マガジンのカバー画像

禍話リライト

83
運営しているクリエイター

#禍話リライト

禍話リライト 忌魅恐『開かずになった自習室の話』

禍話リライト 忌魅恐『開かずになった自習室の話』

提供者である、鈴木さん(仮名、女性)
彼女が、某大学の院生だった頃の話。

大学院生ともなると、論文執筆の際に参照する書籍の量が膨大になる。
それらを持って大学と自宅を行き来するのも、かなりの重労働である。
それ故、ほとんどの大学でそうであるように、鈴木さんは学部から割り振られた自分の部屋、研究室に、書籍や資料を置いていた。

鈴木さんの通う大学は、学部生と院生で使用する建物が分かれていた。
院生

もっとみる
禍話リライト 忌魅恐『地蔵のいる踏切の話』

禍話リライト 忌魅恐『地蔵のいる踏切の話』

提供者であるAさん(男性)が、とある大学の院生だった頃の話。

Aさんの通っていた学部は理系である。
どんな学部でもそうだが、卒業論文を書くために、実験、解析、調査、そこから得られた精密なデータ。それらが必要不可欠となる。
卒論審査というのはそもそも厳しいものだが、こうした学部でのそれは、さらに輪をかけて厳しい。卒論審査が通らず、留年する学生も少なくない。

Aさんの年下の友人であるBも、そんな学

もっとみる
禍話リライト サバゲ地蔵

禍話リライト サバゲ地蔵

とあるサバゲーグループの話。

あちこちの山野や廃墟でサバゲーを楽しんでいたグループだったそうだ。
その時も、彼らは某所の山中にてサバゲーを楽しんでいた。

二つのチームに分かれ、フィールドである山谷を駆け回る。
その内、一方のチームの形勢が次第に不利になってきた。

不利になったチームのリーダーが、メンバーたちに指示を飛ばす。
「よし! 一旦分散して、最初の方に見かけた地蔵さんのあたりで集合しよ

もっとみる
禍話リライト 忌魅恐『元カノがあきらめてくれない話』

禍話リライト 忌魅恐『元カノがあきらめてくれない話』

某大学のオカルトサークルが取材した当時、サバゲーを趣味としていた社会人、Aさんの話。

(※オカルトサークルについては『忌魅恐 序章』を参照)

ある時、仲間内で。
今度はどこでやろうか。どこかいい場所はないか。
と、そんな話をしていたそうだ。

サバゲー用の正規のフィールドを使用すればいいのだが、毎回となると料金もバカにならない。
それに、彼らの生活圏の近場ではフィールドもそう多くはない。
する

もっとみる
禍話リライト 忌魅恐『あの先生に関して覚えていること』

禍話リライト 忌魅恐『あの先生に関して覚えていること』

Aさんという女性の、小学校の頃の体験。

ある年のこと。
Aさんのクラスの担任教師が、変な時期に、突然別の人に変わったそうだ。

普通、担任が変わる時期といえば、概ね、学年が上がって新学期になった時だ。

しかし、その先生は、夏休み前の中途半端なタイミングで、Aさんのクラスへやって来た。

もっとも、前任の先生は若い女性だったため、
(おめでたか何かで、急に休むことになったのかな?)
と、その時の

もっとみる
禍話リライト 怪談手帖『しし地蔵』

禍話リライト 怪談手帖『しし地蔵』

『自然仏』(じねんぼとけ)
……という話をしたのをきっかけに、話者の方から採集できた。
『お地蔵さんみたいなもの』についての話。

※怪談手帖『自然仏』

提供者であるAさんが幼少期を過ごした集落には、鬱蒼と樹々の繁る一帯があり、鎮守の森めいた様相を呈していた。

しかし、彼の記憶する限り。
緑の奥にあったのは、社ではなく。

彼曰く『しし』とか『しし地蔵さん』と呼ばれる。
気味の悪い『何か』であ

もっとみる
禍話リライト おちついた場所の手紙

禍話リライト おちついた場所の手紙

令和の初め頃。当時、大学生だったAさんの体験。

Aさんは、この体験により『二つのこと』が苦手になった。

一つ目は『山に入ること』である。
旅行、帰省、出張と。誰しも、そのように遠出をすることがある。そうすると、例えば自動車で山道を走ったり、新幹線で地方の山中を通過したり、という機会も少なくないわけである。
だが、Aさんはかつての体験から、
『自分も、妙なものを見てしまうのでは』
と考えるように

もっとみる
禍話リライト 忌魅恐『赤い帽子の女』

禍話リライト 忌魅恐『赤い帽子の女』

Aさんという男性の、幼少期の体験。

某大学のオカルトサークルが取材した当時、彼はすでにそれなりの年齢であったという。
つまり、現代から見て、少なくとも半世紀以上は前の話。
……ということになるだろうか。

※オカルトサークルに関しては『忌魅恐 序章』を参照のこと

Aさんの母方の親族に、年齢の近い従兄がいた。
(仮に、彼の名を『ケンタくん』とする)

Aさんが小学校二年生のある日。
そのケンタく

もっとみる
禍話リライト 墓石の写真

禍話リライト 墓石の写真

コロナが蔓延し始め、それから少し経った頃の話だという。

感染を避けるため。あるいは利便性の向上のため。仕事の連絡や簡単な打ち合わせに、LINEなどのSNSを使うようになった。
そんな人も少なくないだろう。

この話の体験者である男性、Aさんもそうだった。
「◯日の◯時から打ち合わせ、よろしくお願いします!」
「必要なデータを送ったので、確認よろしくお願いします!」
そんな風に、業務関係の簡単なや

もっとみる
禍話リライト 忌魅恐『トイレのえつこちゃんの話』

禍話リライト 忌魅恐『トイレのえつこちゃんの話』

※十一月十日は『トイレの日』です。

九十年代、関東地方のとある小学校での話。

学校の怪談、といえば。
やはりその代表は『トイレの花子さん』である。

その小学校の旧校舎、二階の女子トイレにも、
『女の子の幽霊が出る』
という噂があった。

ただ、その学校の幽霊は『花子さん』ではなく、
『えつこちゃん』
と、そう呼ばれていた。

噂によると。
『えつこちゃん』は、毎月第三日曜日。
夕方の五時四五

もっとみる
禍話リライト 貝の缶詰

禍話リライト 貝の缶詰

Aさん(男性、既婚者)の体験談。

Aさんは、いわゆる専業主夫である。
夫のAさんが家事を行い、奥さんが会社勤めをしている。そんな御夫婦だ。
妻のBさんはかなりアクティブな女性で、気の合う女友達と共に頻繁に飲みに行ったり、アウトドアに出かけたり、そうして遊びに行くことが何よりの楽しみだった。
周囲からいろいろ言われることもあったようだ。
だが、Aさんからすれば、基本的には遊びに行く日時や帰宅予定の

もっとみる
禍話リライト よぎってみせた女

禍話リライト よぎってみせた女

世の中には、気づかない方がいいこともある。
そんなお話。

北九州在住、Aさんの体験談。

終業後、会社を出る前に事務室に寄る。それが当時の勤務先でのAさんの習慣だった。そこで事務員から郵便物を受け取り、帰り道の途中でポストに投函するのである。
もちろん、それは本来なら事務員の仕事なのだが、ある時、都合が悪く席が外せない事務員の代わりに、Aさんが郵便物を投函しに行ったことがあった。
それ以来、出張

もっとみる

禍話リライト 怪談手帖『天狗××(ペケペケ)』

『天狗』という説明不要なほど有名な妖怪の特徴の一つに、その名を冠した怪異の多さが挙げられる。
天狗倒し、天狗囃子、天狗太鼓、天狗の礫、天狗笑い、天狗火、天狗揺り……。
特に山中や山の周辺で天狗が起こすとされる怪異の話は枚挙に暇がない。

僕(『怪談手帖』の収集者、余寒さん)自身、禍話へ比較的初期に提供した話の中に、とある山の天狗による石投げと子どもの顔の出るお話があった。
これから紹介する怪異譚も

もっとみる
禍話リライト おまいりえにっき

禍話リライト おまいりえにっき

関東某県のとある廃墟。そこへ肝試しに行ったグループの体験談。
(なお、現在その廃墟は存在しないそうだ)

廃墟、といっても深い山中や人里離れた土地にあるわけではない。それは何の変哲もない住宅街の中、他の家々に紛れるように存在していた。
この話の提供者を始めとする数人のグループ、彼らは『その廃墟が怖い』という噂を聞き、探検に出かけた。

問題の廃墟へと到着した。
実際、廃墟と呼ぶにはずいぶん語弊があ

もっとみる