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映画『いつかの君にもわかること』~ぷくぷくほっぺがたまりません♡

『おみおくりの作法』での「神は細部に宿る」と感嘆するばかりの細やかな作品作りが素晴らしかったウベルト・パゾリーニ氏の監督・脚本による新作ということで、『いつかの君にもわかること』を観に行きました。

潔い程、説明的描写や情緒的演出が一切なく
シンプルで
だからこそ力強い

深い余韻を残す作品でした。
以下、ネタバレあり です。

『いつかの君にもわかること』チラシ

窓拭き清掃員として働きながら幼い一人息子マイケルを育てている、33歳のシングルファーザー、ジョン。病に侵され余命わずかな彼は、一人残される4歳の息子に、自分の場合(里親の元や施設で育った)とは違う、理想的な新しい家庭をと里親探しをする……

というストーリーですが、二人の置かれている状況もマイケルの母親のこと等も、説明的な描写は極力排されています。
・窓拭きの仕事をするジョン
・ジョンがマイケルを連れて里親候補の家庭を何か所も訪問する
・家庭でのジョンとマイケルの、食事や絵本の読み聞かせ風景
・養子縁組の手続きをサポートする福祉事務所職員とのやり取り
全編、こうしたシーンが淡々と、でも丁寧に積み重ねられ、ジョンの病状が徐々に進行していることも示されます。
この静かな描写の連続の中で、ちょっとした表情や仕草、アイテム、一言が非常に雄弁なのです。
例えば
・ジョンが手に持ったマグカップに印刷されている「No.1 Dad」の文字を見つめる
・福祉事務所のケースワーカー研修生とジョンとのやりとり「次は(カフェではなく)居酒屋で」「ウォッカ2杯ですべて解決!」
・ジョンが当初は借りた絵本に落書きしたマイケルをたしなめていたのに、心情の変化と共に、息子と一緒になって、むしろ率先して落書きする
・マイケルが父に投げかける「よーしって何?」「よーしになりたくない」
・親子一緒にチョコレートケーキを作った、ジョンの34歳の誕生祝いでの「もう一本のローソク」。
・風船の赤、ローソクの赤、将来の息子に宛てたジョンの手紙の封筒の赤
・ラストカットでのジョンとマイケルの表情

特にラスト! 「その先」のマイケルに幸あれと願う気持ちが沸き上がり、非常に印象的です。

原題『Nowhere Special』や、終盤でのジョンとマイケルの死を巡るやり取りにも、『千の風になって』を想起させる、監督の思いが滲んでいるように感じられます。

またひとつ、忘れがたい作品に出会えました。



それにしても…
これがデビュー作となった、マイケル役のダニエル・ラモント君の可愛さときたら反則級!!
ぷっくりほっぺがたまりません!!


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