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本当の初学者向け神経解剖学1

 初学者にとって優しくない授業とはなにか、と考えるとき私は教える側が初学者であったときの視点を忘れてしまっていることと考えています。わかっている側の視点では補足情報を踏まえたわかりやすい説明であると感じられていても、全く初めて学ぶ側としては情報の重要度の強弱を見分けられず、ただ圧倒的な量に嫌気が差すのみであることが多いです。

 そこで本当の初学者が初学者の視点で書いたものが最も初学者に適した物である、という名目で備忘録を残しました。厳密な交渉は全くされていないどころの話ではないものであることを承知の上でご参照ください。労力の問題で図は用意できていませんので、教科書を参照いただくと良いと思います。

 はじめに高校生物内容の基礎単語、または一般に使われているが理解しにくい単語を”用語”の項にまとめましたのではじめに参照いただくと読みやすいと思います。


用語

ニッスル物質(ニッスル小体)・・・細胞体、樹状突起に多く存在する、粗面小胞体や自由リボソーム、ポリソームのこと
軸索輸送・・・微小管をキネシンとダイニンが通ってタンパク質や小胞を輸送する
シナプス・・・ニューロンとニューロンの接合部
グリア・・・中枢神経系における神経細胞以外の支持細胞のこと
裏打ち・・・裏面から、補強のための処理を施し、外観上はそれと気づかれない形で堅固さを増す処理のこと
キネシン・・・順行性であり軸索終末に向かう。(微小管のプラス端へ向かう)
ダイニン・・・逆行性であり細胞体に向かう。(微小管のマイナス端へ向かう)
順行・・・シナプス末端方向
逆行・・・細胞体方向

神経組織学

マクロでの分類

神経系は中枢神経系末梢神経系の2つに分けられる。中枢神経系には脳と脊髄からなり、末梢神経系は脳脊髄神経系と自律神経系からなる。
中枢神経系=脳+脊髄
末梢神経系=脳脊髄神経+自律神経系
脳は大脳半球間脳中脳延髄小脳からなる。大脳半球と間脳をあわせて、前脳または大脳と呼ぶ。また、中脳、橋、延髄をあわせて脳幹と呼ぶ。
脳=大脳+脳幹+小脳
大脳=大脳半球+間脳
脳幹=中脳+橋+延髄

ミクロでの分類

中枢神経系は神経細胞(ニューロン、神経元)グリア細胞(神経膠細胞、しんけいこうさいぼう)からなる。また末梢神経系は神経細胞のみ、または神経細胞とシュワン細胞からなる。
中枢神経系=神経細胞+グリア細胞
末梢神経系=神経細胞+シュワン細胞

神経細胞は細胞体、樹状突起、軸索からなる。
神経細胞=細胞体+樹状突起+軸索
細胞体・・・核がある部分
樹状突起・・・神経伝達物質を受け取る部分、樹状突起棘が生えている。
軸索・・・通常一本の長い突起

ニューロンは見た目によって5つに分類される。

  1. 無極性ニューロン

  2. 単極性ニューロン

  3. 偽単極性ニューロン

  4. 双極性ニューロン

  5. 多極性ニューロン(ダイステルス氏型、錐体型)

神経細胞体が集まっている部分は中枢神経系と末梢神経系とで呼び方が異なる。
中枢神経→神経核
末梢神経→神経節

ニューロンは軸索の伸ばし方によって2つに分類される。

  1. 投射ニューロン・・・神経核の外へ軸索を伸ばす

  2. 介在ニューロン・・・神経核内部において軸索を伸ばす

シナプス

シナプス前要素・・・神経伝達物質が貯蔵された、シナプス小胞がある。神経伝達物質を放出する。
シナプス間隙・・・シナプス前要素とシナプス後要素との間に存在する空間。アストログリアによって周りを囲まれており密閉されている。アストログリアのトランスポーター分子によって残留した神経伝達物質をくみ出している。
シナプス後要素・・・神経伝達物質の受容体が存在している。イオンチャネル型受容体とGタンパク質が存在している。

グリア

グリアは4つに分類される。
グリア=アストログリア+オリゴデンドログリア+ミクログリア+上衣細胞
アストログリア(星状膠細胞)・・・軟膜を裏打ちする。脳と血液や脊髄液を遮断する。シナプスを包み電気的興奮を安定化する。(前述)
オリゴデンドログリア・・・中枢神経における髄鞘
ミクログリア・・・食細胞
上衣細胞・・・脳室と脊髄中心管の表面で1層を作る上皮性細胞

髄鞘(ミエリン鞘)

軸索を包む鞘のこと。中枢性のものと末梢性のものに分けられる。髄鞘に包まれる有髄線維、包まれない無髄線維に分けられる。有髄線維の髄鞘が途切れる部分をランビエ氏切痕(絞輪)という。
中枢性髄鞘・・・オリゴデンドログリアが形成する。一個の細胞が複数の髄節を作る。
末梢性髄鞘・・・シュワン細胞が形成する。一個の細胞が一個の髄節を作る。
髄鞘は軸索を髄鞘形成細胞が巻き付くことによってできる。その後最も内側と外側のループを残して細胞質がなくなり内ループと外ループを作る。細胞質がなくなったあとの回転している線を周期線という。

神経変性

ニューロンや軸索に障害が与えられたとき変化が起こることを変性と呼ぶ。
1次ワーラー変性(順行変性)・・・軸索終末部に向かって変性が起こる事。軸索や髄鞘が崩壊する。
逆行変性・・・細胞体側に変性が起こること。ニッスル融解が起こる。その後ニューロンは回復するか細胞死を起こす。この細胞死は細胞体の崩壊から順行方向に進むため二次ワーラー変性と呼ぶ。

神経の再生は末梢と比べて中枢においては起きにくい。末梢においては一次ワーラー変性後、何本かの神経発芽が起き、正しい標的シナプスに結合するとほかが消滅する。中枢においてこれが起きにくい理由は以下のことが挙げられる。

  1. アストログリアの増殖が邪魔をする

  2. オリゴデンドログリアが伸長抑制因子を分泌する

  3. 末梢神経系と違い、基底膜のトンネル構造がない


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