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善意の刀は人を傷つける

それが善意で言われるとき

悪意で言われるよりも

更に傷は深い

私が離婚したとき
いつも仲良くしてくれていた近所の
先輩主婦から

いい旦那さんだったのにねぇ
離婚なんて残念だね
何とかもう少し辛抱出来なかったの?

と言われた

彼女にしてみたらなんのことはない言葉
言った本人はすっかり忘れているだろう

でも言われた方はこんなふうに
いつまでも忘れられない言葉

善意の刀を振りかざす人は案外多い

子供はまだ出来ないの?

早く結婚した方が良いよ


私には20歳以上も年上の友人がいる
彼女は結婚もしたことがなく
子供を産んだ経験も無い

だから私たち主婦が皆で集まって
夫や子供の話で盛り上がっている時
彼女はいつもうんうんと頷きながら
もっぱら聞き役に徹している

そんな彼女にだけ
私は誰にも言えない過去を話したことがある

私には経験がないからね

それが彼女の口癖

経験の無いことが
まるで彼女の価値を下げているとでも
思っているかのように

私の告白に
彼女はひとことも言葉を発しなかった

ただ黙って一緒に泣いてくれた

彼女は人の悲しみを知っている


相手の心を思いやる想像力は
深い深い悲しみの底から生まれてくる

共感という光を伴って…

だから

たやすく言葉が出ないのだ

言葉で傷ついた人は

善意の言葉の怖さを知っている

私は

その優しさに

何度救われたことだろう


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