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ツインレイ?の記録24

五月五日

絵を描いて少し、精神が整った後、私は学生とチャットをしていた。
この学生は、彼の家庭教師にと紹介した学生だ。
慎重で用意周到で彼とタイプの似た学生。どうでもいいけど、血液型も彼と同じ。私たちは三人ともAB型だ。

その夜、この学生とチャットの中で、彼を怒らせたかもしれないという話題に。

連休中、家庭教師のスケジュールを整えることもうまくいかない私を彼はサポートしてくれたのだが、私の行動も見越して、家庭教師の時間は口を出さず学生を見守るようにとやんわり言われた。

この時私はメリーとメリーの子どものことですこぶる機嫌が悪かった。
そこに彼から私がでしゃばることを見越して学生のために先回りして配慮した内容になんともいたたまれない気持ちになり、
「でしゃばらないから安心してください」
というような嫌味のような返事をしてしまった。

そのあと彼から返事もないので、私はてっきり彼は怒っているかあきれているのだと思った。

そして私は学生に
「あー、だから自分はダメだ。社会人の成功者に逆ギレしてしまった。切腹だぁ」
とチャットを送ったその直後、彼からいきなり連絡がきたので、びっくりした。

てっきり学生が彼に私が落ち込んでいるのだと伝えたのかと思うぐらいのタイミングだった。

「先日の件、何も失礼なことはないですし、私の言うことをネガティブに捉えないでくださいね」

そして、以前約束していた韓国女子との会食について12日はどうかという内容だった。

私は本当にタイミングのよさにびっくりしていたので、エスパーじゃないかとまた彼に言ったぐらいだが、本当に偶然だったようだ。

そして、自分が細かすぎたことを反省していると言いながらも、彼は私が色んな言動をネガティブに捉えがちだから心配しているとも言っている。
そしてこんな些細なことでは怒らないと。そこもネガティブに考えすぎだと。

まあ、私は明るすぎると言われる反面、基本ネガティブなのである。
幼少期に母親に捨てられたことが原因なのかもしれないけど、自分が好きな人は自分を好きにならないという思い込みがあり、どうせ捨てたり嫌いになるなら生殺しはやめて早くしてという気持ちがある。

嫌われたくないという気持ちが強いほど、早く捨ててとどめをさしてほしいと思うし、どうせ最後は捨てるのだろうという思い込みが消えない。

なぜか私は最初から彼のことが怖かった。
どうしてかわからないけれど、怒らせてしまったと気に病むことも多かったし、嫌われたと思うことも多い。
実際彼は怒ったことはないけれど、何度も私に連絡をしなくなったり既読無視をしたり。
それは彼が既婚者だからこそ、距離をとっているだけかもしれないが、私にはそれが本当に本当に辛くて、
「無視される」
「怒らせる」
「捨てられる」
は私の中で三つのセットになっていて、彼に既読無視されたり、返事がこなくなることは辛い。

いつもなら、誰かに既読無視されると自分のほうから切るというか、もういいやとなることが多いのだけど、それが彼だとどうにもつらくて、怒らせたにちがいない、どうしようどうしようとなってしまう。

しかし、そんな私の心を見透かしたかのような彼のメッセージとさらには12日の誘い。

ただ、私はこの時、韓国人の友だちとは疎遠になっていた。

彼女が一時的な育児に疲れている時ぼやいたこと、その時に言われた言葉に私は傷ついていたのだ。そして彼女にあれこれ言うようになった。
メリーとこの韓国女子はそれぞれ幼い子どもがいるが、私の中で、彼女たちは友だちというより「母親」だった。

私にとって諸悪の根源ともいえる「母親」、そして私がなれなかった「母親」。

私は韓国女子に会いたくなかった。
だから彼に二人じゃダメかと聞いた。
それでも彼は以前約束したことだからと、韓国女子を一応誘ってみてほしいと言う。
彼は一度予定したこと、約束したことは守らなければという意志が強い。

そして私は彼女に連絡してみた。
はっきりいってこの機会がなければ、私は彼女にもう連絡するつもりもなかた。

私の中で、本音でぶつかれない相手は友だちとは言えないというのがあった。

私は彼女がつらい時によりそったけれど、彼女は私がコスタリカがダメだったと伝えた時「あなたがハッピーでありますように」とだけ返してきて、事情を聞きもしないし、それを伝えると、「私には家庭があり、それを一番重視しなければならない」という、だから私のことはどうでもいいと思えるような返事が返ってきたのだ。

なんというか、メリーもだが、母親だからと本音で向き合ってくれない、よりそってくれないことに私は不満があったのだ。
子どもを言い訳にするなと思いつつ、子育ての苦労は私にはどうせわからないと思いつつ、でもきっとどこかで私の中のインナーチャイルドが彼女たちを「母親」とみて、私に向き合ってくれないと不満を抱いていたんだろう。

常に誰かと本気で向き合いたいという気持ちが私の中にある。
だからうわべだけのつきあいとか、仲良し女子トイレ友だちとか昔から嫌いで、本当にガチンコでぶつかってくれる人、心を晒し合える人しか友だちとは呼びたくない。

だけど私のこういうところに彼は言う。

「本音という表現をとても大事にされていますね。本音の定義は『本当の気持ち』だそうです。本音で話すということは『話したい相手と対話したい』という気持ちだと思っています。ただし本音≒ストレートな表現としてしまった場合、相手がストレートな表現で会話しなかったことを本音ではないと決めつけてしまうことになります。そうすると相手は自分を信頼されていないという疑念を抱いてしまい、傷つけてしまうでしょう。
『本音で話したい相手と対話したい』という目的を達成することを考えた時、私はまず相手に共感することが大事だと思います」

「本音は人それぞれの伝え方があると思います。ストレートな表現が一番わかりやすいですが、それが必要条件ではないとするならば、相手を理解し、相手が受け止めやすい本音の伝え方を工夫した方が対話の幅が広がると思います」

「結局、対話に求めるのは信頼と思いやりなんでしょうね」

彼の言葉には共感することが多かった。
ただし私はストレートな表現で相手に本音を伝えるし、それを相手に強要するところも少なからずあったのかもしれないと思った。

信頼と思いやりを重視するのは私も同じはずなのに。

そして、私は韓国女子と地元のメリーについて、それぞれ思うことを書いてみた。とても長い内容だったが、彼はちゃんと読んで返事をくれた。

そして私のことを「素直で優しくて真面目な方ということがよくわかりました」と伝えてきた。

「素直すぎて真っ直ぐに向き合い、結果、正面からぶつかってますね」と。

そして彼はメリーの側に立つ。
メリーは子どもを愛していると。子どもに関心がない親は子供を放置し、周りだけに目を配り、自分のことだけ楽しもうとすると。
子どもに真面目に向き合っていると、周りを気遣いたくても気遣えないほど神経を使うと。

さらにメリーの息子の手に負えない癇癪についても、それは親のせいではないと。子育て方法は関係ないし、彼も息子の癇癪に苦労しているのだと。

そしてメリーを母親ではなく、友だちとして理解してあげるといいとアドバイスをしてきた。

親は誰しも育児に向き合うものと当たり前のように思われていて、誰かに評価してもらえるものでもないし、何を言われても我慢するしかないのだと。

それを読み、私は反省して、メリーに謝ったのだが、それに対してのメリーの反応は、私の態度の悪さを指摘してくるというものだった。

私はそれも気づかせてくれたとして感謝したが、どうもここでまた私のインナーチャイルドが暴れている。

おまえの落ち度はないのか?と。

こちらが態度を軟化させるとここぞとばかりに反撃してくるその態度。だけど面と向かっては絶対に言えないし、言えば私が倍にして返すから泣かされるのをわかっている。

とりあえず和解?したものの、私はどこかモヤモヤしたものがあった。

そもそも私は足を怪我していて旅行はいけないと言ったのに、自分が車を運転するし歩かせないからという約束で行ったのに、実際は歩かせられるわ、休ませてもらえないわ、その上メリーの子どもの面倒をみないと怒られるわで、私も機嫌が悪くなり態度が悪くなった。

そこを責められても、もともとの原因はおまえだろというのが私の中にある。

和解したものの何かひっかかりが残る私は彼にアドバイスを求めるが、彼は人の意見はあくまで他人の考えにすぎないし、それを整理して自分が納得できる答えを出して行動するべきだともっともなことを言う。

「自分が納得できる答えを出して行動されたなら、誰に何を言われようとも関係ないと思えるはずです。もし人に言われて気になるようであれば、まだ腹落ちしてない部分があるのかもしれません。自分が納得できているかどうかだと思いますよ」

その通りだと思った。

そう考えると、今回に限らず私はメリーに足の怪我のことを気遣われたことが一度もなく、買い物も行けないのに家の食材は食いつくされたり、病院も付き添ってもらったこともないし、息子の相手をさせられていたことに私はずっとムカついていたのだ。
そして極めつけが今回の旅行。
でも、私は育児がたいへんな彼女によりそって謝った。
しかし彼女はまず私を責めた。
ここが韓国女子との大きな違いだった。

私は韓国女子とも彼との食事の前に二人で会って話している。

この時、私は彼女に自分の育った家庭環境のこと、自分自身もう子どもは産めないだろうことなどを話した。

だから、彼女に「あなたも親になればわかる」とか「育児のたいへんさわからないでしょ?」とか「親は当然子どもに関心がある」というような言い方をされるのはつらかったのだと説明した。

すると、彼女は何も知らなくて悪かったと謝った。
私も彼女に伝えてなくて悪かったと謝った。
さらに私と彼女の場合、どちらも母国語で話してないし、どちらも現地の言葉が堪能ではないので、言葉遣いの面でもいろいろ誤解があったことがわかり、和解した。

これはもう本当に彼のおかげだと思う。
彼が韓国女子を食事に誘うよう言わなければ、私は彼女を誤解したまま、連絡をとりあうこともなかったからだ。

ただメリーとは和解はしてもやはり腑に落ちないものがある。
とはいえ、これは私のインナーチャイルドの問題なのだろうか。
メリーもまた機能不全家族で育ち、親に関心をもたれなかった子どもだ。
そして自分への注意や関心、特に男からの関心を求めるところがある。
一度は息子を捨て、浮気相手の若い男のところに走ったのだが、結局捨てられ、私の勧めもあり、息子のもとに戻ったのだ。
それでもまだ完全にその男と切れたわけでもなく、多額の金を貢いだまま返済も求めず、中途半端に繋がっている。

私は彼に言ったのは

「メリーは自分を尊重しないから他人も尊重しないし、自分のお金を大事にしないから他人のお金も大事にしない」

ということだ。

メリーは今働いていないが、旦那の金で好きに旅行したりしている。
それはそれでいいけど、彼氏に貸した金は返してもらえと私は何度も言ってきた。そのお金があれば、息子の教育費なり今後かかる費用なり補填できるだろうと。

メリーを見ているとイライラするのは、やはりどうしても自分の母親に重なるからなのかもしれない。

でも彼はいつもメリーの側に立つ。親としてメリーに同情する。

じゃあ、私は??????

確かに私は親の気持ちなどわからない。
二度も流産して親にもなれなかった。

私はいつも子どもの側だ。
私のインナーチャイルドがいつもいつも「私を見て!」と言っている。

メリーが息子のことばかりになって、私を休ませないのも水をすべて奪ったのも自分のことしか考えないのも本当に腹が立ったが、怒っていたのは私の中の子どもだったのかもしれない。

じゃあ、友だちとしては?

そう思うと、やはりお互い尊重できないなら友だちにはなれないと思ってしまう。

親としての彼女たち、そして、親としての彼。

この「親」というアイデンティティの拠り所は私にはない。

だからどうしても「親がそんなに偉いのか」と私の中の子どもが暴れ狂う。

未熟な人間性の彼女たちでも母親になれば彼に同情される。
でも私は彼女たちが自分が一番たいへんでかわいそうだと訴えている「子育ての苦労」はわからない。

だから黙って愚痴を聞かされ、彼女たちに寄り添い、自分のことは気にもかけられなくても我慢していなければならない。

なんだかもうぐちゃぐちゃだった。

母親への恨みと不信感、父親への不満、自分が親になれなかったことへの劣等感に近い気持ち。

彼にはすべてがある。私にはないものすべてが。
三人の子ども、娘も息子も、奥さん、家庭……彼の大事なすべて。

私にはない。

母親は世界で一番信用できない人だった。
父親はすぐ逃げる弱い人だ。
家庭なんて言えるものはなく、私は祖父母の家の居候でまるで嫁のように扱われた他人。

結婚したが家庭なんてほど遠く、元夫はDVのアスペルガー。
二度流産したが、血を流して泣いている私の隣で平気で寝ていた夫だった。

彼と違って私には帰りたい家なんてない。
待っててくれる人もいない。

あれが当然のように話す「家族」「家庭」「帰りたい」という言葉が本当に嫌いだ。

世の母親への同情、育児の苦労への理解、理解ある夫で家庭人の彼は素敵であると同時に嫌悪の対象でもあった。

なぜ私に寄り添ってくれないの?
なぜ私の話を聞こうとしてくれないの?
なぜ私を知ろうとしてくれないの?

自分に重なる彼女たち、母親にしか共感しない。
世の中の母親がすべて子どもに愛情があるわけではないことを知らないんじゃないの?

私は無理だ。
今子育て真っ最中の彼女たちと友だちでい続けるのは難しい。
だって私にはわからないから。
母親を慕う子どもの気持ちもわからなければ、自分の子どもを世界一可愛いと抱きしめる母親の気持ちもわからない。

そして私は気づかされるのだ。
私を愛してくれる人なんて誰もいやしないのだと。
だから懸命に自分を愛そうとするのだけれど、結局私自身母親の気持ちなんてわからないから、自分の中のインナーチャイルドを母親のようには愛せない。
でも私のインナーチャイルドはひたすら母の愛を求めている。
その反動で「母親」という存在に対する憎悪が強い。

本当は身勝手で自分のことしか考えていないくせに。

旅行中、あんな女でも大好きで寝ぼけながらもくっついているメリーの息子を見て、複雑な気持ちになった。

どうして?と。

私にはわからない、わからない、わからない。

そんな私の心にまったく触れようともしない彼のことも嫌いだった。
彼には私のことはわからない、わからない、わからない。

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