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第十一話 衛生委員会の事前準備②

参加メンバーが決まったことで、ようやく衛生委員会の開催日に言及できるようになった。
 
衛生委員会は就業時間内に行わなくてはならないという決まりがあるので、開催がいつでも、こちらに時間的な不都合は生じない。最初だし、ここは産業医の都合に合わせようと千里は思った。メールでいくつかの日時を提示して、今はその返信待ちだ。

「さて、次はコレね」

そして覚悟を決めて机に向かう。
そこに待っている仕事は、衛生委員会の規程作りだった。

<規定>ではなく<規程>なのは、個々の条文(規定)を複数、体系的にまとめた総体(規程)を必要とするためだ。簡単に言えば、可能な限り網羅性の高いルールを作らなければならないのである。

この規程の作成は法律で義務付けられているわけではない。だが、労使一体となって労働災害防止を推進するために、また衛生委員会を定期的、かつ円滑に運営していくために、具体的な要項をあらかじめ作っておくことが大切なのだ。
 
正直、これを作るのがいちばん腰が重い。

なぜなら、自分では一から作ることが難しすぎるため先人が作ったものを参考にするしかなく、そのテンプレートを見つけたら見つけたで、どれを参考にするべきか、どこをどう切り取って自社用に昇華すべきか、また考えなくてはならないからだ。

「個々の事業場によって取り入れるべきルールが違うから、自分の会社用にカスタマイズするのが大変なのよね…」

ただ、インターネットで探したところ、幸いにして厚生労働省の東京労働局のホームページにテンプレートを見つけることができた。

「<中小規模事業場の安全衛生管理の進め方>…これかしら」

見てみると、<年間安全衛生推進計画><ヒヤリ・ハット報告書><労働災害再発防止対策書><安全衛生管理規程><安全衛生委員会規程>と様々な作成例がある。

厚生労働省の東京労働局のテンプレートであれば間違いはないだろう。印刷して内容を確認し、これなら本当になんとかなりそうだと確信する。

コピー&ペーストした文章に追加と削除を加え、千里は着実に規定と規程を作り上げていく。インターネットや先人の知恵や知識が本当にありがたかった。

「…こんなものかな。あとは産業医選任報告書を提出して今日は終わりね」

驚くべきことに、なんと産業医選任報告書は厚生労働省のホームページ上で作成できた。あとは後日来てくれる産業医から医師免許証や産業医認定証のコピーを受け取って郵送するだけだ。

「これで一通り終わったわ!」
 椅子に腰掛けながらうんと伸びをし、一息ついた。

■次回予告

知人産業医の訪問が数日後に迫っていた。その日の流れを入念に計画し、千里は当日に備えるのだった。<次へ進む>


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