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暑い夏、動物はどうやって体温を下げる?

自由研究のヒント
なぜ人は犬やうさぎよりも暑さに強いの?

→汗腺が発達していて汗の水分蒸発により熱を体外に逃すことができるから
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暑い夏がやってきました。動物病院で働いていた獣医なので基本的には犬や猫やうさぎが好きなのですが、久々に学生時代のテキスト『標準生理学』を読んでいたら、人間はすごい動物だなと改めて思ったので今回は人間が主人公?です。

犬やウサギは人よりも暑さに弱く、熱中症になりやすい動物です。本記事筆者は犬やウサギの飼い主さんには高温多湿の時期は室温を23〜25度くらい、湿度は50%前後に保つことをおすすめしています。
実は人間は哺乳類の中でも際立って暑い環境に適応できる動物であり、50度の環境でも37度の体温を一定に保つことができます。

なぜ人が快適に感じる温度よりも少し寒い温度で管理することをおすすめしているかご紹介していきたいと思います。

熱は体の奥から表面へ血の流れによって運ばれます。
体から熱を逃して体温を下げる方法は以下の4つのものが挙げられます。これは人だけでなく、犬猫やうさぎでも同じです。

①水分蒸発:汗をかいて熱を逃します。水は蒸発する時に固体から熱を奪うという性質があります。これは現象で、すべての生き物で同じことが起きます。人は汗を出す腺である汗腺が全身に分布しているので、暑くなると汗をたくさん出すこと(発汗)で体の熱を下げることができます。しかし、犬や猫では足の裏にしか汗腺がなく、うさぎに至っては口の中にしか汗腺がありません。体温よりまわりの温度が高くなり熱が体内に入ってくるような高温だと、水分蒸発が唯一の熱放散手段になります。汗腺が全身にありどこからでも汗をかける人間は、熱放散を他の動物よりうまく行うことができるのです。

②伝導:皮膚や脂肪を通じて空気に触れることで熱を逃す方法です。しかし、皮膚や脂肪の熱の伝わり具合は低いので、体から熱を逃すのに伝導の占める割合は小さいです。しかし、水中の場合は別です。暑い夏プールに入っていて気持ちいいのは、体温よりも低い水中に長い時間いると、水に接した皮膚から熱が奪われていくためです。これは伝導によって熱が体から逃がされたということです。プールから上がって寒くなるのは、水分蒸発による熱放散が加わって熱がたくさん奪われるからですね。

③放射:体に接していない物体と生体との間の電磁波による熱の移動です。例として太陽からの赤外線の放射や、生体からの赤外線の放射があります。

④対流:体の表面の近くの空気は温められることで上昇し、空気の流れが生じます。この空気の流れによる熱の放散のことを対流といいます。
風がふいたり、人や動物が運動することで強制的に対流が起こると皮膚に触れる空気も増えるので熱の放散はさらに増えます。扇風機で風にふかれると気持ちがいいのは対流で熱を逃しているためです。

参考文献
小澤 瀞司,福田 康一郎,本間 研一,大森 治紀,大橋 俊夫 『標準生理学』, 医学書院

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。