J2第1節 ファジアーノ岡山戦 レビュー
いよいよ始まった2022シーズンのJリーグ。
開幕戦の相手は大型補強を敢行した岡山。
勝って勢いをつける試合としたい。
1.スタメン
甲府
GKは河田が3年ぶりに開幕スタメンを勝ち取った。
DFラインには昨年シーズンの主力は浦上のみ。
山本は9年連続の開幕スタメン、野澤陸はJリーグ初のスタメンとなった。
WBには須貝と荒木。
ボランチには新加入の石川と松本が名を連ねた。
シャドーには法政大学出身の2年目コンビ。
関口は本職のWBではなく、シャドーでの起用となった。
1トップには昨シーズン9ゴールのリラ。
ベンチは若い選手が多く名を連ねた。
ルーキーの山内、大和、飯島がベンチ入り。
特別指定選手の三浦、二種登録選手の内藤もベンチ入りとなった。
岡山
アクシデント無く、現状のベストメンバーを揃えた印象か。
GKには期限付き移籍を延長した梅田がキャプテンの金山との争いを制した。
CBは新加入のバイスと柳となった。
SBには昨シーズンの主力である河野と昨シーズンはSH起用されることが多かった徳元。
中盤にはルーキーの本山、田中が抜擢され、河井と共に新戦力の3人が名を連ねた。
WGには新加入のチアゴアウベスと昨シーズン活躍の機会が少なかった宮崎幾笑が開幕スタメンの座を掴んだ。
CFにはオーストラリア代表のデュークではなく、梅田同様に期限付き移籍を延長した川本がスタメンに選ばれた。
ベンチには金山、濱田、喜山、デュークと甲府とは違い経験のある選手を多く揃えた。
また、高卒ルーキーの佐野がメンバー入りとなった。
2.開幕
コイントスで勝った甲府が風上を取り、岡山のキックオフで始まった一戦。
立ち上がりは共に前線にロングボールを入れ込む入りとなる。
最初にボールを狙ったのは岡山だが、バイスからチアゴへ通したパスが繋がらずタッチラインを割る。
このスローインから今度は甲府が繋いでいくことを狙う。
対して岡山は前線から同数で嵌めに行くことでボールを奪いに出てくる。
3トップが3バックに嵌めることを狙うが甲府はチアゴの裏、須貝を起点に前進を図っていく。
ボールを保持する岡山に対して甲府は523でブロックを敷き、ボールホルダーに圧力を掛けていく。
岡山は4バック+アンカーの本山でビルドアップを行っていく。
そこに田中や河井もサポートする体制を作るが、対して甲府はリラがアンカーの本山を消しながら柳へ、関口はバイスへとプレスを掛けていく。
関口は徳元へプレスバックも行わなければならず負担が重くなってしまう。
対して岡山は梅田をビルドアップに加え、数的優位を作り回避を狙っていく。
DFラインから丁寧に繋いで前進すると左サイドの深い位置を取り、岡山が最初のCKを獲得する。
キッカーは田中に対し、甲府は昨シーズン同様にゾーンで守ることなる。
唯一石川だけは柳にマンツーマンで付き、岡山の強みを消すことを狙う。
このCKは防ぐが、クリアを拾った岡山が再度ゴール前にロングボールを入れ決定機を作る。
河野からのロングボールに本山が抜け出し、シュートを放つが河田が防ぎ決定機を阻止する。
この流れで得た右サイドからのCKは宮崎幾笑がキッカーとなる。
インスイングのボールを入れることが岡山の狙いのようだ。
押し込んだ際の岡山は3トップがインサイドに入り、SBが幅を取りながらゴール前に圧力を掛けていく。
対して甲府は541のブロックをコンパクトに敷くことでスペースを消していく。
岡山はブロックをこじ開けていくためにバイスからDFラインの背後へのロングボールも見せ、揺さぶりも見せる。
ボールを失っても岡山は切り替えが早く、敵陣で試合を進める時間が増えていく。
徐々に落ち着いてボールを持てるようになっていく甲府。
立ち上がり同様にチアゴの背後から前進する機会が多くなるが、ビルドアップの形は昨シーズンから違いを見せる。
3バック+ボランチでビルドアップを行っていく。
この際に昨シーズンのように可変は行わないが、岡山に同数で嵌められることでボールの前進が容易に進まずブロックの前でボールを持つ時間が長くなる。
ズレを生むためにWBを下げることやGKをビルドアップに組み込むことは今後必要となりそうだ。
また、前進を図った際にも前線での可変は行わない。
WBとシャドーがレーンを変えることはあるが、基本的には自分のポジションを守ることを優先している。
また、レーンが被らないように意識はしているようだ。
16分に甲府がビルドアップからチャンスを作る。
DFラインでのボール回しから山本が右サイドへサイドチェンジを送る。
カットインした須貝からライン間に侵入した長谷川を経由しリラのフィニッシュ。
前からボールを奪いに行きたい岡山に対し、DFラインが上げきれず空いたライン間を突いての形だが中盤に機動力のある選手が多いこともライン間を空けてしまう原因か。
甲府はゴールキックから繋いで前進することも試みようとする。
結果的にロングボールを蹴ったものの繋いでいくために立ち位置も用意してきた。
今後はゴールキックから相手を引き付けて前進する場面も見られるだろう。
25分過ぎから甲府はプレスの強度を高めたことでボールを保持する時間が増えていく。
立ち上がりは関口がバイスにプレスを掛けていたが、石川がバイスまで出ていく形へと変更する。
これにより岡山としても同数で嵌められる形となり、ビルドアップでのミスが多くなる。
すると30、31分と続けて甲府にチャンス。
右サイドからボールを運んだ須貝のクロスのこぼれに長谷川が反応し、続けてシュートを放つが枠には飛ばず。
この流れで始まったゴールキックからプレスを掛けていくとバイスのパスを関口がカットし、リラがシュートを放つも梅田に防がれる。
甲府に流れが傾く中、先制に成功する。
長谷川のプレスに連動し、松本が河井にプレスを掛けていくとボールを奪いきり、リラへとスルーパスを送る。
バイスの背後を突き、柳を引き連れながらボールをキープしバイスも引き付けながら突破すると冷静に走り込んだ松本へラストパスを送り、松本がゴールに流し込み先手を取る。
ハイプレスからの連動し、ボールを奪いきり素早く背後を突きボールを奪った松本が足を止めずゴール前に入っていく連続した動きを作ってのゴールと素晴らしいゴールでのシーズンスタートとなった。
試合後の松本凪生選手のコメントより。
だが、キックオフの流れから岡山にFKを与えるとすぐに同点に追いついつかれてしまう。
田中がゴール前に送ると柳が折り返す。
山本が足を滑らせたことで抜け出した河井にクロスを上げられ、川本がヘディングで合わせて岡山がすぐに同点に追いつく。
何でもない場面ながら個人のミスが絡んで失点となってしまった。
追いつかれた甲府は42分にFKからまたも失点を喫する。
山本と野澤が被り、チアゴが収めた所へ走り込んだ田中が狙い澄ましたシュートを放ち、岡山が逆転に成功する。
この場面はチャレンジする選手、カバーする選手がハッキリとしていれば防げた場面。
だが、風もありボールが止まったことで判断を迷うこととなってしまった。
試合後の田中雄大選手のコメントより。
先制をしながら10分も経たずに逆転を許してしまう試合運びの拙さが出てしまい、岡山にリードを許して前半を終えることとなってしまった。
試合後の木山隆之監督のコメントより。
個人の判断やミスからの失点が続き、もったいない前半となってしまった。
だが、目指す形の片鱗は見せられたのではないか。
3.悪夢
後半の立ち上がりは甲府がボールを保持する流れとなる。
DFラインで落ち着いてボールを動かしながら山本から大きな展開でボールの前進を狙う。
一方の岡山はボランチの石川が前線へプレスを掛けてくる所を裏返す形でカウンターを狙っていく。
立ち上がりは落ち着いて試合に入った甲府だが、52分に岡山にスーパーゴールが生まれる。
チアゴの判断、技術は見事であったが、この場面もまたもミスからとなった。
山本が縦パスを付けた所を関口がボールを奪われ、前半にも一度見せたがチアゴがロングシュートを放つと風にも乗りゴールに吸い込まれてしまう。
試合後のチアゴアウベス選手のコメントより。
2点のビハインドを負ってしまった甲府だが、5分後に試合を決定付ける4点目が入ってしまう。
1失点目同様にゴール前で山本が転倒し、チアゴにシュートを許してしまった。
そもそもの原因は荒木が倒れたところでのセルフジャッジ。
足を止めたところを岡山は見逃さなかった。
4点共にミスが絡んでいるが、サッカーという競技は必ずミスが起こるもの。
そのミスを的確に突いた岡山を褒めるべきである。
だが、決定的なミスは減らしていかなければいけない。
試合後のチアゴアウベス選手のコメントより。
3点を追い掛ける甲府は60分に松本に代えて山田を投入する。
この交代を機に須貝が左のWB、関口が右WB、荒木がシャドーにポジションを移した。
62分に岡山は川本に代えてデュークを投入する。
オフシーズンにはオーストラリア代表にも選出され、合流が遅れたデュークだが開幕から出場機会を得た。
岡山としては無理にボールを奪いに行く必要は無くなり、甲府は相手のブロックの外でボールを回すだけとなってしまう。
相手のブロック内に侵入出来ずにいると奪われてカウンターという展開が続いてしまう。
解任された2018年にも見られた現象であり、あの時の再来となってしまわないか心配である。
ボランチの選手が積極的に縦パスを入れていく場面を増やしたいところ。
72分に甲府は野澤に代えて三浦、岡山は河井とチアゴに代えて佐野と木村を投入する。
特別指定選手の三浦、高卒ルーキーの佐野はJリーグデビューとなった。
チアゴは2ゴール1アシストと圧巻の活躍を見せた。
怪我さえしなければJ1クラスであることを証明したのではないか。
この交代で甲府は須貝が3バックの左、三浦が左のWBに入った。
三浦が積極性をもたらし、ブロックの外でボールを回すだけだったところにアクセントを加えていく甲府。
79分に岡山は本山と宮崎に代えて喜山と野口を投入。
84分には大きな展開からチャンスを作るが、長谷川のシュートは枠の外へ。
87分にも長谷川のミドルシュートからゴールに迫る。
終盤は長谷川にチャンスがいくつか訪れたが、決めきれず。
試合中はフラストレーションを溜めていることが伺え、試合後には涙も見せていたようだが一人で背負う必要はない。
85分に甲府は石川に代えて二種登録選手の内藤を投入する。
その後も決定機は作れず、岡山が逃げ切りに成功した。
結果は満足のいくものでは無かったが野澤が初スタメンを飾り、三浦や内藤に出場機会を与えられたことはプラス材料と言えるだろう。
試合後の吉田達磨監督のコメントより。
今節は最も気を付けなくてはいけない時間帯に失点をしてしまったことが全てである。
高い授業料を払ったと思って切り替えていくしかない。
試合後の松本凪生選手のコメントより。
松本のコメントにあるように後半は落ちついて試合には入れていた。
一方でその落ち着きが吉田監督のコメントにもあるように勇気が欠けてしまった原因でもある。
落ち着きながら一刺しできる勇気を次節以降期待したい。
試合後の荒木翔選手のコメントより。
良い面も悪い面もあったかと思う。
隙や甘さを岡山は見逃してくれなかった。
学ぶことが多い試合だったのではないか。
試合後の木山隆之監督のコメントより。
木山監督が就任し、明確に岡山の色は変わった。
そんな印象を受ける試合であった。
準備してきたものを出せていたかとは思うが、完成度はまだまだ高くはないだけに伸び代も残しているとも言える。
岡山の完勝であった。
4.MOM
田中雄大
多くの人がチアゴアウベスを選ぶかと思うが、田中を選出した。
Jリーグデビュー戦での見事なゴールは決勝点となった。
だが、得点以上に田中が気の利いたポジションを取ることでポゼッションを安定させ、守備では運動量豊富に球際激しく戦う姿勢を見せた。
新たなスタイルを構築していく岡山の象徴的な選手となるかもしれない。
5.あとがき
結果は大差が付き、厳しい敗戦ではあるが前半は狙いを持って試合に臨めていた場面もあった。
後半の出来は試合展開もあるため、常にこのような試合になるわけではないが前回就任時にも多く見られた現象である。
前回就任時、シンガポール代表時代の課題がそのまま残っていることは不安要素である。
試合後吉田監督も仰っていたようにミスをしても勇気を持ってブロックの中に入っていく回数を次節以降増やしていけることを期待したい。
勇気を持てず、外回りにボールが回る今節の後半のような戦いが続くと厳しいシーズンとなりそうだ。
だが、サポーターとしてできることは信じることしかない。
高い授業料を払ったと思って切り替えて次節臨んでもらいたい。
厳しい幕開けとなったが、今節が今シーズンワーストゲームとなって欲しい。
岡山は完成度はまだまだ低い印象を受けたが、昨シーズンからのスタイルの転換を考えると今後が非常に楽しみな試合となった。
木山監督の元で積み上げを図り、ハンイグォンの合流や噂されているステファンムークが加われば上位進出の可能性は充分あるだろう。
J1昇格に向けてサポーターに期待を抱かせる最高の試合となった。
岡山さんホーム100勝おめでとう!
暫定ながら最下位スタート。
これ以上落ちることは無いが、ここから這い上がっていくしかない。
だが、松本山雅が降格し、大宮が残留争いに巻き込まれるリーグ。
ネガティブ過ぎるかもしれないが、上がっていくことは簡単なことではない。
開幕は勝てないとポジティブな自分もいるが、このモヤモヤした気持ちを次節振り払い早めの勝ち星を挙げたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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