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2週間の絶食と3週間の入院生活

10歳の息子がクローン病と診断されてから2〜3か月後だっただろうか。
治療のための入院が始まった。
忘れもしない、2022年年始の、都内でも大雪が降った日。

病室の窓から、ひたすら降り続く雪を静かに眺めていた。
暗くなっても雪は止まず、私もこのまま病院に残りたい気分だった。


2週間、エレンタールだけ生活

クローン病と診断されてから、家でも脂質に気を付けながら生活していたので、お腹の調子はとても良かった。
入院なんて必要ないんじゃ?と思うほど、調子よかった。

血液検査も炎症の数値がとても低く、入院初日でさえ「臨床的寛解」のところに位置していた息子。本当に、症状も無く元気な入院患者だった。

主治医に
「数値的には寛解ですが、何を目指して治療するんですか?」
と聞いたら
「粘膜治癒です。」
との答えが。

内視鏡検査の時に粘膜がただれていたり、潰瘍が出来ているところがあったので、完全な粘膜治癒を目指すとのことだった。

治療の内容はまず
2週間の絶食(エレンタール服用)
免疫調整剤(イムラン)の投与開始
だった。

エレンタールという脂質ゼロの完全栄養食が、これからの彼の人生のお供になる。
エレンタールは粉末で、飲んでもOKだし、ゼリーにして固めて食べても大丈夫。

入院初日、とりあえずゼリーのフレーバーを色々試すところから始まりました。
ヨーグルト、マンゴー、青りんご、パイナップル、うめ、コンソメなどなど…エレンタールのフレーバーはかなり色々あるので心強い。結局入院中(というか今も)エレンタールは青りんごとパイナップルの2種類でローテーションしています。

入院中はこのエレンタールを600g毎日食べないといけないという任務が息子には与えられました。
他の食事は一切取れませんが、エレンタールゼリーを毎日かなり食べていたので「お腹すいた」と感じる事はなかったようです。


病院でできたお友達

3週間も入院していると(しかも子供用の病院に)、何人もお友達が出来た。
骨折して入院している子や、目の手術で入院している子、移植手術後で入院している子など、事情は様々だったけど、同じ年代の子達と話したり遊んだりできるのはとても安心した。

3週間も入院する子はあまりいなく、何人ものお友達が退院するのを見送った。嬉しいことだけど、寂しそうな息子を見るたびに少し胸が痛んだ。

向かいのベッドに同じIBDの子が入院して来た。しかも同い年の男の子。
とても嬉しそうだったし、私もそのママと仲良くなることが出来たのでとても嬉しかった。
IBDの子を持つお母さんにリアルで出会う事ってなかなか難しい。しかも同じ年の男の子。こういう縁をひとつずつ大切にしていかないと。


コロナによる面会制限

入院してわずか数日。コロナ第6波の影響で、面会制限ができた。
夜20時までは病棟にいられたのに、なんと昼間の1日2時間に。
最愛の息子と1日2時間しか会えないなんて。本当にコロナが憎かった。
でもここに入院している子たちの親みんなが思っているだろう。
子供たちを守るために仕方のないことだと言い聞かせた。
何より、免疫調整の薬を飲み始めたばかりの息子に感染症なんてうつしたら最悪だ。
息子も最初は悲しんでいたけど、入院生活に慣れてくるにつれて一人の時間をエンジョイしているようだった。
ゲームも漫画も読み放題。口うるさく言う人はいないもんね。

私も前向きにとらえようと思った。
家では妹である娘が待っているので、その子の為にも時間を作れると切り替えるようにした。


脂肪の点滴

2週間エレンタールだけ生活をしていると、まったく脂質を取らない事になる。脂質をまったく取らないのも肌が乾燥したり、髪がパサパサになったりするらしい。
というわけで週に1日か2日、脂肪だけを入れるという点滴もあった。
白より白い、とても違和感のある白色の点滴。
息子の中にこんなものが入るのか、と思うと不思議な気分だった。


2週間ぶりの食事

2週間のエレンタールだけが終わり、ついに食事が始まった。
最初はおかゆとかかなぁと思ったけど、もう普通の食事!
2週間ぶりの食事を口にした息子は、涙をぽろぽろと零しながら、噛みしめるようにして食べていた。
それを見て私も泣く。
「ごはんのありがたさを、伝えられるような人になりたいなぁ」
と息子は言った。
素晴らしいことだね。ごはんを食べられるって、当たり前の事じゃないよね。

この日から毎日の食事が彼の病院での楽しみになった。
エレンタール生活で2㎏落ちた体重はすぐに戻り、笑顔も増えた。



入院する前は「3週間も長すぎる」と思ったけど、振り返ればあっという間の3週間だった。
その間病棟のフロアが変わったりバタバタもしたけど、看護師さんと先生たちに本当に感謝しかなかった。
少し精神的にも強くなれた親子。おなかの調子も悪くなさそうだ。


まだまだきっとこの先もずっと治療は続く。
入院生活はとても勉強になったけど、なるべく今後入院なんてことになりませんように、と願って病院をあとにした。

頑張ったね!
これからも脂質に気を付けようね!

いまも1日脂質30g以下を心がけ、生活しています。
2021年、まったく増えなかった体重が、退院してから5キロも増えました!
治療ってすごい!!

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