齋藤和樹選手のコメントより。

『2点先に取られた中で、推進力を出して(流れを)変えないといけないと言われて入った。』

後半になり、守備の強度が高まった甲府。

62分に甲府はメンデスとリラに代えて北谷と有田を投入する。
メンデスは怪我明けでぶっつけ本番に近い起用であったのだろう。
リラはまたも得点は取れなかったが、チームへの貢献度は相変わらず高かった。
今節も惜しい場面があっただけに、1点取れればきっかけを作れるのではないか。
投入された北谷、有田は共に同じポジションに入った。
有田も怪我明けの試合となるが、得点を取りたい。

得点を取りたい岡山はサイドからゴールに迫っていく。

交代で入った齊藤が推進力を活かし、チャンスを作る。

65分に岡山は川本と廣木に代えて河野とパウリーニョを投入する。
齊藤が上門と2トップを組み、白井が右サイド、パウリーニョがボランチ、河野が右SBに入った。

選手交代もあり、岡山が押し込んでいく展開となるが甲府の守備ブロックを崩せない。

飲水タイムを経て、甲府は泉澤に代えて長谷川を投入する。
長谷川はそのままのポジションに入った。

追いかける岡山はまたもサイドからチャンスを作っていく。

オーバーラップしたパウリーニョのクロスに齊藤が合わせるが、枠の外に外れる。

決めきれない岡山は82分に甲府にPKを与えてしまう。

このプレーで岡山がハンドを取られてPKとなったが、北谷の隠れたファインプレーでもあった。
先に相手に乗られた格好となったが、このような場合飛ばない選手が多いが飛ばないとファールを取られてしまうため競り勝てなくとも飛ぶことは大切である。

キッカーは有田。

右上に決め、甲府に3点目が入る。
有田にとっては甲府移籍後初ゴールとなった。

試合後の有田光希選手のコメントより。

『ここまでチャンスがあった中で決め切れず、試合に絡めない時期もあったけれど、PKですが決められたことは大きい。PKを蹴らせてくれたチームメートと監督に感謝したい。』
『開幕戦からの10試合に出て取れなかったことの焦りがあって、その間前線の選手が点を取っていることは意識していた。チームが上位にいることがうれしかったが、力になりたいと思っていた。』

野津田以上に有田は苦しんできただろう。
得点だけがストライカーの価値を示すものではないが、得点を取れないことはストライカーにとっては大きなストレスであったはず。
野津田のように解放され、得点を重ねていきたい。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『これまでチャンスがあったなかで前半戦に決め切れず、その後はケガもあって出遅れたがPKというチャンスにしっかり決めた。甲府での初得点は嬉しいと思う。これからは少ないチャンスに点を取っていかないといけない。今後に繋げてほしい。』

リードを3点に広げた甲府は83分に鳥海に代えて金井を投入する。

1点でも返したい岡山は88分に宮崎智彦に代えて濱田を前線に投入し、パワープレーに出る。

するとアディショナルタイムに岡山が1点返す。

右サイド河野からのクロスにニアサイドで喜山がコースを変えると、こぼれ球を上門が蹴り込み1点を返す。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『複数得点は選手にとっても自信になるが、最後の失点は試合巧者になるにはゼロで抑えないといけなかった。そうしないと上位に喰らいつけない。』

3点取ったことは大きいが、無失点で守り切りたかったところ。
今後に向けての反省点となるだろう。

1点返した岡山はその後もゴールに迫っていく。

サイドからカットインした木村がミドルを放つも河田が反応し防ぐ。
前節からスタメン起用されている中で、見せ場をあまり作れていなかった河田だが素晴らしい反応を見せた。
岡山は齊藤と木村がゴールに向かうパワーを加えたことで勢いを増した。

終盤には失点し、岡山に押し込まれたが落ち着いて試合を運べた。
ハイプレスなのかブロックを敷くのか。
速攻なのか遅攻なのか。
チーム全体で共通意識を持ち、戦い方が成熟してきた。

試合後の伊藤彰監督のコメントより。

『ここ2試合、チームはいろいろなところで苦しい状況だった。選手も協力してくれたしクラブも力になってくれた。苦しい時にチームの力が試される。それを体現してくれた選手に感謝したい。』

試合後の野津田岳人選手のコメントより。

『勝てなかった時期が続いて、どういう姿勢で試合に臨むかの意思統一ができた。難しいことがピッチ外で続いて結束が生まれたことが要因だと思う。チーム一丸となって戦うことができた。』
『少し勝てないときがあった中でこの2試合で勝てたことが大きいし、中断までの残り2試合も勝って上位に食らいつきたい。絶対に勝つという気持ちで戦いたい。』

ここ2試合はチームにとって苦しい状況であった。
その中でチームが一丸となり、勝てなかった時期の反省点も活かしながら勝ちきることができた。

試合後の有馬賢二監督のコメントより。

『全体で攻守においてやりたいことはやれているんだけど、勝点を取るためには、勝てるチーム、強くなるチームになるためには、そういうところを消していかないといけないし、しっかりと取り切れるようになっていかないといけないことを痛感したゲームです。』

これが甲府と岡山の差だったのではないか。
岡山も狙いとしていることは出せていたが、勝負の肝の部分で甲府が上回った。
チームとしての狙いを結果に繋げ、相手の狙っていることは出させてしまったが最後の部分でやらせなかった甲府が勝ち点3を掴んだ。

4.MOM

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野津田岳人
2試合続けての選出となった。
地元広島に近い岡山で1ゴール1アシストの活躍と結果を残した。
目に見える結果だけでなく、攻守両面で運動量を発揮し躍動を見せた。
野澤と2試合続けて組んだボランチコンビの躍動がチームを支えている。

5.あとがき

2試合続けての快勝となった。
前節に続き、前日にアクシデントが起きたがピッチに立った選手たちは不安を見せず躍動した。
決定力不足に悩まされていたチームは3試合で11得点と爆発中。
今シーズン移籍してきて点が取れなかった選手が取り出し、泉澤が得点源となったことで得点力が向上した。
一方で堅守がウリであったが、3試合で5失点と苦しんでいる。
出場停止や怪我で離脱していたメンデスが復帰し、交代するまでは失点しなかったことを考えてもメンデスの復調で守備は改善していけるだろう。
攻守が噛み合うまであと一歩という雰囲気まで来た。
中断までの残り2試合も勝ちきり、上位に食らい付いていきたい。

失点の少なかった岡山だが、甲府相手に3失点と苦しい試合となった。
終盤に返した1点を次節以降の希望としたいところ。
甲府側から見れば快勝と言えるが、岡山からしてみれば点差ほどの差は無かったのではないか。
離脱しているイヨンジェの復帰や前線にターゲットとなる選手が加われば、後半戦大きく勝ち点を伸ばす可能性を秘めたチームである。
ここからの巻き返しにも期待したい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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