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カッコウの産卵数は15~16個。 から考えること

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今日も動物好きな獣医師が普段図鑑をみながらどんなことを考えているかご紹介します。

カッコウの産卵数は繁殖期に15~16個だそうです。
これをみて考えたのが下記のものです。

・産卵数が多すぎる
・雛の育成に手間がかからない(すべてに餌を運ぶのは困難、鶏のように産卵直後から自立歩行して雛自ら餌をついばめる食性?子育てを手伝ってくれるものがいる?)
・ヘビや哺乳類などに捕食されまくるので子供をたくさん産まないと生き残るヒナがいない過酷な環境?

私の予備知識は
・カッコウは托卵する
・カッコウ♪と鳴く

くらいのものです。

いくつか論文等を読んで答え合わせしてみました。世界には鳥は約1万種類存在します。そのうちの1%、約100種が卵を他の種類の鳥に育てさせることが知られています。
さまざまな種が知られていますが、今回産卵数に着目したカッコウ目カッコウ科も含まれています。

カッコウ科の鳥に托卵されてしまう鳥は日本ではオオヨシキリやウグイスが知られています。托卵先の母鳥にとっては、自分の子供の卵を捨てられるだけでなく、まったく関係ない鳥の子供の世話をするはめになりメリットありません。

ただ他の鳥の子供を育てさせられているだけではありません。
寄生先の母鳥も様々な対抗手段を持っています。
卵の模様や色、大きさからカッコウの卵を区別して捨てたり、托卵に気がつくと巣を捨てて新しく巣を作ったりして対抗しています。

オオヨシキリの1歳の母親は、2歳以上の母親よりもカッコウの卵を見破れず育ててしまう割合が高いです。このことから、1歳の時に育てた子が自分の子ではなく他の鳥の子だということを学習していると考えられます。
また、カッコウは大人の体に比べると卵は小さく、孵化までの時間も短いです。

また、日本で托卵を行う鳥としてカッコウ科のホトトギスが有名です。ホトトギスの托卵先であるウグイスは、巣の前に置かれたホトトギスの剥製を激しく攻撃します。托卵を行わない無害なキジバトの剥製はほとんど反応しないことも明らかになっています。

こうした攻撃を避けるため、カッコウの母鳥が産卵する時間は数秒から10秒前後と非常に短いことも知られています。

寄生先の母鳥にカッコウの母鳥自身が攻撃されるのを防ぎ、寄生先の母鳥に見破られて捨てられる卵が一定数いることを見越して、素早くたくさんの卵をさまざまな鳥の巣にうみつけているのですね。さらにカッコウの卵は10~13日と托卵先の母鳥の卵より早く孵化します。

最初の予想の答え合わせは下記の通りです。

・産卵数が多すぎる:寄生先の母鳥に対抗される分をみこしている。

・雛の育成に手間がかからない(すべてに餌を運ぶのは困難、鶏のように産卵直後から自立歩行して雛自ら餌をついばめる食性?子育てを手伝ってくれるものがいる?):雛が育つには他の多くの鳥と同じくお世話が必須だが、世話をするのは自分ではないので自分の育てられる能力以上にたくさん産んでも大丈夫

・ヘビや哺乳類などに捕食されまくるので子供をたくさん産まないと生き残るヒナがいない過酷な環境:捕食者というよりは、寄生先の母鳥に見破られて捨てられる分をみこしている。

参考
騙しを見破るテクニック:卵の基準,雛の基準─托卵鳥・宿主 の軍拡競争の果てに─  田中啓太, 日本鳥学会誌
61(1): 60–76 2012

托卵習性に見る鳥類の繁殖適応 樋口広芳 Journal Reproduction and Development, Vol,41, No.6, 1995


ホトトギスの托卵に対するウグイスの対抗手段
‐リスクの変化に対応した防衛行動の調節‐
https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/50354.pdf

数値でみる生物学 R.フリント、浜本哲郎

犬や猫、ウサギの獣医師です。色々と勉強中の身ですが、少しでも私の経験や知識を飼い主さんや動物に還元していきたいと思います。