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かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #8

「あやはるさん、いいね!あなたがうちの店頭に立っていると、お店の雰囲気が良くなる!」

仕事にて、とある店舗の入口のテナントを借りたときのことである。 

お店のオーナーに突然、褒められた。

実は以前も同テナントには入店したことがあったので、このオーナーと話す機会はたびたびあった。

しかしオーナーから、しっかり褒めてもらったのは、この日が初めてだった。

なぜ急に褒められたのか、理由は明確だった。

「もしかするとA君がこの店に立ち寄るかもしれない」

私はこんな妄想をしながら、売り場に立っていたのだ。

A君の活動拠点は東京なので、私が出向していたド田舎の店舗に立ち寄る可能性は0.0000001%未満である。

しかし私は、どんなに暇で従業員が中だるみしがちな時間でも、お客様への声掛けや、テナントの従業員への挨拶は欠かさなかった。

「もし私が、ずっと気を抜かずに仕事をしていれば、神様がその0.0000001%の確率で、A君に会わせてくれるかも!」

夫が無職のため、生活費の負担が全て自分の肩にのしかかっている状況が、私の淡い幻想をどんどん膨らませていった。

つまり、私の働くモチベーションを支えているのは『夫や家族』ではなく、「A君に会えるかも」という私の妄想だったのだ。

オーナーから私の立ち振る舞いについて、お褒めの言葉をいただいたときも

「ちょっと徳を積めたから、A君に会えるかもしれないな」

…なんて1日中考えて、ニヤついていたのは言うまでもない。

もちろん自宅でも私はこんな感じで機嫌良くいられたので、夫や3人の子供たちも、ニコニコ笑って過ごしていた。

そして、約束の時期になっても仕事を探そうとしていない夫に

「仕事は?」

と私が尋ねることも、もうしなくなっていた。

#9 に続く

※実在する推しA君の正体はこちら

みなさまの「いいね」が励みになります♡(*‘ω‘ *) ライター:あやはる 

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