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【創作童話】雨ノ森の大会議

雨ノ森はその名のとおり、昔は雨の多い豊かな森でした。雨で潤った森にはたくさんの生き物が住みついていましたが、とくにカエルたちが喜んで集まって暮らしていました。

雨の多い場所には、ツワブキが生い茂ります。カエルたちはそのツワブキで雨ノ森に立派な住まいを作り、さらに多くのツワブキを増やしては、別の森にツワブキを売ったりして豊かに暮らしていたのです。

しかし、年々雨の日が減り、とうとう今年の夏は日照り続き。大事なツワブキも減って、カエル達の心には不安と不満でいっぱいになっていました。

それでも大昔からこの雨ノ森に住む長老様は、昔の豊かだった雨ノ森のことばかり話しては、今の雨ノ森について考えることができません。

困ったカエルたちは、みんなで集まって意見を出し合うことにしました。

偉そうな大人のカエルがこう言います。
1匹1匹が、もっと我慢して贅沢をしなければ、まだまだこの暮らしは続けていけるだろう。

少し若いカエルがこう言います。向こうの山には豊かな森があるらしい。そこに移ればいいんじゃないか。

そこへちょうど隣の森に住む優しいカエルの婦人が通りかかりました。日照りに苦しむカエルたちを見て、必要なものは私が調達しましょうと提案してくれました。

そして最後に、元気なカエルの女の子は「好きなことをして過ごしたい」と言いました。大人のカエル達は「何をのんきな」と相手にしませんでした。

それでは、今皆さんから出てきた意見で、良いと思うグループに参加してしばらく暮らしてみることにしましょう。そしてまた、次の会議でその結果を報告しましょう。そういって会議が終わりました。

元気なカエルの女の子の名前はミイコといいました。大人達はミイコの話をバカにして最後まで聞きませんでしたが、この森には他にも賢い子どものカエルがたくさんいました。

「好きなことをしていていいの?」そうカエルの子が聞きました。
「いいのよ。思いっきり好きなことをやりましょう。でもその代わり、条件がある。好きなことをとことんやって、そのプロになるの。そうして自分ができることで何かみんなにとっていいことをするのよ。」

「なるほど。僕はこのチームに入るよ。」
「私もこのチームに入るわ。」
ミイコのチームのカエル達は目を輝かせました。

そうして相変わらず、日照りは続き雨は降る気配もなく、次の会議の日が来ました。

偉そうなカエルのおじさんのチームから報告です。「私のチームは、皆が我慢し、苦しい生活の中頑張っています。」とイライラした様子で発表しました。
すると後ろから別のカエルが声を振り絞っていいました。「嘘つき!毎日毎日我慢我慢ってもう限界だよ。」ほかのカエルもほとほと疲れた様子です。

次は若いカエルのチームです。たくさんの若いカエルたちがいたチームでしたが、今は数匹のカエルがいるだけです。
「報告は?」
促されてやっと喋り出したカエルによるとリーダー含め力自慢の若いカエル達で勢いよく飛び出したものの、来る日も来る日も歩き続けたが、向こうの山にたどり着くことはできなかった。そうこうするうちに飢えるもの、怪我をするもの、病気になるものが現れ、今散り散りになっている。と。

「それでは、隣町のカエル婦人のチームはいかがでしょう」1匹のお母さんカエルが立ち上がって話し出しました。
「ご提案のあった通り、カエル婦人はしばらくは暮らしに必要なものを届けて下さり、とても助かっていました。しかしカエル婦人も、財産を使い尽くし今、私たち同様困っておられます。」と話すと静かにまた席に座りました。

「では私のチームの番ですね。」元気な声でミイコが話し出すと、大人達は驚きました。驚いたのはミイコの声が大きかったからですが、何より驚いたのはミイコが元気だったからです。

「なぜ君はそんなに元気なんだい」議長役のカエルが思わず聞きました。
するとミイコはこういいました。「私たちのチームは、かくれんぼが得意な子が、隠れる場所を探すうちに小さな穴を見つけました。そこは涼しく、たくさんのツワブキも自生していたのです。今日はそのツワブキを皆さんにもお配りします。」

「またあるメンバーは泥遊びが大好きで、良い泥を探しているうちに、大きな水辺を見つけたのです。そこにはとても立派な蓮がありましたので、その蓮もお配りします。」

そう言って賢いカエルの子のチームは、皆にツワブキと蓮を配りました。大人のカエルたちはびっくりしています。「君たちは確か好きなことをするチームだったね。」

「そうです。好きなことにとことん挑戦して、そこで得たものを皆に分け合うチームです」

そうして雨ノ森のカエルたちは、雨の量に左右されず豊かな暮らしができるようになっていきました。

制作後期:
このお話はnoteで出会ったミイコさんからアイディア頂戴し制作しました。ご提案頂いたテーマからは少しズレていますが、本質はズレてないかなと思います。
ミイコさん イラストどうぞご使用ください
もしかして早すぎてやっつけと思われるかもですが過去の作品も全て1,2時間程度で創作しています。
書き終えて数日後に知ったのですが、ツワブキの花言葉「困難にまけない」だそう。


イラストテーマは豊かな雨に喜ぶミイコです。偶然にもたぬきちの前作の主人公の名前もみーこでした。シンクローどんだけー

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