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Notionで研究用のデータベースを作る

Notionについては以前も記事に書いたことがあるのですが、そのときは概説的なことにしか触れませんでした。

この記事を書いたのがもう2年以上前で、いろいろな状況が変わりました。特にEvernoteの無料版の機能が大きく制限されたことは大きかったですね。Notionユーザーも増えたのではないかと思います。

というわけで今回は研究用の使い道に特化して、Notionの活用方法について概説します。ちなみに私は文系の研究者で、ふだんは日本の近代文学について研究しています。当然ながらデータベースもそれに即したものとなっているので、その点ご留意を。

◯どんなデータベースをつくりたいか

さて、「どんなデータベースを作るのか」を考えるならば、「なぜデータベースが必要なのか」という目的からはっきりさせなければなりません。Notionを使う動機は人それぞれですが、こと研究に使うとなれば、資料や論文の整理が主な用途となるでしょう。

人間の記憶力には限界があります。読まなければならない論文が50本あるとしたら、50本目を読むころには最初の30本ほどの内容はもう忘れてしまっているでしょう。よしんば忘れてはいなくとも、自分が引用したい一節が、誰のなんという論文に載っていたか正確に思い出すことは難しいでしょう。そしてそれを見つけるためには、ふたたび論文の海の中を泳がなくてはなりません。不毛。

というわけで論文は単に読むのではなく、あとで使える形で「記録する」必要があります。要するにメモを作りながら読む必要があるのです。

代表的なメモとしてアナログノートがありますが、長く研究をやっていくならデジタルをおすすめします。検索力が格段に違うからです。もちろん1年2年だけを考えるならアナログでもおっつきますが、10年後特定の論文の情報にアクセスしたいとなれば、デジタルの検索力が生きます。たとえその論文のことを覚えていなくても、あるキーワードに反応して機械的にヒットするところがデジタルのいいところです。もちろん10年分20年分のアナログノートがいったいどれほどの分量になるのか、ということも考えなくてはなりません。

というわけで研究のために必要なデータベースとは、できるだけスムーズに特定の情報にアクセスでき、その情報の内実をその場でチェックできるようなデータベース、ということになるでしょう。

◯データを入れよう

具体的に論文の情報をNotionに入力してみます。

Notionにはデーターベースという機能があり、それを使えば論文のタグ付けなりなんなりができて便利なのですが、僕は論文のまとめにはデータベースを使用していません。論文を読むときはたいてい目的意識(これについての論文を書きたい)というのがあるので、プロジェクトベースで単純にかためています。こんな感じ。

このように同じカテゴリのものをまとめてあるので、特に改めてタグ付けなどはしていません。もしかしたら、論文内容の要約でも添えておけばもっと便利かもしれませんけれども、いまのところこれで間に合っています。

これらの論文ひとつひとつが、「ページ」として開けるようになっています。

これは書籍ですが、論文も同じです

こうやって使えそうな部分をまるごと残しておけば、論文に引用したいときに楽です。以前は要約だけを書いていた時期もありましたが、結局その論文の本文がないと使いものにならなかったので、多少面倒ですが本文引用は必ず添えています。その分野について調べれば調べるほど、同じ文章から引き出せる内容も深くなっていきますので。いまはOCRとかかければ長い文章をテキストデータにするのも簡単ですしね。縦書きの文章を相手にするなら、一太郎padなどがおすすめです。

NotionにはPDFファイルなどもアップロードできるので、論文のページに添付しておけば即座に現物を確認できて便利でしょう。その場合でも、本文引用はやはり添えておきましょう。改めて論文の中から使えそうな情報を探すのは二度手間です。もちろん、書籍の場合でも論文の場合でも、書誌データやページ数などはサボらず併記しておきましょう。即座に論文に引用するためにデータベースを用意しているわけですから。

◯テーブルビューを活用しよう

ただし、ざっくりまとめておくだけでは使いにくい形式の資料もあります。たとえば全集や雑誌のように、論文を書くうえでの一次資料になるようなものです。これについては、論文ベースでまとめてもうまくいかないでしょう。複数の論文で、同じデータを使う可能性が高いからです。

Notionには、このようにデータのタグ情報やその他様々な属性を表示できる機能があります。これ自体がひとつのページなので、いくつかの論文にこのページへのリンクを貼っておいてもいいですし、このデータベースそのものを論文のページに埋め込むことも可能です。

一次資料系は基本的に大量に見て少量使うという形になると思いますが、使わなかったデータが別の論文に活きることは頻繁にあります。発想は変わりません。あとで使える形で残しておくのです。

僕は論文と同じく、一次資料の方も本文を残しておいていつでも引用できる形にしています。そういうのちょっとしんどいぜ、という人は、タグ付けだけでもしておけば、あとから見るべきものが分かって便利でしょう。

◯Notionをハブにしよう

さてこれで論文はいつでも引用できる形でNotionに入っています。ここから論文を書くことになったとしましょう。

人によっては、Notionでそのまま書き始めるというタイプもいるようです。つまりひとつのところで全作業を完結させてしまおうというわけです。これ僕もためしてみたんですが、自分にはあいませんでした。まあそもそも日本文学の論文って縦書きだし……。

というわけで僕が論文を書くときのワークフローは、Notion➠Dynalist➠Wordです。調べてるときはNotion。書き始めるとなったら、Dynalistでアウトラン作成。Wordで実際に書く。アウトラインもNotisonやWordで作れますが、Dynalistはかなりお気に入りなので、アウトライン用につかっています。またWordで書き始めるのがうまくいかなかったら、アウトラインを作ってからテキストエディダにとりあえずざっと文章を打ち込んでみる、みたいなときもあります。僕はNotepadを使っています。カメレオンかわいい。

ただ、どこかに論文の情報がまとまっている場所がほしい……というわけで、Notionに各ツールへのリンクをはっています。Dynalistとか、書きかけの論文を上げているクラウドストレージとか、場合によってはScrapboxとか。Notionをハブとして使うイメージです。

ハブになっている場所があると、「ここさえ見ればこの論文のことは管理できる」という安心感があります。まだあんまり経験していませんが、書かけで数年放置しているような論文には特にいいのかもしれません。人間は忘れる生き物なので、どこになにがあったかわかんなくなっちゃいますからね。

◯Notionとこれからの研究

ネット上にPDFなどが公開されていたり、個人ブログに重要な研究的知見が載っていたりする昨今、紙ベースだけで研究を進めるのは困難です。この傾向はこれからますます加速していくでしょう。なんらかのデータ的な「場所」を作っておくことは、今後の研究者にとって欠かせない作業になるのではないでしょうか。

それが必ずしもNotionである必要があるかどうか、それは僕にもわかりません。僕の使い方なら他のアプリでも代替がきく気もします。

ただNotionが便利なのは、この記事も含めさまざまな解説記事が存在している点にあります。わからないことは調べれば出てきますし、ネット検索でもyoutubeでも解説には事欠きません。Evernoteが実質無料では使えなくなったいま、無料で・使いやすく・ユーザー数が多いという条件を満たしているアプリケーションは、Notionしか存在しないのではないでしょうか。

これからの研究者には、こうしたデジタルツールをいかにつかうかという知見も求められるように思います。

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