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【サイドストーリー】Aroma of coffee

オリジナル曲は作詞をするにあたって、いろんなストーリーを膨らませています。


サイドストーリー

Aroma of coffee ラム酒


SNSであなたの名前を見つけたのは、半年前のことだった。その名前を見た時、
一瞬にして高校時代のあなたとのエピソードが、頭の中を映画のように流れた。

校庭を走るあなたを目で追っていた放課後。二人で飲んだ喫茶店のコーヒー。

そんな思い出のあなたの表情を、何十年も経て、離れたこの場所でしかもインターネットという脆弱な繋がりだけで見られることが、奇跡でなければ何が奇跡だろう?そんな大袈裟な気持ちになった。

あの頃のシャイでナイーブな少年は、今では自信と優しさに満ちた笑顔で家族に囲まれていた。その笑顔から満たされた人生を歩んできたことが窺える。

それでも、その笑顔の下に見える少年の頃の面影が懐かしかった。

懐かしさで思わずメッセージを送ってしまったが、送った後に相手が自分を覚えていないのではいかと不安になった。親しげに書き過ぎたことも気になっていた。


果たして3日後に“かつての少年”から返事があった。覚えているという言葉はあったものの、私ほどの興奮は感じられず、あっさりしたものだった。覚えているというのも大人の社交辞令だろうと思うと、当然ではあるが、彼も歳を重ねている実感があった。

そんなやりとりから4ヶ月後、高校の同窓会通知が届いた。毎年開催されているが、地元を離れて20年以上経ち、実家も既にないし、懐かしいというほどの思い出もないと、一度も参加したことがなかった。

しかし、今年は彼のことが気になったので、参加するかどうかをメッセージで尋ねたところ「毎年参加している」ということだった。

毎年参加しているという答えは意外だった。私が想像するより楽しいのかもしれないと思い、初めて参加を決めた。


そう決めてから、不思議と毎日が楽しい。何を着て行くか、いつ美容室に行くか、新しい化粧品を買い揃えようか、などと小さな計画に心を躍らせている自分がいる。

その計画の一環であるボディメンテナンスにアロマサロンへ出かける日。出かける前のひと時をコーヒーにラム酒を入れて、ゆっくりと過ごす。スモーキーなコーヒーの香りに加え、ラム酒の甘く華やかな香りが鼻の奥に広がり、南国にバカンスに来たような幸せな気分になっている。

日常の些細な喜びが、愛しく幸せに感じられる、この感覚。

この懐かしい感覚。


これは、・・・恋かもしれない。脈絡もなく降ってきた思いに驚く。

もちろん相手は“かつての少年”である。叶うはずもない恋だが、それで良い。

誰かを想い、それだけで日常に色が着き、華やいだ香りを感じられる。それだけで私の人生に価値が生まれる。

叶わない恋こそ愛おしい。こんな風に思えるのも歳を重ねた証拠だろうか。



Aroma of coffee

シルバーバングル 車のキーと 
コーヒー買って  好きなFM入れる uh
昨日のニュースが 冷めていっても
毎朝生まれる アタシのトピックス 

あなた次第 aroma of coffee
あなた次第 朝が溶けていくわ

向かい風髪撫でて 
ハンドル握る手が踊る ah
海が見えたらすぐね 待ってて

今すぐあなたに会いに行くから
make me feel high


ダマスクローズと ネロリの香り
ハンドバッグに 仕込んでおくのよ uh
誰かの噂が 嘘であっても
毎晩生まれる ホントの囁き

気分次第 aroma of truth
気分次第 夜が溶けて行くわ

煽る風声消して 
カーステレオと歌うの ah
海が見えたらすぐね 帰るわ

アタシの気まぐれを許してね
make me feel high

電話のコール音消して 
波の音を聴かせて

向かい風髪撫でて 
ハンドル握る手が踊る
海が見えたらすぐね 帰るわ
アタシの気まぐれを許してね


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