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「2021 DISTORTISON POPS 鍋島 哲治 個展」鑑賞

昨日の美術鑑賞旅の一つ目。
昨日記した展示は2箇所目だった。一つ目は博多区の川端商店街にある410ギャラリーである。
「2021 DISTORTISON POPS  鍋島 哲治 個展」の初日に伺った。
鍋島さんと知り合ったのはもう15年くらい前のことだと思う。福岡のアート活動をしている方々の知り合いの中では先輩に当たる。
私の感覚では私より上の皆さんはアグレッシブに活動をしておられた。言い切ってしまっているがその活動を実際に見たことはない。しかし話を聞くと時代も手伝ってか、発表の場は今より恵まれていたように思う。
鍋島さんは路上アーティストであった。
その頃から作られている「ホワイトペット」が代表作である。てるてる坊主のような外見のぬいぐるみのような作品で、かつて可愛がられていた猫がモデルだと聞いた覚えがある。
ホワイトペットは一つ一つにナンバリングがされてあり、一つ一つに個性があり、命がある。ちなみに私も一つ所有しているが、ナンバリングを覗くと「14054」とある。これを購入したのが10年ほど前な気がするので今だとどれだけ増えているのか。
元々は平面絵画を得意とする作家さんであると思う。ドローイングでザッと描いたような蛍光色などを使った抽象的な作品が印象に残る。大きなギャラリーで作品を見ることが少なく、その為長らくは小さな作品ばかりを見てきた。
大きな作品を見る機会が増えたのはここ数年である。そして感じたのは「鍋さん(いつも読んでいる呼び方)は大きな作品が似合う」ということであった。
特に最近は紙という支持体にこだわらない。今回の展示での9割は長毛の布である。それに大胆にアクリル絵の具を塗り、作品としている。
ふさふさした布の素材そのものの部分と絵の具が塗られてゴワゴワとなった部分。塗られた部分は長い毛がベッタリとなり、絵の具は布の底までは浸透しておらず、絵の具の隙間から素材の色が見えている。そこに艶かしさがある。絵の具の面白みがある。紙以外に塗るという醍醐味が見え隠れしている。
そして紙ではない弊害が私にとっては魅力に感じる。それは強度、耐久性である。
この布はどれだけ長く残るのか。色が褪色するかもしれない。絵の具を乗せた部分の毛が取れるかもしれない。この状態がいつまで続くかわからない。
私が最近考えるのは「作品の寿命」である。多くの人が長く残そうと考える。それは当然のことだとは思う。しかしいつか果てる美しさというのもある。
何かを伝えたい時、どうしても使いたい素材が長く残らない可能性がどうしても出てくる場合。それでもそれを使うことは大きな勇気だと思う。
もしや長く作品を残すことが大前提というのは作家のエゴではないかとたまに考えたりする。
鍋島さんの今回の作品はそう言った儚さを感じる。だから美しいと思えるのかもしれない。終わりを感じるから生き生きと感じるのかもしれない。
長く残るに越したことはない。しかしあえて無視することも悪いことではない。

「2021 DISTORTISON POPS 鍋島 哲治 個展」
2021.9.16〜21
美術画廊410Gallery
11:00〜19:00(最終日18:00)
福岡市博多区上川端町11-8 川端中央ビル4階

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