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第278回、幻の〇ィズニープリンセス


202X年、米国のとある企業で、革新的なヒロインが生まれようとしていた。

「出来た‥ついに出来たぞ。これはきっと、革新的なヒロインになる」

そのクリエイターは、自分の創作したヒロインに興奮を抑えられなかった。
このヒロインが世に出る事になれば、世界をきっと魅了させる事になる。
若者は、そう確信をして、震えが止まらなかったのだ。

ちょうどそこへ会社の上司が、映画の制作状況の確認をしに来た。

「ちょっとあなた、映画の制作の方はどうなっているのかしら? 順調なんでしょうね?」

「たった今ヒロインの絵柄が完成した所です! これを見てください!!」

そう言って若者は、出来たばかりの試画像を、上司に見せるのだった。

「全然駄目ね、美人過ぎるわ。あなたは女性の事を何だと思っているの?
男性にとっての性の対象としてしか、見ていないのではないかしら?
この透き通るような白い肌、艶やかな金色の髪、正に男性の欲望の象徴ね。

肌と髪の色は黒くしなさい。髪の毛も編んで、ドレッドにするのよ。
これではまだ美人過ぎるわね‥ そうだ、顔にソバカスを入れなさい。
それも黒い肌に負けないくらい、しっかりと多めにね」

「いやあのソバカスって、白人の人に多く見られる特徴なんですけど‥」

「そんなのどうだっていいのよっ!見た目が美しくなくなればいいだけなんだからっ!!」

「それって黒人やソバカスのある人が、ブサイクって事ですか?」

「そうに決まっているじゃないっ! でも私達は、見た目で人を判断しないから、そんな女性にも、きちんとヒロインの役割を与えるのよ」

「‥美人の黒人や、ソバカスのある白人じゃダメなんですか?」

「だからヒロインをきちんと、ブサイクにしなさいって言っているのよっ!
あなたは何? ルッキズムなの? 見た目で人を判断するの!?」

「・・・」


「でもヒロインが黒人だと、白人の王の娘としておかしくなるんですが‥」

「だったらヒロインを庶民の娘にしなさいよっ!そもそもヒロインが国王の次期王妃のプリンセスと言うのも、今どき時代錯誤なのよっ!!」

「それだと王と対峙する娘と言う、親子の図式が成り立たないんですが‥」

「親に逆らう子供を描くなんて、非教育的でしょうがっ!!
ヒロインは城の仕事につきたての労働者にしなさい。その労働者が、人々に意識革命を起こして、独裁者の王を転覆させるのよ。
これこそ現代のヒロイン像だわっ!現代のジャンヌ・ダルクなのよっ!!」

「あの、ヴィランの娘というキャラ設定は‥」

「だから、ヴィランの娘とか、非教育的だと言っているのよっ!!」

「・・・・・」


「ヒロインの七人の仲間達のデザインも、もう出来ているんでしょうね?」

「それはもう、なんてったって白雪姫に出て来る、七人の小人達をモチーフにしているんです。自分の自信作ですよっ!」

「全員、健常者ね‥ 一人足の不自由な、障害者を入れなさい」

「あの‥ 何で足が不自由な人が必要なんでしょうか?」

「理由なんてどうだっていいのよっ!障害者も一人は入れないと、不平等でしょうがっ!! あなたは何、障害の有無で人を判断するのっ!?」

「だったらいっそうの事、七人全員に障害がある事にしますか?」

「そんなにいらないわよ。障害者なんて一人いれば十分なんだからっ!!」

「・・・・・・・」


「いい?この作品は、多くの子供達に夢と希望を与えるのよ。美人じゃない女性にも、ヒロインになれるって事をきちんと教えてあげるのよ。
夢を持つ事の素晴らしさをもれなく全員に教えるの。夢を持たない人生なんて、クソ同然だって事をきちんと皆に教えるの。皆頑張れば、美人じゃなくても人生に成功するって事を世の中に知らしめるのよ。この私みたいにね」

「・・・・・・・・・・」


「そうそう、今年のクリスマス商戦で売れるような可愛いキャラクターも、しっかり入れておくのよ。一つはヤギの子供がいいわね。それともう一つは日本にある星のカービィ-みたいのがいいわね。いいカービィ-よっ!!」


その後若者を含めた多くのクリエイター達が、会社を自主退職して行った。
2023年末、残ったクリエイター達の突貫制作の末、〇ィズニー創立100周年を記念する、プリンセス映画「〇ィッシュ」が何とか完成したのである。

※これは自分が想像で書いたフィクションですが、多分事実だと思います。

今回内容が内容だけに、会社と作品を特定されない様に、画像にモザイクを入れてみたのですが、余計あれだったでしょうか?

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