見出し画像

質問:フィラリアの薬を飲み忘れた!

質問:フィラリアの薬を飲み忘れた!!!

自由研究のヒント(今回は回答)

フィラリアのお薬がマクロライド系のものなら飲み忘れても2週間以内なら効果がしっかり出るのですぐ飲ませる!

それ以上経っていると感染してしまった可能性は出てしまうけど、気づいた段階ですぐに飲ませる!

===================
今回は自由研究ネタではなく、友人からの質問の回答になります。獣医あるあるかもしれませんが、犬や猫の獣医師をしているとたまに友人から健康相談を受けることがあります。

友人: 飼ってる犬のフィラリアの投薬予定日が1週間前だったけど飲み忘れちゃった!今から飲ませてももう予防できていないかな!?

私の回答: 飲ませているお薬がミルベマイシンやモキシデクチン、セラメクチンなどのマクロライド系のお薬なら飲み忘れても2週間以内に飲ませれば効果はきちんと出るよ、それ以上だと感染してしまった可能性はあるけど、新しい感染を防ぐために今すぐ飲んだ方がいいよ。でも薬の種類によっても異なるし、それぞれ病院ごとにやり方が違うかもしれないからかかりつけの先生にも一度聞いてみてね。

さて、なぜ飲み忘れてから2週間以内なら効果はちゃんと出るのでしょうか?

フィラリアのなが〜いお話①で、フィラリアの幼虫には脱皮するごとに成長し、1から5までのステージがあるとお話しました。幼虫はそれぞれのステージによってL1からL5と呼ばれます。実はこの知識は獣医師にとってはフィラリアの予防のためには非常に大切なものです。
フィラリア感染犬を吸血した蚊の体内に入ったL1は、蚊の体内でL3まで成長します。蚊によって新しい犬の体内に進入したL3は、約10日前後でL4に成長します。そしてそこから50日前後でL5になり、心臓を目指します。

フィラリアの予防薬でよく使われるマクロライド系のお薬はこのL 4の段階に効果を発揮するので、幼虫がL4でいる間に予防薬を与えていくというのがフィラリア予防の核の考えです。

L3でいる期間も約10日はあるので、蚊が出てすぐ感染しても直後はお薬が効きません。フィラリアの予防はHDUを元に蚊が出る期間を算出したら、そこから1ヶ月後からスタートします。予防を終えるのも同じ考えに基づいており、蚊が出終わってから1ヶ月後に最後の予防薬を飲むことで蚊がいなくなる直前に感染した分のフィラリアの幼虫をL 4で退治します。

予防が始まったら30日ごとに予防薬を飲ませることで、1ヶ月の間に感染したフィラリアの幼虫L4を波状攻撃のような形でやっつけることができます。L4期間は50日前後あるのに予防薬の投与頻度が30日ごとと少し余裕を持たせてあるのは、飲み忘れによる感染予防の失敗を低くするためです。飲ませる予定日から2週間以上あくとL 5に成長している幼虫がいる可能性が出てくるのですが、それ以上感染を広げないために気づいた段階ですぐ飲ませます。

今は色々な予防薬がありますし、病院によってもやり方は少しずつ異なってくるので飲み忘れた時はまずはかかりつけの動物病院に相談してみることをお勧めします(*δωδ*)

参考図書

『最新 家畜寄生虫病学』板垣博、大石勇、今井壮一、板垣 匡、藤崎幸蔵

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。