太田巳津彦

「一店逸品運動」を通じて、地方の小売店を元気にするお手伝いをしているコンサルタントです…

太田巳津彦

「一店逸品運動」を通じて、地方の小売店を元気にするお手伝いをしているコンサルタントです。「こんなお店が地元にあって嬉しい」とお客様に思っていただけるお店づくりをお手伝いしています。コロナにへこたれず、元気に商売しているお店をどんどんご紹介していきます。

最近の記事

一店逸品運動のススメ        その10 「誰に来てほしい?」

 この秋、長崎県大村市のテイラーから提案された逸品は、洋服ブラシです。スーツを大切にしたい人、洋服にこだわりたい人に来店していただきたきたいの思いで生まれた逸品です。洋服は、着用後こまめにブラッシングすることで、寿命が延びるそうです。  テイラーですから、オーダー紳士服を購入する方をもっと増やしたいのです。既製服ではなく、お気に入りの1着をオーダーするような方はどんな人だろう。そんな疑問から、たどり着いたのが洋服ブラシでした。  逸品運動では、逸品をきっかけに新たなお客様を開

    • 一店逸品運動のススメ その9          ~逸品は幸せの源~ 

       推しのある人は幸せとよく言われます。ちょっと前までなら、「オタクは幸せ」と言われたものでした。逸品とはおススメですから、お店にとっての推しです。  「お気に入りの逸品を推す⇒推しに共感したお客様が購入する⇒推してよかったと商売することの楽しさを実感する=幸せを実感」ということです。  逸品運動に参加しているお店の皆さんは、元気ですし、活き活きと商売しています。推しの逸品を探したり作ったりするには、苦労が伴います。でも、逸品と出会われたお客様の笑顔を想像すると楽しい。手ごたえ

      • 一店逸品運動のススメ その8   「お客様は神様?」

         かつて「お客様は神様です」とよく言われました。お客様が第一であり、お客様のニーズに応える、お客様の要望に応えることが、小売店の使命であるかのように言われました。しかし多くの中小小売業者は、お客様のニーズに振り回されて、お店の方向性を見失い、大手との競合にも負けて、退場してゆきました。  「主役はお客様ではなく小売店」であると私は思います。店主が、お客様におすすめしたいもの、使ってほしいもの、体験していただきたいことをイメージしながら、仕入したりメニュー作りすることこそ、今の

        • 一店逸品運動のススメ その7

          「お店に魅力がないからお客さんが素通りしてしまう」  お店の魅力って何でしょうか。  私は、物販店なら品揃え、飲食店やサービス業ならメニューだと思います。よく、顧客満足度の調査で接客レベルが取り上げられますが、接客や店内環境がよくても、「ほしいものが買えない」のであれば、来店はしてくれません。こんな当たり前のことですが、多くのお店は品揃えやメニューの見直しに着手できていません。それは、リスクが大きいからです(見直しを間違えれば商売は破綻してしまう)。  敢えて、訴えたい。「品

        一店逸品運動のススメ        その10 「誰に来てほしい?」

          一店逸品運動のススメ         その6「人通り②」

          「人通りが増えると売り上げが増える」  本当にそうでしょうか。  商店街の賑わいの指標として、通行量が用いられることが多く、商店街活性化に人通りの増加が不可欠のように言われています。  その根拠は、かつて商店街が隆盛を誇っていたころ、人通りが多かったからです。よく「人と人がすれ違うのも大変なくらい、賑わっていて、お店の売上も好調だった」と、商店主の方が言われていました。「人通りが多いから売れた」という経験が正しかったのでしょうか。わたしは「商店街にある お店に魅力があるから多

          一店逸品運動のススメ         その6「人通り②」

          一店逸品運動のススメ その5「人通り」

           人通りに関する2つのお話を紹介しよう。  まず、人通りは減ったけれど車の往来に気づいて、商店街が活性化できた事例。関西の某中核都市にあるその商店街は、かつては多くの人が往来する商店街であった。しかしながら、多くの人が車で移動するようになって、徐々に人通りが減り、訪れた当時は昼夜を問わず、人影が見られないまちとなってしまっていた。商店主たちは、人通りの減ったことを嘆くばかり。  ところが、よく見れば、国道に面したその商店街は、多くの車が往来していて、朝夕は渋滞が発生するほどだ

          一店逸品運動のススメ その5「人通り」

          一店逸品運動のススメ その4

           前2回は一店逸品運動の進め方について記してきましたが、最初にお手伝いした北海道のあるまちで生まれた逸品を、今回はご紹介します  まず成功事例  オーナーは元役所の職員、子育てもひと段落したので、チャレンジショップで生活雑貨のお店を開業していました。運動に参加した動機は、まだまだ知名度がないので、「逸品と通じてお店の存在を町民の皆さんに知ってほしい」とのことでした。会合には休まず出席、その度熱心に質問もしていました。熟考の末出された逸品は、「デュラレックスのグラス」でした。特

          一店逸品運動のススメ その4

          一店逸品運動のススメその3

           私が、一店逸品運動をすすめようと思った理由は、いくつかありますが、きっかけは「元気なお店づくり」の大切さを痛感した、30年ほど前のある出来事です。当時、ある雑誌社からの依頼で、元気なお店の取材をしました。お付き合いのあった都内の某区役所の方に、取材先の候補をおうかがいしたところ、「年商2億円を上げるパン屋さんがある」との情報を得ました。さっそくアポイントをとって、取材にうかがったところ、店内にはすでに商品がなくお客様もいない、閑散とした状況でした。ちなみに取材を指定された時

          一店逸品運動のススメその3

          一店逸品運動のススメ その2

           前回ご紹介したように、北海道のとある町で、一店逸品運動はスタートしました。ワークショップを進めるにあたって、私はいくつかの条件を提示させていただいました。 ➀参加費を取ること ②事前のガイダンスセミナーを受講した人に限ること ③あえてリーダーを決めないこと ④ワークショップではマイナス発言をしたら即退場すること  ➀については、「やる気」のある人だけで進めたかったからです。毎月開催されるワークショップへの参加は、日頃商売をしている方たちにとって、少なからず負担となります。参

          一店逸品運動のススメ その2

          一店逸品運動のススメ その1

           私は、もう20年以上、全国で一店逸品運動を進めてきました。きっかけは、北海道のあるまちでの出来事でした。当時、私はまちづくりのお手伝いをしていて、商業コンサルの立場で中心市街地の活性化に取り組んでいました。中心市街地の活性化では、まちづくり会社を立ち上げ様々な事業に取り組もうとしていました。そのまちでは、全国に先駆けて第3セクターのまちづくり会社が立ち上げられていました。しかし、主体であるはずの地元の商業者が、一向に「その気」になっていないという問題を抱えていました。私に対

          一店逸品運動のススメ その1

          活性化とは動くこと

          永年、まちづくりやお店の活性をお手伝いしてきました。活性化とは、売上が上がるとか人通りが増えるとか、賑わうということではありません。活性化するとこうした成果が得られるのです。ある商店街で、人通りを増やしたけれど活性化しなかったことがあります。人通りが増えれば売上が増えると期待したのですが、売上は減少し続けてしまいました。人通りが増えてお店が元気になるのではなく、お店が元気になると結果として人通りが増えるのです。他力本願では活性化はしません。活性化とは、あなたのお店が活き活きと

          活性化とは動くこと

          不便益ということ(その3)

           先日、久しぶりに新宿の紀伊国屋書店に出かけました。店づくりの専門書を探しに出かけたのですが、例によってまず検索機で「店づくり」「売り場づくり」をキーワード検索したところ、ほとんどの書籍が在庫なしでした。 「やっぱりアマゾンで買うしかないのかな」と、わざわざ出かけたことを後悔しました。「でも、ひょっとしたら売場にはあるかも」と思い、時間をかけて店内をめぐってみました。  すると、建築関係のコーナーには店舗設計や売り場レイアウトの書籍がありました。また、業界関係のコーナーには、

          不便益ということ(その3)

          不便益ということ(その2)

          不便とは、楽しいことなのかもしれない。限定販売の商品を求めて並ぶ人の列や、ディズニーランドのアトラクションに並ぶ人の列には、笑顔が溢れています。「どうしても買いたい」商品や「一度は味わいたい」体験のためには、わざわざ出かけて行って並ぶことなど苦にはならないのでしょう。苦になるどころか、むしろ不便を楽しんでいるかのように見えます。 コンビニやネットで、「何でも」「いつでも」入手できる時代、便利なことにはあまり感動しなくなっています。ちなみに、不便益の反対語は便利害だそうです。

          不便益ということ(その2)

          不便益ということ(その1)

          マイナポイントカードの不具合が話題になっています。便利を追求するあまり、大切なことを見逃した結果だと、私は思います。「このカード1枚あれば何でもできます」風な誘いにまんまとはまった結果であり、行政の不手際を指摘する前に、多くの国民は反省すべきではないでしょうか。便利は美徳と思っていないでしょうか。 たとえば、ナビで簡単に目的地に直行できますが、「道に迷って思わぬお店や路地を発見」のようなサプライズはありません。リモート会議が増えて、出かける手間は省けましたが、会議前後の雑談や

          不便益ということ(その1)

          失われていく「まちの魅力」

           首都圏のまちなかから、地元商店がどんどん消えていっています。先日も横浜の地下街に行ったのですが、以前あったブティックやカバン屋さん、とんかつ屋さんなど、地元のお店がすっかりなくなっていました。ショッピングセンターや郊外でよく目にする、ドラッグストアやファーストフードのお店が勢ぞろいです。「ここはどこのまち?」と思うほど、無個性な地下街になっていました。  地元店がなくなってチェーン店が並ぶ状況は、都内の商店街では当たり前の光景になってきました。商店からすれば、苦労して商売す

          失われていく「まちの魅力」

          消費は美徳?

          最近、疑問に思うことがいくつかある。 「ベースアップして、所得が増えれば国内消費が活発になって、景気が良くなる。だからベースアップしましょう」ってホントにいいことなのか 「コロナ禍で貯蓄が増えて消費が伸びないのは、先行きに不安があるから」ってホントかな 消費をしないのは、買いたいものがないからじゃないのか。 「旅行支援のように税金使って、無駄遣いを促進する」ことが、ホントにいいことなのか 「若い人に消費意欲がない」と一言で片づけるけど、消費意欲がないとダメな人なのか。今の若い

          消費は美徳?