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2020年の年頭所感

私は実践的プロジェクトを通じて変革に挑戦し、それらの取り組みを通じて、社会ビジョンを共創するという仕事を行っています。昨年はこうした仕事が広がる中で、一般社会に向けて発信するようなケースにも関わらせて頂きました。このような企画を検討する中で、特に最近、浮かび挙がってくるキーワードが「苦しみを共有する」というものです。

2019年11月のクローズアップ現代において、最も視聴率を獲得したのは「車上生活 社会の片隅で…」という回です。また12月の最高視聴率は「なぜ男は冬富士に向かったのか?~ネット生配信の先に~」という回でした。両回とも私は出演していませんが、社会の中の絶望に淡々とよりそう良企画です。

ただし、これはNHKに限ったことではありません。R指定映画として異例のヒットを記録した「ジョーカー」、ヒロインも主人公も貧困に属する「天気の子」など、苦しみを起点とする様々な物語が2019年に生まれました。

こうしたコンテンツが共感を呼ぶ一方、逃避系コンテンツも多く見られるようになっています。フィクションだけでなく言論においても、過剰に未来を展望するような言説は逃避系といえるかもしれません。我々のプロジェクトの一側面である、未来のビジョンを描くという仕事も、一歩踏み間違えるとこちらに分類されるでしょう。

日本が抱える厳しさは、もはや漠然とした不安というレベルではなく、苦しみや絶望という形で形容されるようになってきています。このような背景には超高齢化、少子化、人口減少という暗い展望に加え、失われた30年と形容される低成長、格差の広がり(相対的貧困率がG7で米国に次ぐワースト2位)などの状況があるでしょう。

これからの社会を考える上で、こうした厳しさは踏まえなければならないものです。一方で、苦しみに”寄りそう”ことも、時に”逃避する”ことも、今の日本には必要だと思いますが、それだけでは未来を拓くことはできません。

冒頭の繰り返しになりますが、皆様との連携の中で状況を改善するための1歩を刻み、それを未来の世界につなげて行くことができればと考えています。

2020年も宜しくお願い申し上げます。

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