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不揃いの終わらないミキシング

なあ
細かいことは気にせずにさ
この道の先を見てみたいと思えれば
それだけで資格は十分だぜ

歩幅も足音も違う俺たちだけど
だからこそさ
なんだかワクワクしてこないか

小石を蹴り上げる音ではじまって
雑草を踏んづけるのをアクセントに
でたらめな石畳でリズムをとろう
歌詞なんてテキトーに思いのまま叫んじまって
ヘンテコ具合に大笑いさ

離脱するのも止めやしないぜ
追いついたならまたセッションだ
その場限りのフェイクと
乱れた呼吸が織りなすグルーヴは
俺たちが確かに生きている何よりの証拠だろう

路傍にフラッと現れる木偶デクたちの
ヘの字顔なんか気にするな
むしろそいつらも巻き込んで
上げて突き出てトの字に変えちまえ
転調はお手の物だぜ

どこを歩いているか
分からないくらいで丁度いい
目的地にたどり着くことが全てじゃない
この道の先を見てみたいと思えれば
それだけで資格は十分だぜ

なあ きづいているか
たとえ俺の胸がビートを刻めなくなっても
俺たちの音楽をはずっととまらないぜ



 
 悔しい。出遅れた。


 『ブレーメンの音楽隊』。
 好きな童話だけど、表面だけをなぞると奇妙なお話なんだよね。この話の登場人物は目的の街ブレーメンにはたどり着かない。にもかかわらず、音楽隊であることには間違いない。と、そう感じるのは何故かについて、自分で言葉にしようと思っていた。
 ところが、ヨルシカが同じ題材で楽曲を作っており……聞いてしまった。自分の描いていた世界観に彼らの音楽が侵入してきた。

 これに私のイメージが影響されないわけがなく、ところどころ違うのに”目的地”が同じように感じられてしまい、端的に言うと混ざってしまったのだ。だからもう諦めて、このグルーヴに身を委ねて混ざった世界を表現してみた。
 そう「混ぜた」のだ。そうしたら、この童話の魅力を再確認した。やられたね、全く。

 おこがましい? 知ったこっちゃないね。
 だって私もブレーメンを目指しているのだから。

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