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長野光宏 個展 鑑賞

長野光宏さんの個展を拝見した。
会場はフォトスタジオであるらしい。その空間の展示を感じる。空間そのものが作品であるインスタレーションという展示である。
長野氏と知り合ったのは5年ほど前だと思う。最初の印象は飄々とされた方でその印象は未だ変わることはない。
作風は私とは異なるのだが、お話をするとアートについて思うところに共通項が多く、アート談義を思う存分したい友人の一人である。
まず人となりを知ってその後公募展で作品展示を共にすることになるのだが、初めて見た長野氏の作品は木製の立体作品で無駄のないシンプルな造形はその作品の周辺までもを作品の一部とし、立体作品の醍醐味を存分に発揮させた。
その後九州芸文館主催の「トリエンナーレCHIKUGO2020 デジタルアート展」にて大賞を受賞された。
私は立体作品しか知らなかったのでデジタルアートまでされるとはびっくりした覚えがある。
そんな万能な長野氏の初個展である。これを初日に行かなくて何が「美術鑑賞家」であろうか。昨日が台風であったが私はこの日を待ち望んでいたのだ。
会場に到着して受付を済ませて地下に降りる。
地下の入り口前で更に受付があり、DMを受け取る。DMも作品鑑賞の為に必要らしい。私はそうして会場に入った。
照明はほぼないと言っていい。作品による明かりだけの空間で効きすぎなくらいの冷房でひんやりとしている。暗闇で人のいる気配はあるのだが顔まで判別できない。
いきなり雰囲気を掴まれた。壁には作品が映像として映し出され、ライブハウスのステージの部分には上から大きな欠片のようなものがいくつも垂れ下がり、そこに映像が映し出されている。
会場には音楽が流れている。それはアーティストの坂本豊さんの手によるものだ。デジタルで作られた音楽であるにも関わらず、柔らかく、どこかに自然を感じる。長野氏の作品を見て作品からインスピレーションを受けて作られた音楽とのことである。
ステージの作品に映る映像は青を主体としており、それは時に水の波紋のように動き、時に飛沫のように弾ける。
そしてエアコンの影響でゆらゆらと揺れている。これは展示して初めての意図していない効果だと思うが、それが作品に命を吹き込んでいるように思う。
私は一通り見て自然と目を閉じた。空間を感じようと思った。
ひんやりとした温度。音量の問題ではなく静かに心に響く音楽。僅かに感じる人の喧騒。
作品には何かメッセージがあるのかもしれない。しかしこの場で一番しなければならないのはこの空間を存分に五感で感じる事だと思った。
私が実感して皆さんにお勧めすることは少なくとも15分から20分は会場で楽しんでもらいたいことだ。
最初入った時は目が慣れずに真っ暗な空間から始まる。作品が、音楽が、空調が、人の喧騒が暗闇からバラバラに向かってくる非日常感を最初に感じる。
しかししばらく作品を見ているとそれらが次第に体に溶け込んでくる。体の中で一体となる。暗闇に目が慣れて全体像が見えてくる。非日常感はやがて安堵となる。
これは言葉でいくら紡いでも写真や動画で説明しようとしても何も伝わらないと言い切れる。インスタレーションとはそういうものだ。
ぜひ長野光宏というアーティストを感じてほしい。
この文章とは別の、あなただけの長野光宏を知ってもらいたい。

「わたしが繋ぐ、触れたもので、息吹く世界で -Nagano Mitsuhiro Exhibition-」
2021.9.18〜20
13:00〜19:00(最終日18:00)
福岡市博多区古門戸町10-20 B/F
W.S.U.G

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