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最近の記事

馬の全身麻酔におけるプロポフォールの使用

近年、馬の全身麻酔において、バランス麻酔やマルチモーダル鎮痛の概念が導入されている。 プロポフォール(Pro)は、短時間作用型の注射麻酔薬であり、CRI の速度調節で麻酔深度を容易に調節でき、蓄積が少なく、麻酔からの回復も優れていることから、馬における全身麻酔に利用されている。 今回はプロポフォールを用いた全身麻酔について紹介する。 用法 前投与 メデトミジン 5〜7 μg/kg 導入 ミダゾラム(0.02〜0.06 mg/kg) ケタミン(1 mg/kg) プロポ

    • 馬のエンドトキセミア

      正常な腸粘膜バリアと蠕動運動は、消化管内腔に存在するエンドトキシンの吸収を防ぐが、疝痛などの消化器疾患が起こると、粘膜が損傷し、エンドトキシンは急速に細胞内に浸透する。 そのためエンドトキセミアは、馬の消化管疾患の合併症として発症するリスクが高い。 治療 エンドトキセミアの治療目的は、以下に分けられる。 ・組織損傷に起因するエンドトキシンの血液循環系への侵入防止 ・心血管系の虚脱防止 ・損傷を受けた腸管からのさらなるエンドトキシン吸収の防止 輸液 基本的な治療の一つで

      • 馬のウォブラー症候群

        ウォブラー症候群は後躯を主とした運動失調あるいは不全麻痺などの神経症状を呈する病態であり、若い牡馬に好発する。 原因は脊柱管の動的あるいは静的な狭窄であり、脊髄神経の圧迫変性により神経症状が歩様に現れるとされている。 動的狭窄は運動時、特に頚部の屈曲時にのみ起こり、C3-C4およびC4-C5で最もよく認められ、生後8~18ヵ月の馬に好発する。 静的狭窄は頚の位置に関係なく起こり、C5-C6およびC6-C7に最もよく認められ、通常1~4歳の馬に発症する。 診断 歩様検

        • セボフルラン麻酔におけるメデトミジンCRIの臨床有用性

          通常、馬の手術時の全身麻酔には、吸入麻酔薬が用いられている。 中でもセボフルランは血液溶解度が低く、 ・麻酔導入が迅速 ・麻酔深度の調節が容易 ・覚醒が円滑  といった利点を持っている。 その一方、セボフルランは用量依存性に呼吸循環系を抑制することが知られており、麻酔のリスクを高めている。 それゆえ、吸入麻酔薬の必要量を減少させることを目的としたバランス麻酔法 (吸入麻酔薬と麻酔補助薬の併用法)が、応用されている。 一般に、α2アドレナリン受容体作動薬が麻酔補助薬に用

        馬の全身麻酔におけるプロポフォールの使用

          グラム陽性球菌に対するセファゾリン投与法

          時間依存性抗菌薬であるセファゾリンは、血中薬物濃度が MIC を超えている時間(fT>MIC)が長いほど効果が高くなると考えられており、吸収が緩徐な筋肉内投与ではより高い効果が期待されている。 本報告では、セファゾリンの筋肉内投与および静脈内投与の PK/PD 解析から、輸送熱やフレグモーネの原因菌であるグラム陽性球菌に対する投与法が検討された。 健常馬 7 頭にセファゾリン 5 mg/kg の静脈内および筋肉内投与が実施され、投与後の血中セファゾリン濃度測定、St

          グラム陽性球菌に対するセファゾリン投与法

          馬における気管切開術

          気管の解剖学 馬の気管は食道の腹側(頭側)〜右側(尾側)に位置し、左右の幹気管支への分岐は第4-6番目の肋間で起こる。 平均的な成馬における気管断面の直径は5.5cmで、わずかに扁平な円形をしているが、これは気管に存在する軟骨輪の背側が欠損し、間隙を結合組織や気管平滑筋線維が架橋していることに由来し、呼吸時の気管拡張を可能としている。 また各軟骨輪の間には輪状靱帯が存在し、頚の動きに伴う気管の柔軟性に寄与している。 一時的な気管切開術 一時的な気管切開術は、急性の上

          馬における気管切開術

          子馬のロドコッカス・エクイ(R. equi)肺炎

          子馬におけるロドコッカス・エクイ(R. equi)感染症は、生後30~90日齢に現れる、肺炎を主徴とする疾病である。 最も一般的な症状は、広範な膿瘍および化膿性リンパ節炎を伴う化膿性気管支肺炎だが、その他に腸炎、ブドウ膜炎、感染性・免疫介在性関節炎、骨髄炎なども引き起こす。 肺機能喪失に対する子馬の代償能力が優れていることもあり、早期診断が難しい疾病である。 臨床所見 初期に呼吸数の増加と軽度の発熱が認められるが、症状が見逃されることが多い。 病状が進行すると、鼻翼の

          子馬のロドコッカス・エクイ(R. equi)肺炎

          子馬の感染性関節炎

          子馬では、出生直後から出生後30~45日齢までに罹患した感染症(臍・呼吸器・腸管)が、感染性関節炎を引き起こすことがある。 子馬の感染性関節炎は以下の4つに分類される。 S型(滑膜性) E型(骨端性):骨端の軟骨下骨に感染が存在 P型(成長板性):成長板骨幹端側に感染が存在 T型(手根・足根骨性):手根・足根骨の感染を含む 一般にはS型とE型が多いが、他の型も散発する。 臨床所見と診断 典型的な臨床症状として、跛行、発熱、関節の腫脹がある。近位の関節では腫脹が

          子馬の感染性関節炎

          子馬の尿膜管遺残

          病因 尿膜管は在胎中における、胎児の尿を尿膜腔に排出する器官であり、分娩時には通常閉鎖している。 しかし、先天的に尿膜管が開存している場合と、出生後に再疎通する場合があることから、新生仔馬の臍は出生後24時間と72時間に2回評価する必要がある。 正常な仔馬の臍は、生後24時間は湿った肉質の構造である。これが徐々に乾燥、萎縮し、生後7日から14日の間に自然に剥落する。その間に尿膜管は閉鎖している必要がある。 尿膜管遺残は、長い臍帯と部分的な臍帯捻転により尿膜管に圧力がかか

          子馬の尿膜管遺残

          馬原虫性脳脊髄炎(EPM)の予後

          馬原虫性脳脊髄炎(EPM)は主に Sarcocystis neurona (稀に Neospora hughesi )が馬の中枢神経系に侵入することによって引き起こされる。 S. neurona の終宿主はオポッサムであり、オポッサムは糞便を介して環境中に S. neurona のスポロシストを排出し、馬がそれを摂取することで感染が成立する。 S. neuronaは馬に侵入後、腸管内と全身の血管内皮細胞で増殖し、中枢神経系に至ると考えられているが、その侵入経路は未だ不明であ

          馬原虫性脳脊髄炎(EPM)の予後