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アナログ職場でIT初心者チームが取り組んだ業務改善活動4ヶ月後の成果

こんにちは、むらかにです。
私は食品検査会社で働く事務員です。
これまでITやデジタルとは何の関わりもないキャリアを歩んできましたが、2022年の初夏に受講した研修をきっかけにデジタル技術を活用した業務改善活動に取り組み始めました(プログラムが書けない人でも扱えるローコード・ノーコードツールを主に使用しています)。

私の職場は全然デジタル化も進んでいない紙にまみれたアナログ職場です。
そんな中、社内のデジタルリテラシーを高めるため、皆で学べる環境を作ろうと社内の小集団活動としてデジタル活用の業務改善チームを結成しました。

2022年10月に始まったこの活動が4ヶ月経過してどうなったかをご報告したいと思います。前回までの記事と重複する部分もありますが、活動の概要と成果をご紹介します。

活動の目的

活動の目的はこの3つです。とりあえずやってみて考えようの精神でスタートしました。

①自分の部署の課題とデジタルツールを結び付けて解決策を考えられるメンバーを育成する

②社内にばらばらに存在するデジタル業務改善の知見を集約して情報共有する

③各自が各現場で改善活動を継続できるモチベーションを保てるようなコミュニティを作る

チームメンバー:17名

全社的にチームメンバーを募って最終的に17名集まりました(ちなみに弊社は従業員数300人規模)。3つの事業所にまたがる12部署(グループ)からそれぞれ1〜3名ずつ参加し、20代〜50代まで幅広い年代で構成されており、デジタルスキルもばらばらです。

活動内容

  • Teams上で、適宜質問しあったり、各部署で使用している業務改善に役立つツールの情報共有をする

  • 各人が各部署それぞれの課題を設定し、課題を解決するようなツールを作成し、その進捗をTeams上で共有する

  • 月1回1時間程度の情報交換ミーティングを実施(希望者のみ参加でOK)

活動開始時の目標:業務の課題解決につながるようなツール(自動化ツール等)をチーム合計で3件完成させる

初めての試みでどの程度できるか全く不明だったので、活動開始時は少し控えめな目標にしました。

活動4ヶ月後の成果(できたこと)

成果としてできたことを紹介いたします。

①月1回のミーティングを4回+PAD勉強会1回開催

自分のペースで進められるようにミーティングの参加は任意にしました。ミーティングの録画は毎回共有しているので都合の良いときに見てもらっています。ミーティングは何かを教える勉強会というわけではなく、各自が現在こんなことをしていますという進捗を報告しあう会として運用しています。

②RPAツールのPower Automate Desktop(PAD)を11名が使えるようになった

活動以前から使えていた人員4名と、この活動を通して新たに使えるようになった人員7名の合わせて11名が自分で自動化フローを作れる状態となりました

③各部署の課題を解決するツールが20件作成できた

チームメンバー13名が自分の部署の課題を解決する何かしらのツールを作ることができました。1人あたり複数件作成した人もいて、当初の目標を大きく上回りました。

作成したツールの一部を紹介

参考としてチームメンバーが作成したツールの一部を紹介します。

Power Automate Desktopを使って社内のWEBシステムから指定した条件の情報を抽出して自動ダウンロード

社内のWEBシステムに登録されているデータを定期的に手作業でダウンロードするという作業がありました。これをPADのブラウザ操作を使ったフローを作成することで自動化することができました

Plannerを使って分析機器の定期点検スケジュールを管理

弊社は食品検査会社なので複数の分析機器を所有しています。検査を担当する部署では各機器それぞれ1年の中で点検スケジュールが決まっているのですが、機器が多いうえに年1回程度の話なので毎度忘れがちになります。Plannerで各機器について担当者と点検日程を決めて設定したので日程が近づくと各担当者へメールが送られ、点検忘れを防止できるようになりました

おんどとりAPIを使って冷凍庫・冷蔵庫の温度情報の集約自動化

「おんどとり」というのは温度等を記録するデータロガーです。弊社では15台以上の冷凍庫・冷蔵庫を管理しており、これまで業務の開始時と終了時に人間が温度を目視確認して紙の記録台帳に温度を転記していました。これを自動でデータ集約してワークシートに転記するしくみに変え、点検作業を省力化することができました

エクセルを使って電卓で計算していた作業の効率化

これまで測定したデータを紙に記録し、それを電卓で計算してさらに紙に書くという作業を行っている部分がありました。それをエクセルの計算シートを作り、測定データを入力すれば自動で計算されるように変更しました。

BATファイルを使ってフォルダ作成の自動化

複数の顧客それぞれについて定期的にフォルダ作成をする必要があり、この方法で一気に作成できるようになりました。ちなみにPADでもできますが、BATファイルを使う方法のほうが簡単です。

チームメンバーのデジタルスキルはばらばらなので、プログラミングができてAPIからデータを抽出したというレベルの人もいれば、いままで電卓で手計算だったのをエクセルに計算式を入れて計算シートを作ったというレベルの人もいます。このため、チームメンバーの取り組みは大きなものから小さなものまで様々です。今回の活動では全員が同じレベルにまで成長することを求めていません。やらされ感がでるとやりたくなくなるので、他人の学びを参考にしながら、自分のペースで進めることを大事にしたいと考えています。

以前に視聴したLTで「できる人もできない人も集まって学ぶ過程をシェアするのが大事」という話を聞いて心に残っていたので、そのような場が作れたことに満足しています。皆が自分のペースで学びを進めて、自分の仕事を少しでも改善していけるようになると良いなと思っています。
そして、この体験がベースとなって、変化することへの心理的なハードルを下げ、学びをさらにシェアする組織文化につながったら素敵だなぁと思います。

できなかったこと

活動の中で、できなかったことも紹介いたします。

Teamsでの活発な意見交換はできなかった

文字を打ったり、資料を作ったりが面倒になってきて、だんだんTeamsでの交流が減っています。月1回集まるのでそのときに口頭で情報交換したり、同じ事業所の人には対面で聞きに行ったりしています。面倒なことは続かないので、今後もできるだけ手間なくできる方法を模索したいです。

業務フローを大きく変えるような取り組みはできなかった

現在は既存の業務フローを置き換えるといった取り組みがメインとなり、あくまでも既存業務の延長線上のカイゼンに留まっています。業務フローを大きく変える場合、多くの人を巻き込むことになるので今後、活動の賛同者を増やすことは必須と考えています。

今後に向けて見えてきた課題

①既存業務が忙しくて時間がとれない

各メンバーは日々のルーチン業務を担当しながら+αとして活動をしているので、どうしても忙しくなってくるとルーチンが優先され、その他が後回しになってなかなか着手できない状態になってしまいました。
当初、自動化ツールを作って省力化すれば、時間が生まれるのではないかと目論んでいたのですが、部署によっては自動化に向くような繰り返しの多い単純なPC作業のようなものがあまり無く、各メンバーが作成した課題解決ツールでは思ったほどの時短効果が出ませんでした
個人ができる省力化というのも限界があるので、ここはやはりデジタルにこだわらず、部署全体で止める業務を決める、仕事のやり方そのものを変える等の抜本的な変革が必要になると思います。

②課題の発見と解決が難しい

いまは活動を始めたばかりなので、各メンバーが見つけやすい(解決しやすい)課題を発見することができましたが、今後、活動を継続していくと課題発見そのものが難しくなりそうだなと思いました。
弊社はアナログ職場なので課題自体はごろごろしていると思われるのですが、個人の努力で簡単になんとかできそうな課題は少なそうです。また、そもそも取り組むべき課題なのかを見極めることも重要になると思うので、その辺りをどうしたらいいかが難しいなと感じています。

③個人での取り組みに留まっている

今回、私たちのチーム内では情報共有ができて、個人のデジタルスキルは少し上達したように思います。しかし、まだ個人の業務の範囲に留まっている印象で、自分の部署に戻った時に部署全体に変革の波を起こせているかというとそこまでは至っていません。属人化を防ぐためにもできるだけ多くの人に関わってもらえるようにしたいです。

活動が比較的うまくいった要因として考えられること

以上のように今後の課題はいろいろあるものの、初めての試みとしてはわりと良い感じに進められたと思うので、その要因を自分なりに考えてみました。

①小集団活動のしくみが会社にあった

弊社では、2021年から小集団活動が推奨されています
弊社の小集団活動の目的は「チームで問題・課題解決に取り組むことで業務改善・現場力を向上すること」。業務時間内の活動であり、各人の賞与査定に使われる評価表に記載する目標と連動させてもOKなので目標設定にも使えます(ちなみに私はこのデジタル勉強会のほかに小集団活動として検査設計の勉強会にも参加しています)。
実際のところ、弊社の小集団活動はそこまで活発ではなく、全社で数チームという程度ですが、このしくみがあったのでメンバー集めが容易でしたし、目的がメンバーに理解されやすかったと思います。

②経営層の方針と一致していた

弊社においてもDXが方針として掲げられており、ことあるごとに「変化しないと未来はない」と強いメッセージが社長から発せられています。自分たちの活動にお墨付きがあるので自信をもって取り組めたと思います。
会社の新規事業の戦略的DXとしてどの方向に進むかはまだ定まっていません。しかし、既存事業の変革はマストなので、足元からの変革を私たち現場の人間がやらないといけないと思っています。

③デジタル好きなメンバーが複数集まった

各部署で以前からエクセルマクロで自動化していましたというような比較的デジタル知識に強いメンバーが活動に賛同して参加してくれたおかげで、活発な情報交換ができたと思います。こういうツールがあるという紹介をしたら、自分で使い方を調べてこういう使い方ができたというような情報共有をしてくれるので皆の学びにつながったと思います。また、社内の誰がどういうことに詳しいのかを知る機会になり、「△△について困ったら〇〇さんに聞けばいい」というような情報が共有できたのは大きな収穫でした

④取り組みが評価された

これが一番大事だと思っていて、私はわりと豚なタイプなので、おだてられると木に登ります!この活動を始めてから褒められることが多くなり、褒められると、もっとはりきってしまいます。そして、実は今回の私の冬のボーナスの査定がいつもより良かったんです!いままで標準より悪かったときはあったものの、良かったときは無かったのでこれはとても嬉しかったです!自分のやりたいことと会社の方向性がマッチして、さらに評価されるなんて幸せだなぁと思いました。

今後の展望

取り組みに参加してもらえるメンバーをさらに増やす

DXを進めるためにはより多くのメンバーに自分事としてとらえてもらうことが大切であり、業務フローを変化させるためには部署の皆の協力が必要です。なので、来期はさらに賛同してくれるメンバーを増やしたいです。

定期ミーティングで他の部署の取り組みの話を聞きにきてもらえるだけでもいいし、他のメンバーが作ったものをそのまま自分の仕事に適用してもらうだけでも十分良いと思います。今期参加してくれたメンバーが中心となって各部署でカイゼンの取り組みが伝播していけばさらに最高です。
自分の仕事を少しでも変えたいと思う人をひとりでも増やして、より大きな変革につなげていくことが大事だと思っています。

そもそも個人がコツコツした自動化をしなくてもいいようにシステムを見直す

相反することかもしれませんが、いま、メンバーが頑張って自分の仕事を少しでも効率化できるようにしていることそのものをしなくていいようにすることが理想と考えています。私は面倒くさがりなので、究極的には私が仕事をしなくてもまわる仕組みを作るために努力したいです。

今後、古い社内システムの刷新が始まると思うので、できればプロジェクトチームに入れてもらい、現場の人間としてできるだけ仕事が楽になるようにシステムを使って業務フロー自体を変えていきたいです。

既存業務を新しいやり方に変える

これは具体的な構想が全くないものの、とりあえず変えるんだ!という強い気持ちだけは持っていないとアイデアも出てこないと思ったので目標に掲げます。下記の本によると私たちの取り組みはまだ「カイゼンDX」という「変革には至らないレベルの取り組みでデジタル技術を利用して既存業務を改善するDXのこと」というレベルです。「カイゼンDXをいくら推し進めても企業の根本的な経営課題の解決には直結しない」と手厳しい話も書いてありました。そこから脱出して大きな変革に少しでも近づけるようにじたばたしたいと思っています。

まとめ

長々と書いてしまいましたが、日本のどこかで私たちと同じように業務改善に取り組んでいる誰かの何かの参考になると幸いです。

私はスキルに乏しい中年事務員なので、会社が潰れると大変困ります。なので、職場を変化させることで長く存続していってほしいと思っています。さらに、1人で頑張るのは大変なので周りを道連れにしたい!という不純な動機で今回周囲を巻き込んで活動を始めましたが、一緒に巻き込まれてくれたチームメンバーのおかげで、思いがけず評価をいただいたりして感謝の極みです。また、私は面倒くさがりで飽きっぽいタイプなので、一緒にやってくれる人がいないとおそらく続けるのは無理だったでしょう。チームメンバーに感謝しつつ、今後とも長く続けていけるように、チーム運営を工夫してメンバーを増やしていきたいです。

以上、ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

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