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「たゆたえども沈まず」を読んだ感想

『たゆたえども沈まず』原田マハ作 幻冬社発行 2017年発行
まず、面白い。とても興味深い。ゴッホが名画『星月夜』が生まれるまでの物語。それに日本の画商林忠正と加納重吉、ゴッホの弟テオの4人がもたらす物語。
本のタイトルはセーヌ川の船頭たちが、自分の小舟につけているプレートだそうだ。
P314に
『嵐が吹き荒れている時にどうしたらいいのか。小舟になればいい、と重吉は言った。
「強い風に身を任せていればいいのさ。決して沈まない。‥だろ?」
友のたとえ話は、静かにテオの心に響いた。
(中略)
どんなに激しい嵐が来ようと、セーヌの真ん中で決して沈まないシテのように。我らが船も。そしてパリも、いかなる困難もかわしてみせよう。
その思いと祈りを込めて、船乗りたちは、自分たちの船の軸先にパリを守る言葉を掲げた。ーーたゆたえども沈まず。』

私たちの人生にも嵐のような日々もある。そんな時は身を低くして、嵐が過ぎ去るのを待つしかない。
浮世絵をはじめ日本美術をパリで売り捌いた林忠正、忠正に呼ばれてパリに赴き忠政の片腕として働いた重吉、パリで孤独なオランダ人で画廊の支配人をしていたテオの友情には心温まるも、ゴッホを献身的に支えたテオの心の葛藤と苦しみ、描けども認められないゴッホの苦しみ。
人生の川にたゆたえども沈まない忠正と重吉。苦しみの川ニスズンんでしまったゴッホとテオ。

心に残る作品だった。読んだ方がいたら、ぜひ感想をお聞きしたい。

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