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天使か宝石か。Viollette de sollies(ビオレソリエス)

突然ではあるが、無花果(いちじく)マニア、である。マニアをつけて追っかけている食べ物がたくさんあるが、いちじくもその1つだ。他にはヘーゼルナッツ、アーティチョーク、ポワール、桃、あげればきりがない。

こうしてみると、私は幸せだ。黒毛和牛、とかA3ランク?のお肉、とかどこそこの卵の卵かけご飯、とか多くの人がおいしいと思っておいかけているものにまるで興味がない。(勿論ビーガンになる前は小さい頃から手塩にかけた料理を母が作ってくれていたのでお肉もお魚もほんとにおいしくいただいていました)今は他においしいものがいくらでもたくさんあって、それで十分満足なので興味がなくなった、というべきか。

さて、みなさんは無花果はお好きだろうか。

私は、子供のころ、運動神経はさほど良くはなかったが、高いところに上がる遊びが好きだった。(何とかと煙は高いところに、といいますよね)異様に高さを高くした竹馬、(乗るときはブロック塀の上から飛び乗る)家々の細いブロック塀の上を駆けずり回る、木登り、などなどであるが(猫か!)そのブロック塀からブロック塀の上を駆けずり回る際に付録でおやつがついてくる。無花果とザクロとびわ、だ。これらはたいていどのお宅も塀まぎわに植わっていて移動中に、もいではいただいていた。(とくに収穫もされず放置、の家がほとんどで、もいでいてもこらーっ!と怒られたりすることは皆無だった)そのころから無花果は、そのままでも十分スイーツになるそのねっとりとした甘い果肉にぞっこんで、遊び疲れた夕食前の胃袋には最高のおやつであった。(よく夫と話すが、北関東はこの3つはまるで生えていないそうだ。アケビや栗やくるみ、生えているもの採れるもの、おやつになるものがちがうのだ、と。)さておき。

海外のSNS、特にフランスのたくさんのパティシエや製菓学校、ブーランジェリーなどをフォローしてみている中で、無花果の時期になるとどうにもため息ばかり、中が赤ワインのような芳醇な深みのある赤で、白い部分はほとんどなく外皮も真っ黒ななんともフォトジェニックな無花果がお目見えする。ビオレソリエスだ。

自分も、ここ日本で、6月に無花果の初物が出てくる頃から旬が終わる10月くらいまでよいものを見つけては買って使ってみてはいるが、この数年どれをもってしても味はぼんやりと薄甘く、果肉はほとんど白に近い薄ピンク、白い部分がほとんどで、あーまた望んでいるものとは程遠い、とがっくりする、を繰り返していた。

前述のビオレソリエス、名前もわからず、ただ美しい、食べてみたい、使ってみたい!現地に行かないと食べられないのか、うーん、どうしたら手にはいるのだ~~と、まじめに恋焦がれていた。そんな時。

いつも買い物に行くお気に入りのマーケットで偶然みつけた小ぶりな無花果。外皮は真っ黒で口はほとんど開いておらず(日本の無花果はここが開いていてここからすぐ黴てくる)見たときすぐさま、「これはあの、あのあの、、(名前知らないので)あれではなかろうか!!!と直感した。中には一緒に「JA北越後 五十公野果樹組合 ビオレーソリエス」という手で印刷したような小さい紙が入っていた。

早速買って帰り、切り口を見て確信した。これである。私が長年使いたかった真っ赤な果肉、ビオレーソリエス、そして一口食べてその確信はゆるぎないものとなった。甘い。おいしすぎる。突然現れた天使、いや黒い宝石である。大袈裟、と思って笑うなかれ。マニアとはそんな滑稽なものなのである。

そして勢い余ってJA北越後に連絡をした。(幸いFBのアカウントを持っていらっしゃった)突然のご連絡失礼します。と。長年使ってみたかったビオレーソリエスを偶然手に入れて云々、と熱い思いのたけをお伝えし、入っていた紙に書かれていた生産者のお名前の方にお礼をしたい、これからこのビオレーソリエスを偶然買うのではなく、手に入れることはできるのでしょうか、と。

すぐにたいへん丁寧なお返事がきて、やりとりさせていただき今もルンルンのうきうきで人生にまた一つ楽しみが増えてしまった、と目がハートになっているのである。

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