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論文紹介:ナマケモノ とガのうんこを巡る素敵な関係

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ナマケモノは木の上で生活する草食動物です。素早く動くのも苦手で、武器となる牙も持たないのでひっそりと木の上で生活しています。
ミツユビナマケモノの体にはガが棲んでいることが知られています。体表に藻類が生えて緑色にみえることもあるナマケモノは時折グルーミングをしますがガを取り除くことはできていないようです。

ナマケモノは週に一度しかうんちをしません。素早く動けず武器になる牙もないナマケモノにとって地上は危険な場所。

それなのに、わざわざ地上に降りてうんちをします。A syndrome of mutualism reinforces the lifestyle of a sloth という論文では、なぜそんな危険なことをするのかというヒントになる報告がされました。

地上に出されたナマケモノのうんち に雌のガが産卵し、またナマケモノに寄生します。ナマケモノの体表に出されたガのうんちは藻類の養分となり、ナマケモノはその藻類を食べることで栄養源にしているというのです。

省エネ生活をしているナマケモノにとってガと藻類は採食のために動き回らなくてもよい持ち運び可能な栄養源であり、ガのために地上でうんちをしているのかもしれないと考察しています。

対象
大人のミツユビナマケモノ19頭
大人のフタユビナマケモノ14頭

方法
それぞれのから0.1gの被毛を採取して無機性窒素とリン濃度を測定し比較しました。
藻がはえているか測定するためにクロロフィルⅡa濃度を測定しました。

結果:
1頭のミツユビナマケモノから15.2匹(±2.9匹)のガが採取されました。
1頭のフタユビナマケモノから4.5匹(±1.3匹)のガが採取されました。
ミツユビナマケモノの毛皮にはではフタユビナマケモノよりも高濃度のアンモニウムが含まれ、藻類がより多くはえていたことがわかりました。アンモニウム濃度が高いほどより多くのガがナマケモノ の毛皮に含まれていることも明らかになりました。体重の2.6%が藻類であることもわかりました。この藻類は消化しやすい炭水化物や脂質も多く含まれていることから、ナマケモノにとって効率のよいエネルギーになっていると考えられます。

結論:ナマケモノ に寄生するガのうんちなどが藻類の養分となり、さらにその藻類はグルーミングの際にナマケモノの体内になり、栄養源にもなっていると指摘しています。見た目が緑っぽくなるので、ナマケモノを食べるワシなどから身を隠すカモフラージュとしても役立っているかもしれないと述べています。

ふー的コメント:
すごい関係ですね。今度動物園に行ったらナマケモノの体に植物が生えているかみてみます。ナマケモノがとっても好きになりました。

参考:A syndrome of mutualism reinforces the lifestyle of a sloth , Jonathan N Pauli etal , 2014, Proc. R. Soc. B 

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。