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正解なんてないんだし

仕事からの帰り道。
タクシーに乗り込む。
こじんまりした町なので、タクシーの運転手さんは一方的に私を知っているようだった。
当たり障りのない会話からふと、独身ですか?と聞かれる。

「はい、1人です」
と出来るだけ温度を乗せずに答える。この手の質問がきて、独身だと答えた後にいい気持ちになったことはほとんどない。
何を言われるんだろうと少しだけ身構える。

「実は私の娘ももういい歳なんですけど全然結婚の話もなくて。27歳になるんですけどね。そろそろ結婚してもいいのにって思うんですよね」

「なるほど…」
これはなんと言ったものかとしばらく頭をぐるぐるさせてみたがうまい返しも見つからず、娘さんの状況をひとしきり聞いた後、
「結婚って1人でするものでもないですしね」
と答えてみた。

「たしかにそれはそうだ」
と運転手さんが答えた所で目的地に着く。
車を降りてからも私はずっと考えていた。

人生設計の多様性みたいなものは一昔前よりも広がったんだろうと思う。
男女共に結婚は人生の中の選択肢の一つとして認識されつつあるというか。

それでも周囲にとっては『しない』という選択肢を選んでいたとしても『できない』に変換されてしまう可能性もあるんだなと思うと難しい。

その運転手さんの娘さんがどういう事情があるのか詳しく知らないけれど、家族とはいえ周りの声に惑わされずに自分らしい生き方が選べたらいいなと心の中でそっとエールを送った。

そして私も自分の今の選択を、胸を張って言えるようになりたい。
ちょっと強めのお酒を1人飲みながら迎える週末だって悪くないもの。




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