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誤差

 これから先に綴られる文字は、一人の人間がただただ生きてきた軌跡であり、寝ても覚めても上にも下にもピークはない。過ぎてきた時間を繋いだだけの文字の羅列である。だって私は、平凡な人生という直線からはみ出さないように、誤差が大きくならないように、そうやってずっと生きてきた。


 平凡な人間の考えることは、びっくりするぐらい平凡である。なので、その期待を裏切らず、まぁまずは幼少の頃の話をしようと思う。


私が幼稚園生だった頃、外で遊ぶ時間はいつもジャングルジムの塗装をはがして遊んでいた。カサブタをはがすように。ちょっとずつちょっとずつジャングルジムの傷を広げていった。はがしても出てくるのは血ではなく、茶色の焦げ付いた皮膚だった。全部引っぺがして、ジャングルジムを裸にしてやろうと思っていた。それなのに、ある日それは突然塗りなおされて、皮膚が再生した。その時、幼ながらに絶望を知った。

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