見出し画像

大人の夏休み工作 ③織物体験でストール作り


スマホって、ぜったい会話も聞いている。
「痩せたい~」なんて話をすれば、フィットネスクラブの広告が出てくるし、「目の下のたるみが気になる~」なんて話をすれば、美容整形の広告がでてくる。

そこまでは仕方ないと思おう。年齢的に、同世代には平等に出てくるのだ、きっと。けれど、「草刈り用のグッズ」が出てきたときには、ギョッとした。
ちょっとぉ、人の話盗み聞きしないでよ~。スマホ~。

だって、雑草に困ってるという話はしたものの、まだ検索もしてない。だいたい、草刈りグッズを欲しがる人種なんてかなり限られているのではないだろうか。

スマホって怖いわあ。
でも、まあ、クリックしたよね。鋤みたいなスコップ。買ってはいないけど。

そのうち脳内で思ったことまで、出てくるようになったらどうしよう。結構恥ずかしいいこと考えてるよ、わたし。

***

さて、機織りのことを話題にしたかどうかは覚えていないのだけれど、急にSNSの広告に織物体験というのが現れるようになった。機織り機に、織り途中の織物がかかっている写真。ぜったいに量販店にはなさそうな色の合わせ方がなんとも上品で素敵だ。

それを何度目かに目にしたときに、やりたい、とわたしの中の”つう”が目覚めた。よし、恩返しだ。織ろう。



『さをり織』の体験

緑あふれる公園の小径を抜けた先に、かわいらしい工房があった。
ここなら、素敵なストールができるに違いない。ファーストインプレッションは大切。


初めからときめく、工房のエントランス


この日は、1日でストールを作るという内容だ。

工房の主催の方から、「さをり織」という織物と、織り機についての説明があった。おばあ様が考案したとのこと。

とにかく、織る時には、その時の気分を大事に、ということだった。糸の色も種類もその時の気分で変えて構わない。仕上がりを考えて作る作品ではない。失敗は個性。
技術よりも感性。
つまりは、自由にやっていいよ、ということだ。

基礎を知る前に応用をやりたがるタイプのわたしにとっては、願ったり叶ったり。
すごい作品作っちゃおうと、やる気に火が付く。

学校の机位の幅の織り機


STEP1 糸選び


まずは糸選びから。
多種多様の糸が並んでいる圧巻な棚を見て思い出したのは、以前、ラグマットを作ったときのこと。わたしは持ち前の優柔不断さをいかんなく発揮し、結果、糸選びから相当時間をかけることになった。

その時の反省を踏まえ、今度は悩まずに決めようと思ったら、今回は色だけでなく糸の種類も選ぶ必要があるのだった。
綿、ウール、化繊。
追加料金を払うと、シルク、麻、アルパカなども使える。織り上がったサンプルを見ると、追加料金ありの方が、質感や手触りの良さは歴然!

しかし、ここでは持ち前の貧乏性を発揮。追加料金なしで、これからの季節に合っているウール一択。

けれど、実際に糸を見た時点で、とっとと糸を決めるという決意も、最初のストールの脳内イメージも、忘却の彼方へ消え去った。

まあ、目移りしますわな。
ちょっと敬遠した化繊(アトピー体質なので、かゆくなるという先入観がある)だけど、見た目が風変りだったりふわふわしていたり、個性とかわいさでは圧倒的に化繊の勝ち。よし、ちょっと使おう。


カラフルな糸たちが手招きをしてくる



さらに目移りに追い打ちをかける「何種類かを合わせることも可能です。」との言葉。
選んだ糸は、最初に小さな糸巻きに巻き取るのだが、そのときに、複数の糸を一緒に巻き取ることで、また複雑な味わいが出るよ、と。

そんなことを始めたら…組み合わせ無限大じゃないか。
やだ、悩ましい。そして、楽しい。

優柔不断をここでも見事に発動しつつ、とりあえず使いたい糸を片っ端から手元に集め、糸巻に巻き取る作業を始める。

それを舟型のシャトルという道具にセットして準備完了。それが横糸になる。


色の組合せを考えるのも楽しい



STEP2 織る


パタンパタンと音をたてながら布を織り上げていく機織りの仕組みは、「鶴の恩返し」を知っている日本人ならば誰もが知っているはずなので、説明は省かざるを得ない。

織り機は、イメージよりもコンパクトだ。絵本の挿絵の”つう”は、よく両手(両羽?)を広げているが、片手を伸ばしたくらいの大きさ。

縦糸にはすでに黒い綿の糸がかけられていた。そこに、糸巻きをセットしたシャトルを滑らせる。


スタート時点の織り機。縦糸だけがかかっている。


♪た〜ての糸はあ〜なた よ〜この糸はわ〜たし

織り機と向き合った5時間。何度この歌が頭の中で流れたことだろう。
時折、もつれたり、抜け落ちたり、思い通りにコントロールできなかったりしたあたり、縦の糸はあなた、というのは合っているのかもしれない。

***

ツーっとシャトルを滑らせる。
パタンと足のペダルを踏んで、縦糸を上下させる。
トンと横糸を手前に押さえつける。

その、ツーパタントンがワンセット。それの繰り返しで糸が布に変わっていく。素晴らしい!
しかも、簡単じゃないか。


そう、基本は簡単だった。
しかし、最初は恐る恐る滑らせていたシャトルを勢いよく滑らせ、ツーパタントン、ツーパタントンを同じリズムで刻むことができるようになった頃…。

糸がなくなる。
端が不ぞろい極まりないことに気づく。
シャトルを途中で落っことすようになる。

まるで調子に乗ったことを、機織り機から戒められているよう。

ちなみに、端が不ぞろいだったり、シャトルを落として糸が抜けてる部分は、個性として諦めるしかないので、可愛いと思い込むようにする。
さすがに、最初からうまくはいかない。


途中で、「こういうこともできます」と教わったテクニックは、間に綿やリボンを挟むこと。
斬新!
ちょっと目先が変わって、ユニークなことこの上ない。
周りの人たちよりも進みが遅かったことに気づいたわたしは、長さを稼ぐべくこのテクニックを多用した。

織り途中。編み幅が増えていくのが嬉しい。


やがて、わたしのツーパタントンのリズムが狂い始めた。
女神が降臨したのだ。その名も空腹の女神。わたしはお腹が空くと集中力がどっかにいっちゃうタイプだった。シャトルも途中で落とす落とす。

公園のカフェにランチに行って、ちょっと気分転換。楽しいことをやっているのだけれど、やはり休憩は必要だ。

ちなみに休憩もタイミングのいい時に自由にとっていいシステムで、わたしに降りてきた女神様をなだめるのに都合がよかった。

チーズドライカレーでパワーチャージ


この日、先生はオフホワイトのジャケットを着ていた。助手さんはブルーと白のさわやかなワンピースを着ていた。
両方とも、ここで織った布で作られているそうで、いや、そういうの、なんて素敵なんだろう。センスがいいのは言うまでもない。
わたしも、こういうのが作りたい!などと、野心を抱いたのだけど、残念ながら後半のわたしは、ただ自分の織り機にかかっている布を2mまで伸ばすことのみに集中するしかなかった。

遅い。
他の人に比べてわたしの進みは、圧倒的に遅い。
他の人と比べてもしょうがないとはいえ、気にならないはずがない。

これは選んだ糸の細さにせいであって、わたしがのろまながせいだけではない…と思いこみながら、一心不乱にシャトルを滑らせる。
もはや、できばえ云々ではない、スピード勝負だ。フィギュアではなくスプリント。真央ちゃんではなく高木美帆。


結局、時間いっぱいの5時まで織って、マックスの2mに到達!
まごうことなき一点物のストールが完成した。ちなみに、他の人は少しだけ早く織り上げていた。


黒い縦糸のおかげで、ちょっと色選びに失敗したか?と思った明るめの色もシックに抑えられていて違和感がない。

裏側にループができているというのは、知らず知らずのうちに新しい編み方を作り出してしまったからに違いない。
端がでこぼこではあるが、結局最後までそれを貫いたので、突っ込みが入ったときに「仕様です!」と自信を持って答えられる。

とにかく、ちゃんと完成して嬉しい。すでに、いとおしい。

一点物のオリジナル!


STEP3 洗濯


家に持ち帰ってからも、やることがあった。
まずはフリンジの根本を結ぶ。
それから洗濯。
アイロンをかけて、形を整えて陰干し。

フリンジを結ぶのは結構手間だったぞ


乾いたのを早速首に巻いてみる。
あったか~い。
即座にはずす。外気温37℃。まだ汗をつけたくない。

驚いたのは、見た目よりもやわらかくて、軽いこと。細い糸を選んだ甲斐があった。

いや〜ん、売り物みたい


これにて、本当に完成!

まだまだ、暑さが厳しい日本。本当に四季がある国だっけと思うほどだけど、寒くなるのが待ち遠しい。
ストール巻いてオシャレさんっぽく歩きまわるのだ!

織物は、なかなか楽しい体験でした。
え、恩返し?なにそれ、おいしいの??


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?