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禍話リライト

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2022年1月の記事一覧

禍話リライト 禍紀行① 看板を読め

九州にある某大学。

(かぁなっきさんを始めとする、禍話の関係者が通っていた大学ではないそうだ)

その近くにある交差点。

そのある一角のみ、他と比較して異様に事故が多いことで近隣ではよく知られているという。

交通量や街灯の設置数などという、交通事故に関係する条件は他と全く同じなのだが、なぜかその一角のみ事故が多発する。自動車どうしの接触事故が大半で、たまに自転車と自動車の事故も起こるが、ほと

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禍話リライト 怪談手帖『たどん』

Aさんという方の子供の頃の体験。

彼の住んでいた北九州のOという地域。

そこから一山越えたところにボタ山(石炭の捨て石の集積場)があり、当時そこに行って石炭クズを拾う者たちがいた。専門の業者のところへ持っていけば、その場で買い上げてくれたからだという。

一般的には、こういった『ボタ拾い』はあまりお金にならないものだったと聞くので、僕(怪談手帖の収集者である余寒さん)は驚いたのだが、Aさん曰く

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禍話リライト 怪談手帖『自然仏』(じねんぼとけ)

昭和の半ば頃のことだというから、昔話というほどではない。

Aさんのおじいさんが住んでいた集落のすぐ近く、山の麓で起きた奇妙な話だという。

ある昼過ぎ。山菜取りに行っていた老人たちが、興奮しながら駆け戻ってきた。

山道に入ってすぐの古い大きな樹の根元に、

『仏像』

がある、というのだ。

何人かでその様子を見に行くことになり、まだ少年だったおじいさんもついていった。

件の樹のところにやっ

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禍話リライト 怪談手帖『ミドチ』

「……あれはね、甲羅のことですよ。スッポンかカメかとか、そういうことじゃないんですよ。どっちでもないんですよ」

河童の話題を振った時、Aさんはそう強く主張した。

「よくあるでしょ? 絵に描かれてるような。頭に皿があってクチバシがあって、いかにもひょうきんなやつ」

「……あれはねぇ、大嘘なんですよ」

僕(怪談手帖の収集者である余寒さん)は学者でも専門家でも何でもないので、

「嘘、というのは

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禍話リライト 怪談手帖『ギガ母さん』

妹さんとの幼い頃の思い出だという。

「……妹は何と言うか、フワフワした子でした」

歳の離れた姉妹のことを、Aさんはそう例えた。

物心のついた時から、どこか地に足がついていなかった。話していても急にフッと黙ってしまい、何か別のものに気を取られている。ご両親も心配して、いろいろ病院に連れていったりしていたそうだ。

それでもやがて姉であるAさんと同じ小学校に通い始め、二年生になった頃……。

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禍話リライト 怪談手帖『在りし日の詩』

『中原中也のおばけ』

確かにそう言われたので、些か面食らって僕(怪談手帖の収集者である余寒さん)は聞き返した。

「……中原中也って、あの詩人のですか?」

「そうです。ええ、あの有名な。母から聞いた昔の話なんですがね……」



Bさんの故郷の街に、それなりに長いが長いだけの、何ということのない塀の続く道がある。

そこに夕暮れ頃、変なものが出た。

あのあまりにも有名な詩人の肖像が、モノク

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禍話リライト どっちかなァ?

平成の終わり頃、とある高校で英語教師を勤めるTさんの体験した話。

ある日の放課後、小テストの成績が悪かった生徒相手に職員室で指導をしていた時のことだ。

「おまえ、何回言ってもここのとこの『have』が『has』になるなぁ」

「すんません……」

「いいか、これはな……」

そうやって指導をしていると、職員室に向かって廊下を複数人がドヤドヤとやってくる、そういう足音や話し声が外から聞こえてきた

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禍話リライト 怪談手帖『人面樹の旅館』

今は定年退職して暮らされているAさんが、昔おじいさんから聞いたという話。

若い頃、おじいさんは旅行好きで、それもいわゆる出たとこ勝負というか、ある地方へ出向いたら明確な目的地を定めずにブラブラするタイプだったらしい。

その日も仕事の予定がなくなってしまったのを良いことに、地方を荷物だけを持って放浪し、その日の宿を求めて山沿いの街に入った。

都会というほど栄えておらず、しかし田舎というほど寂れ

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禍話リライト UFO

禍話の語り手であるかぁなっきさん。その後輩であるHさんは山登りが趣味である。

もっとも、その内容が少し変わっていて、スーツに革靴という格好で低い山に入る、というものだそうだ。

そのため、時には周辺の住民に、

(世を儚んでやって来た人なのでは……?)

そう誤解されたこともあったという。

さて、これはそのHさんが友人から聞いた話なのだが、その友人曰く、

「UFOが怖い」

という。

『ア

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禍話リライト 怪談手帖『紙芝居屋』

怪談手帖の収集者である余寒さんが縁あって地方の行事に参加した時、スタッフのひとりとして来ていたAさんから雑談の合間に聞いた話。

「今思えば子供の記憶だし、何かの見間違いか勘違いで覚えてるんだと思うんですけどねぇ……」

と、Aさんは前置きした。



昭和の終わり頃、小学校低学年の頃の記憶だという。

Aさんの住んでいた街には公園がふたつあった。

大きくて遊具も充実しており、子供で賑わってい

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禍話リライト 歯医者

(この話は禍話リライト本Vol.3発売、発送開始時に行われたリクエスト募集企画で私の以下のツイートを採用していただいたものです)

https://twitter.com/venal666/status/1375846150473801731?s=21

https://twitter.com/venal666/status/1375846710530895873?s=21

「……で、歯医者の話

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禍話リライト 怪談手帖『天狗のこと』

『……天狗と申すは人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、狗にて狗にもあらず、足手は人、かしらは狗、左右に羽生えて飛び歩くるものなり』

『平家物語 巻十』より

「……俺、天狗を見たことがあるんだよ」

薄く紫煙を立ち上らせる煙草を指の間に挟みながら、ふざけている様子もなくAさんは淡々とそう言った。

「……そのせいで死生観、というか。

『幽霊観』

……っていうの? 変わっちゃってさあ……」

何と

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禍話リライト びっくりした?

ある廃墟を訪れたグループの話。

そこは特に謂れのある場所ではなかった。せいぜいがそこに住み着いていたホームレスが自然死か病気などで亡くなっているのが発見されたことがあるとかないとか、その程度の噂があるくらいだ。

肝試しではなく、廃墟の写真を撮影するのが目的だったため、彼らは昼間にそこを訪れたそうだ。



その廃墟は公営の団地を思わせるような作りの、数棟の建物から構成されていた。

廃墟内に

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禍話リライト NTR因果応報

「……禍話でも前に言ってるかもしれないんだけど、寝取られエロ(NTR)ってのが理解できなくて。昔から。

大事な彼女とか幼馴染が、なんかヤンキーみたいなのと身体だけの関係になってすっかり満足しちゃって、だいたい最後は携帯か何かにエッチなことしてる動画がきて、

『俺は何もできなかった……。終』

みたいなの。

アレがすっごい昔から嫌いで。なんでこんな勧善懲悪が成されずに終わるんだ! みたいな。

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