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日米の紙切れ一枚の重さ

先日一緒に旅行に行った友人ご夫妻は、
ともにバツイチ同士。


奥さんが元夫から離婚時にもらった家に
二人で住みながら、旦那さんは、12年前に
別れた元妻に住んでいた家をあげ、財産を
分与し、子供の養育費を払い終えたのに、
いまだに毎月2500ドル(日本円で約38万)
を支払い続けていると言うのです。

一体いつまで支払うのかと聞いたら、
元妻が誰かと結婚するか、死んでしまうか、
自分の収入がなくなるまで続くそう。


彼が支払っているのは、メンテナンスとも
サポートとも呼ばれる扶養手当Alimony。

カリフォルニア州では、10年以上の結婚
の場合、経済的に弱い立場にある元妻
(あるいは元夫)がちゃんと自立できるよう
就職向けの教育代などを元夫(元妻)が
支払うだけでなく、相手の弁護士料や
半永久的に年収に応じた金額を毎月支払う
義務があるのです。


アメリカは、行政も司法もすべてが州単位。

各州がある意味一つの国の様なものなので
州が変われば、消費税や所得税も違うし、
離婚条件なども異なってきます。


カリフォルニア州は、無過失離婚を
認めている17州の1州(50州中)。

無過失離婚(No-fault divorce)とは、
例えDVや、モラハラ、浮気によって
離婚になったとしても、その過失を
問われることがないというもの。
”した側”から”され側”への慰謝料は
一切発生しないのです。


例えば、カリフォルニア州に住む大富豪の
無職の妻(夫)が借金を重ね、浮気をした
挙句に離婚したいと言ってきた場合、
慰謝料をもらえるどころか、婚姻年数が
10年を超えていれば、毎月浮気した元妻
(夫)にとんでもない額の扶養手当を
支払わされることになります。


カリフォニア州といえばハリウッド。
様々な泥沼離婚劇が起こるのも、
莫大なお金を支払わされる。
あるいはもらおうとするため。

トム・クルーズがニコール・キッドマン
と離婚した際、トムは結婚期間が10年に
満たないよう別居した日を実際より早く
申請したと言われていますし、


また最近、3番目の妻と再婚した総資産
約133億円とも言われたリチャードギア
は、2番目の妻との婚姻期間がちょうど
10年で、裁判でかなり揉め、いらついて
パパラッチを傘で殴りつけたことが
ニュースになっていました。


こういったセレブや大富豪の離婚によって
離婚大国のイメージが強いアメリカですが、
2000年以降、離婚率は下がり続けていて、
米国の人口1,000人当たりの離婚件数は、
4.0から2.5に減少しています。

離婚後のお金の保障について触れてきたので、
アメリカはシングルマザーなっても恵まれ
ていると思いがちですが、これはパートナー
が稼いでる、あるいは結婚後に稼ぐ人に
なった話。


忘れてはいけないのは、離婚時に発生する
財産分与には借金も含まれていること。

アメリカの一般家庭の負債額(家や自動車、
医療費やクレジットローンなど)
の総額は年々膨れ上がっていて、
2023年で17.1兆ドルに達しています。

実際、一部のアメリカのシングルマザーの
貧困は、ホームレス以下とも言われていて、
日々の暮らしに追われ、子供達がまともな
教育を受けらない地区に住み続けている
人が30%以上を占めています。


そのため、離婚による経済的損失によって
生活が苦しくなる人たちや、経済的自立が
難しいと感じている人達の間では、
離婚を踏み留まるケースが多いのも事実。


そして富裕層だけが取り交わすと思われ
がちな婚前契約書ですが、近頃は若い世代
でも取り交わすケースが増えています。


それというのも年々べらぼうに跳ね上がる
アメリカの学費。

ハーバードなどの名門大学では、年間で
73,000ドル(約1000万円)、4年間で
4000万円かかるとも言われていて、多く
の学生がローンに頼らざるを得ない状況。

社会に出ても一部の職業をのぞき、
インフレで8%も物の値段が上がっている
アメリカでは、給与の大半が生活費と
ローンの支払いに消えていきます。

そのため車を買うにしても家を買うに
しても、新たな借金をせざるを得ない。


生きるためのお金は自分で稼ぐアメリカ
の若い女性達あるいは男性達が、
相手の借金を背負わないための婚前契約。

これもまた新しいアメリカの姿。

日本もアメリカもたった紙切れ1枚で
あっても離婚の重さは同じ。

ただ9割が協議離婚の日本と、
揉めれば裁判で徹底的に争うアメリカ
では、離婚後に届く弁護士からの
たった紙切れ1枚(請求書)の重さが
かなり違いそう。

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