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同じ穴のむじな(7)尚子

実験パートナーの横山尚子と話す機会も増え、実験の日のお昼には必ず彼女と学食に通った。
「その子やったら知ってるわ」
尚子に、つい小西由紀のことをぐちってしまったおれだった。
「なんで?」
「この大学には女子学生だけの校友会が作った集まりがあるのよ。そこで建築科の小西さんやったっけ、来てたから、いっしょに飲む機会もあってん」
「へぇ」
「湯本君はその子とつき合ってたんや…見かけによらんねぇ」「つき合うって…そんなんとちゃうし」
「でも誘ったんやろ?そんでつれない返事しかせぇへんって」
「まぁ、そうやけど」
「最初は、彼女の方から湯本君にアプローチしてきたわけや」
カレーライスを口に運びながら、にたっと笑って尚子が言う。
「そや。そやのに、次に会おうって言うたら、いまいちの返事で」
「ようあんね。そういうの」
「横山さんも?彼氏にそういうこと言うの?」
「あたしかって、虫の居所が悪い時があるわよ。そんなときに誘われたって、うっとしなぁとしか思わんもん」
「そうですかぁ」
おれは、ラーメンのスープをレンゲですくっては戻していた。
「湯本君におせといたる(教えといたる)わ」
「何を?」
「女の心変わりやんか」「はい?」
「あんな、女には生理っちゅうもんがあるやろ?」「はぁ」
「生理の終わった後、めっちゃ男がうっとうしくなんねん」
「へぇ」
「ホルモンの状態でそうなるんやけど、排卵期近くで、体温が高いときは男が欲しいってなんねんけど、それが終わったらお腹いっぱいになって、男はいらんの」
「ふ~ん」
そうかもしれなかった。
あの時…彼女の生理が始まった。
それから誘ったのは一週間以上経ってからやったなぁ…
「何考えてんの?心当たりありそう?」
「まあ」
「あんたら、もうエッチしてんのちゃう?」
探るような目つきで尚子がおれをのぞき込む。
「し、してへん」
「ほんまに?下宿に連れ込んでるやろ?」
図星を当てられおれはレンゲを取り落とした。
「そんなこと、ないって」
「まあええけど、実験に差し障るような生活は送らんといてや。あたしが困るから」
そう言って、テーブルを立ち上がった。
おれも、後を追ってラーメン鉢を持って返却口に続いた。

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