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【創作童話】そらをかけるキャベツ

「いいなあ。かっこいいなあ。」

キャベツの キャベすけが、
そらを とぶトンビを ながめて、つぶやきました。

トンビは、くうちゅうを すべり、おおきく えんを えがきます。

キャベツは、つちから はなれられません。
そして、いつか、しゅっかされてしまう うんめいです。

(あんなふうに じゆうに とべたらなあ。)

キャベすけは、トンビを みて、いつも そう おもうのでした。

 

あるひ。さいえんの ちかくの きに、トンビが とまりました。

キャベすけが、こえを かけました。

「トビーさん。ぼくに そらの とびかたを おしえてくれない?」

トビーは フンと、はなを ならしました。

「また、それか。むりだ。キャベツが とべるわけ ないからな。」

「ねえ、そこを なんとか。」

トビーは、むしして、とんでいってしまいました。

つぎのひ。
キャベすけは、とおくの きにとまっている トビーを みつけました。

キャべすけは、おおきく いきを すいこんで さけびました。

「トビーさん! とびかた、おしえてーっ!」

その こえに きづき、トビーは、こちらを ふりむきました。

しかし、プイと、また むこうを むいてしまいました。

「よーし。」

キャベすけは、からだに ちからを こめました。
すると……コロコロと ころがりはじめました。

キャベすけは、そのまま、トビーの ちかくまで きました。

「トビーさん。とびかたを おしえて。」

トビーは、キャベすけを にらみました。

「しつこいやつだ。キャベツには、つばさがない。
とべるわけ、ないのだ。」

「でも、そこを なんとか。」

「むちゃを いうな。」

「ねえ、おねがい。おねがい。」

トビーは しばらく だまりました。

「しかたない。では、こうすれば、とべるかもしれない。」

トビーは、つばさで、とおくの がけを さしました。

「あそこから、とびおりるのだ。」

「えっ?」

「いきものというのは、いざとなれば、なんでも やれてしまうものだ。」

キャベすけは、しんけんに ききます。

「たしかに、じめんに おちたら、いのちはない。
だが、ひっしになれば きっと とべる。
じぶんを おいこむのだ。」

 

しばらくして、キャベすけは、がけの うえに きていました。

みおろすと、めが まわりそうです。

「やっぱり、やめようかな。」

うしろに ころがって、あとずさりします。

「やっぱり、やろう。」

ころがって、まえに でます。

そんなことを なんかいも くりかえしていると、そらを とんでいる 
トビーが、キャベすけの すがたに きがつきました。

トビーは、くうちゅうで きゅうブレーキ。

「おい、やめろ。ほんきに するな。」

いったときには、キャベすけは 「えい」と、とびおりていました。

「なっ!」

トビーは、めを みひらきました。

キャベすけは、ぐんぐん らっかします。

「うわあああ!」

トビーは、キャベすけを めがけて、
きゅうこうかしました。しかし、おいつけません。

「つばさだ! つばさを はばたかせろ!」

「そんなこと いっても!」

じめんが めのまえまで せまります。

「うわああああ!」

もうダメかというとき……。

バサバサ!

キャベすけは、そとがわの にまいの はっぱを
つばさのように はばたかせました。

「おおっ!」

トビーが こえを あげました。

キャベすけは、じめんすれすれの ところから、うきあがりました。

そのまま そらたかく あがっていきます。

「や、やった。とべたよ、トビーさん!」

キャベすけは、ふらふらしながらも、はしゃいで、とびまわります。

トビーは、じっと キャベすけを みつめました。
そして、フフと ほほえみました。

「あきらめさせるために、あんなことを いったというのに。
ほんとうに とべてしまうとは……。まったく、たいしたやつだ。」

 

それからというもの、やまでは、いっしょに そらで えんを えがく、
キャベすけとトビーの すがたが ありました。
                             (おわり)

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