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営業の"相手探しを科学"する 「ポテンシャルマップ」のつくりかた

すべての顧客となりそうな人に、大量の時間とコストをかけて営業をする。
これは理想ですよね。

ただ、そもそもの営業の人数など、会社としてのリソースに限界がある以上、それは現実的ではありません。(現場では、まったくリソースが足りていないのが普通です...)

なので、「貴重な営業リソースをどこに投下するか」というジャッジが必要になるものです。

でもそのジャッジ、なかなか難しいとは思いませんか?

私はこれまで複数の会社で新規事業の立ち上げを請け負ってきました。更には様々な会社の営業顧問としてお手伝いもしています。

もちろん失敗が多々ありつつも、成果を出せてきたので、今回は再現性が高く成果の出る「顧客選定の方法」についてご紹介します。

キーワードは「ポテンシャルマップ」です。

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上記のような形で順を追ってご説明できればと思います。

0. 前提:「受注リスト」から自社の競合優位性を知る

では、早速ポテンシャルマップを作っていきましょう・・・と言いたいところなのですが、その前に絶対に必要な工程があります。

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それが「自社商品を知る、理解する」こと。

・どういったお客様に売れるのか、売れたのか
・競合に比べてどういった優位性、差別化ポイントがあるのか

ポテンシャルマップを作ろうにも、この理解ができていないと「どこにポテンシャルがある=売れるか」もわかりません。

そこで、まずはポテンシャルを把握するべく「過去の受注リスト」をみてみましょう。見るべきは「自社とお客様を理解できるような項目」です。

例えば

・業種/業界
・売上
・従業員数
・拠点数
・提案/受注した商材

などですね。

このとき重要なのは、あくまで「売り上げに貢献する要素」を考えること。

例えば「Webサイトに関連するサービスで、サイト規模(PV)に応じて値段が変わる」商品であれば、PVは軸に必ず入れる必要があります。

ここからは、眺めてみて

・どういった業種に売れやすいのか
・どういった規模の企業の売れやすいのか
・どういった商材が売れているのか

などを複合的に判断していきます。

実際の例を見てみましょう。

「自社を知る」の事例

例:「人事系システムの売上が伸び悩んでいる。ただし、その理由を言語化できていない。」というふわっとした状況

まず行ったのが「過去の受注データの整理」でしたね。

▼ということで過去、どんな会社を受注しているか一覧にします。人事システムなので、重要な項目として「社員数」は外せません。

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▼整理しやすいよう受注企業に色を付けてみます。

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▼ここで気づいたのが「複数システムをセットで売ると受注率が非常に高い」ということです。その中でも「勤怠管理システム」がキーといえるのではないかという仮説ができました。

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この仮説をもとに受注率の高い営業数人に確認すると、「勤怠管理システム」の領域をしっかりとヒアリングし、訴求できていた人が受注率が高いという事実がわかりました。

仮説はあっていそうです。

このように「どういう商品が誰に売れたのか」を知ることが、自社商品のポテンシャルを知る、最初の一歩です。

***

お気づきの方もいると思いますが、ここまでしっかり行うだけでも営業上の勝ち筋がみえてくると思います。

ただ、本題はここからです。せっかくこのnoteを読んでいただけている方は次も取り入れてみてください。私が受注額を劇的に上げた重要な要素です。

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1. ポテンシャルマップを作る

ここまでの方法で「自社の製品がどこに実際売れているのか」を把握しました。では、その情報をもとに「具体的に、どのお客様に営業をかけるのか」を検討します。

ここで使うのがポテンシャルマップです。

作り方は以下の通り

①どんな規模・業界の企業を優先するか「ポテンシャル顧客」を決める
 (例:1万人以上の製造業)
②優先顧客内でも、特に重要度の高い「優先顧客」を検討する
 (例:ソニー、パナソニック、三菱電機)
③超優先顧客のグループ企業まで見て、どの企業に営業をするか、「ターゲット顧客」を決める

どんな規模・業界の企業を優先するか「ポテンシャル顧客」を決める

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まずは業界、規模別に分けて「どんな規模・業界に営業をするか」を検討します。過去の受注企業の整理を参考にします。

もちろん仮説でOKです。すばやくPDCA回すのが大事なので、考え過ぎて動けないという事態は避けるようにしましょう。

ここでも具体例を交えながらご説明しますね。

「ポテンシャルマップ作成」の事例

あるサービスを今後売り込んでいきたいと考えていたときの話を例にします。

これまでの営業は「既存顧客に導入していたシステムのユーザーアカウント追加」をメインに動いている人が多い状況でした。

しかし「アカウント追加」はこれまでの延長線であって、爆発的な受注額増加は見込めない。このままでは営業目標未達の未来が見えていました。

そこで、「新規製品を既存顧客に営業をしていく方針」に大きく変えました。
では、既存顧客といえど、どこに営業をしていくか。

▼まずは自社がターゲットとしている業界の企業を人数規模、業界別にセグメントしてみます。

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正直、この表だけでは何とも言えないと思います。そこで役に立つのが、先程も利用した「受注管理シート」

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ここで受注管理シートを業界・規模別に見ると、勤怠システム以外には「製造業」「社員数3000-5000名」に受注が集中していることがわかりました。

この情報を、先程の顧客セグメントシートに反映してみます。この中で「製造業」「社員数3000-5000名」を探してみると、濃い青のところです。

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ここが、優先して狙う企業群です

...と言いつつ、「80社」というのはまだかなり多いですよね。

そこで、次に「特に重要度の高い顧客」を検討していきましょう。

②ポテンシャル顧客内でも、特に重要度の高い「優先顧客」を検討する

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流れとは

1)シンプルに、機械的に並べる
2)複合的に判断する

という順番です。

1)シンプルに、機械的に並べる

まず簡単に売上ポテンシャルを見る方法は「想定売上順」です。例えば「顧客の従業員に合わせて価格が上がる商材」の場合は「従業員数が多い順」に並べるということ。

加えてそれぞれの顧客で「売れるであろうポテンシャル」の金額をしっかりと明示しておくこと。

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これらによって、どこにどれだけのマーケットがあるかの感覚を養うことができます。

もちろん売上ポテンシャルがいくらあっても、受注できなくては意味がありません。
そこで「受注できそうか=商品との相性が良さそうか」も併せて確認していきます。

2)複合的に判断する

受注管理シートから顧客候補を検討していると思うので、

・受注した理由
・商材の組み合わせ
・顧客ニーズ

などを考えて「商品との相性がよさそうな企業」を検討してみてください。

また、検討の難易度は上がりますが、自社の製品が関連する分野の投資に積極的な会社を選ぶのもおすすめです。

例えば、大規模な業務基幹システム(ERP)を販売する会社の場合は、

・会社の歴史が長い企業
(長い期間に積み上げられた複雑な制度=システムに求めるものが多いので、基幹システムの導入が必要になる。)
・時代の変化に乗れている企業
(自社開発の仕組みが残っているのではなく、既に別のERPが入っているなど)

などです。

参考:接点と熱意

他に判断材料になるのは「接点」や「熱意」です。

「接点」というのは、過去に商談をしたことがある。連絡先がわかる。人脈で繋がれそうなどの接点があるかどうかです。

現時点で接点がなくても、今後作っていく方法はいくらでもありますが、簡単とは言えません。この点、初めから接点があればかなり時間と労力の削減が見込めます。

「熱意」というのは、自分自身が「この企業と仕事をしたい」という熱意を持てるかどうかです。「企業理念に共感している」「なんかかっこいい」など、理由は何でも構いません。

「仕事なんだからちゃんとやるのが当たり前」といってしまえばそれまでですが、実際は営業自身のモチベーションが上がる相手であれば、顧客にとっても営業自身にとっても良いことが多いです。

なので、熱意は決して馬鹿にできません

***

と、ここまでポテンシャルマップを作るにあたり、
①どんな規模・業界の企業を優先するかを決める
②優先顧客内でも、特に重要度の高い顧客を検討する
というところまで進みました。

営業目標と顧客候補の売上ポテンシャルによるものの、私の経験上ここまでくると数社まで絞られていることがほとんどです。

数社まで絞られたら、最後は「グループ企業まで含めて、営業」をします。

③優先顧客のグループ企業まで見て、どの企業に営業をするか、「ターゲット顧客」を決める

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数社まで絞ったあとは、その数社それぞれについて、グループ会社の洗い出しです。

グループ会社まで見るのには以下のような理由があります。

・グループ企業全体でみると、売上ポテンシャルが大きくなる。
・グループ企業全体を見れば、商談する接点がある可能性が広がる。
・一度成功すれば、他のグループ企業への紹介の可能性が上がり、商談のハードルが下がる。
・グループ企業の横展開で「包括契約」も見込める。

ここまでは過去のデータと仮説をもとに進めてきました。

あとは仮説が正しいかどうかを確かめる上でも、とにかくグループ企業全体にどんな接点でも使って何がなんでもがむしゃらにあたっていくってことが重要ですね。

そして、お客様に会いながら仮説に対するPDCAをとにかく回す。

最後は「考察量×行動量」が最強だと思います。

「どんな接点でも使ってあたっていく」といっても、どうすればいいの?という疑問を持つかもしれません。そこについてだけでも数千文字は必要なので、別途noteでまとめようと思います。

3. まとめ

最後にここまでを改めてまとめると、

前提:「受注リスト」から自社の競合優位性を知る
①どんな規模・業界の企業を優先するか「ポテンシャル顧客」を決める
②ポテンシャル顧客内でも、特に重要度の高い「優先顧客」を検討する
優先顧客のグループ企業まで見て、どの企業に営業をするか、「ターゲット顧客」を決める

ということでした。

少し上でも書きましたが、とにかく数字をもとに「考察量×行動量」が大切です。
いくら考察ばかりしていても机上の空論にしかなりませんし、仮説のない行動は無駄を生みがちです。

ということでまずは「受注リストから自社を知る」というところなどから、始めてみませんか?
※DMなどいただければ、可能な範囲でご相談に乗ることも可能です。

さて、今後は普段の営業顧問でもよくお伝えしている「大企業の最初のアポ・商談獲得の方法」について執筆をしようかと思っています。

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