値引きを避ける10箇条の掟
「今回、気合入ってるので価格がんばりますよ」
聞かれてないのに、わざわざ値引きを招くような営業トークはいますぐやめましょう。
ということで、値引きを避ける方法をツイートしたのがこちら。
値引きはいわば「会社への損失」です。
しかも月額の利用料を支払うSaaS製品などの場合、月10万の値引きも、3年経てば360万円の損失なんてことも。
また、今後の商談時に「前回これだけ値引きしてくれたんだから、今回も同じ率くらいは値引きしてくれるよね?」とお客様に思わせる下地を作ってしまいます。
年を経るごとに、その損失が甚大なものになっていくわけです。
そこで値引きを避ける方法を「10箇条の掟」として整理しました。
1. 値引きの呼び水発言禁止
お客様から言われてもいないのに、営業担当から「値引きをほのめかす」発言をやめましょう。無駄な値引きになるので、最大のタブー。
呼び水発言の原因は、営業する商品の価値に対する自信がなく、値引きしないと売れないと思い込んでいることです。
対策は、とにかく値引きの呼び水発言をこらえること。大丈夫です。課題にフィットした商品をきちんと説明できれば、値引きせずともちゃんと売れます。
■よくある値引きの呼び水発言
①頑張りすぎ型
「価格がんばりますよ」
「XX円までは頑張ります」
②セールチラシ型
「(意図もなく)この月に発注いただければ頑張ります」
③ライバルに夢中型
「〇〇社さんがコンペにいるなら、安くします」
2.価格で差別化は厳禁
そもそも競合他社との差別化が「価格」しかないという状態は絶対に避けましょう。
ではどうしたら価格以外の差別化要素を探ることができるか?その方法を以下の図にまとめてみたので、試してみてください!
3. 猿でもわかる差別化の説明
商品の差別化ポイントは、初めて聞いたお客様でも理解できるようにするべきです。
そこで有効なのは、「差別化のポイントを絞り、関連付けてストーリーで伝える方法」です。
とはいってもわかりにくいと思いますので、実例を紹介します。業務のITシステム(ERP)において、3つの特徴に絞ってストーリーで説明し、受注した際にしゃべったストーリーです。
▼実例
弊社製品には、3つの特徴があります。
1つ目の特徴は「標準機能の多さ」です。現在必要な機能はもちろん、将来的に必要になる機能もカバーしています。それは「陳腐化しない製品」というビジョンをもとに作っているからです。
とはいえ、お客様の状況によっては標準機能だけでは足りないこともありますよね。
そこで2つ目の特徴「機能追加対応」です。必要な機能は、カスタマイズせず標準機能として追加開発します。ただ、そうすると出てくるのが「開発分の費用」の心配ではないでしょうか?
そこで最後に3つ目の特徴「追加費用不要」です。追加機能は、他社も使える「標準機能」として開発をします。そのため、月々の保守サポート費用に開発費用を含めることが可能になりました。
このように、ストーリーで説明することで、お客様の理解が得られやすくなり、かつ記憶にも残りやすくなります。
4. 比較回避
値引きを避けるための理想は「お客様に競合比較の必要を感じさせないこと」です。
そのためには、以下の流れで商談をします。
①お客様の課題を把握する(課題の把握)
②課題解決ポイントを説明する(解決策の提示)
③課題解決する製品は自社にしかないことを説明する(差別化ポイントの提示)
この流れで納得してもらえれば、コンペする必要性がなくなるわけです。
5. 長期的価値の理解
お客様が目の前の課題しか見えていないとき、すぐ必要な機能以外は「価格を上げている無駄なもの」と思われかねません。すると、それが値引きを求める理由になります。
このような値引きを避けるには「今すぐ必要ない機能にも長期的には価値がある」とお客様に理解してもらうことが大切です。
そのために、営業の際は将来の構想や中長期の要望までしっかり話を聞きましょう。
また、お客様が想像しやすいように「今のお客様の先の段階にいる顧客事例」を説明し、将来的に必要になる機能を理解してもらいます。
そのためにも、営業はマーケティング部署とも深く連携し、常に最新の顧客事例を掘り起こし、作成と蓄積に努めるべきです。
6. 過少も過剰も感じさせない丁度良さ
商品の幅が広く、お客様に全部の機能を説明。その結果、お客様に「そんなに使いこなせない。余分な機能=余分なお金だよね。」と思わせてしまう。
とはいえ、説明内容を絞りすぎて自社製品の差別化ポイントが伝わらなければ、それはそれでただの価格勝負になってしまいます。
解決策は、「お客様の認識している課題に沿って、過少も過剰も感じさせない提案」をすることです。
でもわかりにくいと思うので、お客様から "狭い範囲の課題を解決する提案" を求められた際の例をもとに解説をします。
▼実例
背景
・「A業務を自動化する」システムだけの提案依頼。
・当時扱ってたのは業務全般をシステム化する製品。
・「A業務だけを自動化してほしい」というお客様の課題認識に対して、業務全般をシステム化するのは過剰。
・もし「A業務の自動化」だけで他社製品と比較されると、A業務に特化した他社製品には価格面で敗北濃厚。
・A業務だけ自動化しても、関連データに手作業が必要になるので結局手間がかかるなど、そもそも部分的なシステム化は、お客様にメリットなし。
アクション
こういった状況だったので "「提案しない」という提案" をすることにしました。「本質的な課題解決にならない部分的なシステム化は、お客様にメリットがないので提案しない」ということです。
このお客様のメリットを第一に考えた提案は、お客様の絶大な信頼を獲得し、翌年に、数億円にもなるシステムをコンペなしで発注いただくことになりました。
7. 顧客が価値を理解してから価格提示
お客様から価格を聞かれると、すぐに答えたくなりませんか?
ただそうすると、商品の価値が理解されないまま価格だけが一人歩きして、導入に至らないことも。
もちろん価格を伝えることが、一概に悪いのではありません。状況に合わせて、適切なタイミングで伝えることが大切なんです。
文章だけだと、わかりにくいと思うので、価格提示までをフロー図にまとめてみました。
8. なぜその価格かの意味付け
お客様から価格を聞かれると、すぐに答えたくなりませんか?
ただそうすると、商品の価値が理解されないまま価格だけが一人歩きして、導入に至らないことも。
もちろん価格を伝え…
...と、ここまで書いて気づいたんですが、よく考えたら「掟その7」と全く同じことに気づきました。いや、夜に勢いでツイートしてはいけないですね。笑
9. 自信を持った価格説明
私もそうだったのですが、高額な商品を扱っていると「値段が高すぎるのでは?」と思うことはありませんか?
その結果、自信を持って価格を説明できず「高くてすみません」と不必要に値引きしてしまうことも。
価格の高さには、理由があるわけで、まずは商品資料を見たり開発担当に聞いて商品を深く理解しましょう。
さらに、お客様に「発注時の稟議書」を見せてもらうこともおすすめです。
稟議書には、上層部に説明した内容が載っています。社外秘部分は黒塗りでいいので、受注後に「表現の勉強になるので見せてください」とお願いすると、意外と了承してもらえます。
10.値引き交渉は1回限定
値引き交渉は1回が原則です。
社内で値引き決裁をとるときも、1回で決めた方がお客様にとってもリーズナブルな価格が出ます。何度も交渉が続くと「もっと交渉されるのでは?」と疑われ、本当の底値が出せなくなるからです。
お客様から値引き交渉されたら「これで決まる」という価格を教えてもらい、そこに合わせるようにします。
そして「社内で値引き決裁は1度しか通りません」と初めにはっきりお客様に伝えましょう。この一言が大切です。
「10箇条の掟」で値引きを防ぎ、売れる営業へ
改めてですが、以上のポイントを、営業のときのチェックリストとして使ってみてください。
ご好評頂けたら、またツイートを記事化しますので、いいねやリツイートをいただけますと幸いです!
「値引きを避ける、10箇条の掟」
①値引きの呼び水禁止
②価格で差別化は厳禁
③猿でもわかる説明
④比較させない説明
⑤長期価値を理解
⑥"丁度良い"説明
⑦価値の理解後に価格提示
⑧価格の意味付け
⑨自信を持った価格説明
⑩値引き交渉は1回限定