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【サイドストーリー】perfume

オリジナル曲は作詞をするにあたって、いろんなストーリーを膨らませています。perfumeという歌の詩の世界を物語にしてみました。彩水(AYANA)


サイドストーリー

香り

白ワインを飲むと、段々畑のあるあの風景を思い出す。

段々畑のみかんの木に白い花が盛大に咲いたあの日、畑の間の細い坂道を自転車に跨って疾走するあの人を見た。その甘く優しいだけでない、どこか危なげな春の香りが、僕の記憶を彩っていた。

長い髪が美しく、この土地に似つかわしくない都会の雰囲気を纏ったその女性は、毎朝段々畑の坂道を自転車で下り、島から出る定期船に乗って本土の高校へ通っていた。

それだけで僕たちが憧れるには十分な条件だった。僕の母や口さがない田舎の大人たちは、都会の高校に通う彼女を良くは言わなかった。


白いみかんの花が咲き始めた頃、彼女は時々最終のフェリーで帰るようになっていた。

ある日、父の使いで坂の下にある農協の管理事務所に行った。その夜、自転車を押しながら上がってくる彼女と出会った。夜の10時を回っていた。すれ違う瞬間、みかんの花の香りだけでない良い匂いが鼻腔をついた。

「こんばんは」彼女の声が耳元をかすめた。あ、こんばんは。と言ったつもりが、声にならたかった。


僕は父の使いで農協の管理事務所に行くことが楽しみになっていた。時々、彼女とすれ違う。こんばんは。暖かくなってきたね。寒いね。などと言葉を交わすようになった。

みかんの花が満開になった満月の夜、段々畑を降りていると、彼女が下から歩いてきた。珍しく自転車を押していなかった。

「自転車は?」と声をかけると、それには答えず「これ。あげる」と美しく微笑んで、白いハンカチをくれた。

突然手渡されたハンカチと月明かりに浮かぶ妖しい微笑みに心を奪われ、その理由を聞くことができなかった。

ハンカチは、みかんの花の香りと彼女の匂いがした。その瞬間の衝動を恋というのだろうか。


その翌日、彼女は自転車で段々畑の坂道を下り、定期船に乗ったきり帰って来ることはなかった。田舎ではあっという間に噂が広がる。「駆け落ち」だったらしい。


あの時のハンカチはどこに行っただろう。白ワインの中に潜むその香りを感じながら、段々畑に咲く白い花と儚い初恋を思い出す。


こんなストーリーを持つオリジナル曲の歌詞はこちら


Perfume(パルファム)

アダムとイブが楽園を追放された時
二人が手にしたものは罪悪感
そして 神が二人に許したものは perfume
しかし 罪の香りは、

永遠に二人を 許さなかった

1)

窓打つ雨にshe is dancing 誰と踊るの?
波の音に消えるmemories
彼の香り she was addicted 消せない記憶
white sage, white musk, cypress, cistus

白いシャツの she was waving影が揺らめく
眩しい太陽に backlighting
あの日の午後 I’m just looking消えない記憶
white sage, white musk, cypress, cistus

パルファム 起こさないで my love
パルファム 忘れないで kissing her
パルファム 香らないで incense
パルファム 忘れさせて

どれだけ待ってもshe is leaving ここにはいない
僕には見せない声
甘く立つ パルファムだけが
刹那を裂いて 刃物(ナイフ)に変わる
パルファム 流れてく my mind
パルファム 消えていく memories
パルファム 落ちていく my love
パルファム 聞かせて


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