6-8 モテない買い手企業④
優柔不断な会社
「どこに行きたい?」と相手に聞くばかりで、自分の意思を発信してくれない人は、相手のことを思ってくれているようでいて相手に依存している人が多い。聞かれる方も、最初の内は自分のことを尊重してくれているように感じるかもしれないが、やがて相手の優柔不断さに物足りなさを感じてしまう。
M&A直後は、売り手企業もこれからどのような変化が起きるのか不安になっているものである。そのタイミングで強引に何かしらの戦略の変化を求めたり、新しい制度を導入されたりすると不満も大きくなるだろう。そのような時は、買い手企業は相手の意思を尊重することは大切である。しかし、その状態が長く続いた場合、「せっかく一緒になったからにはお互いの強みを持ち寄って新しい価値を出したい」と思っているにもかかわらず、何を問い合わせても反応が薄く、買い手の意思が感じられないとやがて「何のために自分たちを買収したのか?」と不満がこぼれてくるようになる。売り手企業に対して進むべき方向性を示せない、本来は毅然とした態度で要求するべきところも要求できない買い手企業はモテない。
売り手企業が新しく参画した後は、法務、人事、会計など手続き周りで混乱することも多く、買い手企業の関係者と連携していかなければならない。それ以外でも、事業計画の立案タイミング、提出方法、議論の進め方など手探りで進めていくわけにもいかないので、買い手企業にその都度問い合わせることになる。しかしながら、問い合わせたとしても買い手企業サイドから問い合わせの返事が一向に返ってこない、たらい回しにされて結局どうすればよいかわからない、なぜ自分たちの要求が否定されているのかわからないなど、意思疎通がうまくいっていないことがある。買い手企業の担当者が曖昧になっていたり、担当者が伝書鳩になっているだけでコミュニケーションの仲介役として機能していないことが原因である。売り手企業にとっては、今までは自分たちでスピーディに決められたことが決められないので、余計にストレスがかかることも多い。
モテる買い手企業になるためには決断力が必要である。さまざまな要求や質問に対して、スピーディに回答すること。また、その回答に対して売り手企業から異論があった時にも、しっかりとその話を受け止めた上で、明確な判断軸と背景説明をすること。そのような決断を繰り返してくれたら売り手企業も安心感をもって事業を前に進めることができる。相手を尊重したうえで、決めるところは決める、要求するところは要求する強さを持つためには、買い手企業がPMI後のゴール姿を明確にすることと、それぞれの担当窓口が意思を持って進められていることが重要である。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?